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お父様からの手紙

レベッカ視点のお話、再会です。

なんだかとってもお久しぶりな、エリーゼ様も再登場です。

大陸歴313年、冬。


お久しぶりの方も、はじめましての方もこんにちは。


私は侯爵令嬢、レベッカ・フォン・エーレンフロイトです。ただいま13歳です。


今年もあと1ヶ月か。今年もいろいろあったなあ。と、しみじみ思う今日この頃です。


と書くと、165話の『新聞を買う理由』と、ほぼほぼ同じ事を言っているじゃないか、文章コピペしとるんかい⁉︎と思われる方もいるかもしれない。

そんな事は断じてしていない。十分に熟慮を重ね推敲しまくって言葉を選んだ結果、同じような文章になったのだ。


だって、1ヶ月しか経ってないのに、文体が豹変するほど、人格が変化するわけがない。

この1ヶ月、事件だけはいろいろあったのだけど。

『残りの2ヶ月は平和に過ごしたいものです』

と語っていた自分に「何言ってんだよ!」と自分でツッコミを入れたくなるくらいには、いろいろあった。


前回『自分史』を語ってからたった1ヶ月で、同じような事を語っても「それ、もう聞いたよ。」としかならないので、この度はそこは割愛させて頂こうと思う。今回『はじめまして』の方には『新聞を買う理由』を読み返して頂けるとありがたい。

というわけでこの1ヶ月にあった事だけ、お伝えさせて頂きたいと思う。


北大陸の天才化学者、グラハム博士の発明した『種痘』について、医療大臣をしている親戚のおじさんシュテルンベルク伯爵に聞きたかった私は、シュテルンベルク邸を訪問。そこで伯爵の従姉妹のアントニアという女に殺されかけた。

もしもホラーゲームのヒロインのように、ナタを持った犯人に何時間も追いかけられたとかだったら大事だったが、毒入り絵の具で描かれた絵を送ってこられただけだったので、体力的には何て事なかった。

その後、大雨が降る中、アントニアが庭に植えていた『植えていたら死刑にされる木』をノコギリとナタで切る方がよっぽど大変だった。

まあ、実際に切ったのはシュテルンベルク家の御曹司のコンラートと、コンラートの為なら何だってすると公言しているストーカーのジークだけど。


アントニアが今まで繰り返してきた連続殺人が明らかになったので、その後シュテルンベルク家の親戚の人達が急遽集合。

そのうちの一人、伯爵のお姉様のエリカさんに、コンラートと一緒にアイヒベッカー侯爵家のお茶会に行って欲しいと頼まれた。

そしたらそのお茶会で、アイヒベッカー家のエレナローゼ令嬢に泥棒の濡れ衣を着せられかけた。

エレナローゼ嬢がどこに自分のイヤリングを隠したか、すぐにわかったので事なきを得たが、その後のゴタゴタがほんとめんどくさかった。そして、今でも少々めんどくさい事になっている。


事件の後アカデミーの寄宿舎に戻ったら、満面の笑みで寄宿舎のドン。エリーゼ様が近寄ってきた。


「あのバカ女が自分で自分の墓穴掘ったとこ、私も見たかったー。お茶会行けば良かったわ。あはははは!」


・・・。

自分が嫌いな人間が半端ないほど不幸になったというのに、同情するフリをひとかけらもしない姿がある意味清々しい。

でも、一応貴族なのだから、というか人なのだから、もう少し取り繕えよ。と思う。君の従兄弟だってかなり悲惨な目に遭ったはずだぞ。


「ベッキー様、すごくかっこ良かったですー!」

と声を揃えて言ってきたのは、アグネスとユスティーナだ。


「私だったら、濡れ衣をはらせませんでした。」

「ベッキー様が男性だったら惚れてますー!」


そう言って私がどれだけかっこ良かったかを布教して回っている。


でも君達、私が光輝会の人達にガンガン責められていた時、一言も味方してくれなかったよね。正直ちょっと恨んでいるよ。

でもまあ、ジーク様よりはマシだけどさ。あの人

「ベッキーなら全然大丈夫だろ。あんなバカ女に陥れられるようなら、君はその程度の人間だったって事さ。」

って言いやがりましたからね。


私が罠にかけられて、ひどい目に遭ったのに、変な逆恨みをしてきたあの人に仔牛のステーキをたかられたのは、何かおかしくないか?と最近になってじわじわと感じている。


しかし、それ以上にげんなりしているのはコルネの事だ。


事件の後からずっとメソメソメソメソ泣いていて、今真冬だというのに、室内の湿度と不快指数を上昇させ続けているのである。


事件の直後。家へ帰ってすぐコルネはユリアに怒鳴りつけられた。


「どうして、ベッキー様をお一人で中庭へ行かせたのですか⁉︎どうしてついて行かなかったのですか!私がお側にいたら、絶対にお側を離れなかったのに。中庭にご一緒していれば、こんなくだらない濡れ衣かけられなかったはずです。コルネ様はベッキー様に何かをしてもらうばっかりで、ご自分は何もなさらないですよね!コルネ様は無責任だわ。ベッキー様に何かをして頂くばかりで、ご自分は何もなさろうとしないなんて!」


