第1章 ゆめのなか
第1話 逃避
人はなぜ生まれ、死んでいくのか―それはきっと誰にもわからない
白は自分の人生が嫌いだった。
いつからか苦しみばかりに目を向けて、どうして生きているのか
そればかり考えている。
褒められればそれは嘘だと思い込み、
貶されればあいつは私のことを分かっていない――と。
なにより嫌いなのは、そんな風に考えてしまう自分自身だった。
「どんなに苦しくったって、いつかは笑い話になるさ」
こんなことを言い出したのはいったい誰だろうか。
今が苦しくて、生きているのが辛いのに。
映画の中では自分のような人が辛い目にあった後、
幸せをつかむ逆転人生を送っている。
私のことも、誰か愛してくれないだろうか。
1人歩きながら心の中で目を閉じる。
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そこには、過去の記憶。
たくさんの人に大切にされている自分がいた。
その人の笑顔はまるで太陽のように輝いている。
周りの人も、そんな白をみて笑顔になっている。
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ふと我に返ると、いつの間にか家の近くまで帰ってきていた。
何となく足が進まないので、白は公園に寄りベンチに腰掛けた。
またいつもの妄想か―
ここのところ不思議な夢を見る。
いや、起きているのだから夢とは違うのかもしれない。
そして……あれはたしかに私だけれど、私ではない。
過去の記憶を都合よく塗り替えているのだろうか、
それにしても自分自身が見えるのは違和感がある。
そんなことを考えているといつの間にか空が薄暗くなっている。
家に帰る足取りはいつも重く、今日も寄り道してしまったと後悔しながらも、
もう少しこうしていたかった。