「ユリア、それは違う。コルネはついて来てくれようとしたのよ。なのに、エレナローゼ嬢に引き止められたの。」

「私だったら、何をおいてもベッキー様にお供しました。コルネ様は、ご自分が侯爵家の方々に助けられているという自覚がないんですか!」


侯爵令嬢のエレナローゼに話しかけられて、男爵令嬢のコルネにシカトは無理だって。

ユリアもこの場では何とでも言えるけれど、アイヒベッカー家でも同じくらい強気に出れたかはわからないよ。光輝会の人達って、何か独特の雰囲気があったもん。


ここでウルウルと目を潤ませ出したコルネに更にお母様がトドメを刺しにきた。


「でも本当にユリアが言うように、ヨーゼフかコルネが側についていてくれたら良かったのに。」


「す・・すみません・でした。」

何とか涙をこらえたコルネだったが、部屋に戻ったら大号泣だ。


そして、事件から何日も経った今でもグスグス泣いているのである。


どいつもこいつも、メンタル豆腐の人間を寄って集って攻撃しおって。

そして、コルネ。別に気にしてないと言っているのだからいいかげん復調して欲しい。君が生きているのは生き馬の目を抜くような貴族社会なのだよ。エリーゼやジークの10分の1ほどでいいから、ツラの皮厚く生きていって欲しい、と私は希望する。


そして今日も『病みオーラ』全開のコルネと、夕食までの時間を自室で過ごしていたら、エーレンフロイト邸に報告に戻っていたユーディットがお父様からの手紙を持って戻って来た。


何か事件の続報かなー?

それとも、孤児院の慰問に行ってもいいよ。という許可?


エレナローゼ嬢の事件では、アイヒベッカー家だけでなく、自称頭脳集団光輝会の会員達も捕まった。

最終的には、解散命令と王城への立ち入り禁止令だけですんだが、一週間の監獄暮らしを余儀なくされたという。

どんな罰が与えられるのか恐怖に震えながら、臭いメシを食べる一週間は、ハッキリ言ってかなり長かったと思う。噂じゃ拘禁反応で、幻覚を見たり、奇声をあげつつコロコロと転げ回っていた人もいたとか。


そんな人達が自由の身になり、逆恨みでどんな復讐をしてくるかわからないので、孤児院等にふらふら出歩いたりせず、寄宿舎でおとなしくしているように。とお父様に言われたのだ。

私的には、従兄弟のフィリックスを捕縛されたエリーゼが逆恨みをしてくるのでは、とか、メンタル絶不調のコルネとずっと同じ部屋にいるのは辛い、とか思って寄宿舎にずっといる方が苦痛だったので、そろそろ外出禁止令も解除かなー、とウキウキしながら手紙を開いた。


「ん?」

「どうされました、レベッカ様?」

ドロテーアが質問してきた。


「週末、一緒に出かけたい所があるから、予定をあけておいて欲しいって。」

お父様にこんな誘いを受けるのって初めてじゃないかと思う。


お父様と一緒に買い物とか外食とか、一回もした事ないし、そもそも買い物をする時は自宅に商人を呼ぶ。


「服装はアカデミーの制服でいいって。同伴者は、ユリアとユーディットのみって。」

「ユリア様はいいのに、私はダメなんですか⁉︎」

そう言ってまた、コルネがポロポロと泣き出した。


「こ・侯爵様も私の事、怒っていらっしゃるんだ。私・・私、どうやって償えば・・・。」


・・また泣き出し始めて、正直げんなりきた。薄情だと思わないで欲しい!

24時間、毎日毎日、どんなに慰めてもこんな調子じゃ、いいかげんこっちのメンタルにもダメージがくるのだ。


何でお父様もコルネを弾くんだよ。

コルネがいたら何かまずいのかな?

そもそも、何の用なんだろう?お父様が、そんな妙な事を要求してくるって事はないと思うけど。制服で良いって事は、王城や大貴族の自宅訪問ではないよね?


週末にならないと答えはでない。

そして、週末までコルネの涙腺の降水確率は100%、と思うと少し、いやかなりげんなりとした。

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