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9、トウイの話①

霧が深くかかる森の中をメディアとクラウドは進んでいく・・・

モンスターには遭遇するものの、霧の中という事もあってクラウドもメディアも苦戦する事はなかった。

出てくるのも霧ではぐれた個体くらいなので、霧を利用してこっそりと近づいてモンスターを仕留めていった。


「ハッ・・・これでゴブリンが5匹、霧で分散させられているおかげで助かったわね。」

「・・・あぁ。」


手についた埃を払うメディアといまいち反応が悪いクラウド。

ここまでの戦闘で彼が活躍していないわけではなかった。

むしろ、立ち回り自体は彼がテイマーという事を考慮すれば十分以上の戦闘力はあるのではなかろうか。


・・・だが、彼はあまりにも退屈そうな反応を見せる。


「クラウド、あなたに聞きたい事があるの。」


メディアはいよいよクラウドに話を切り出す。

そもそも二人になる事が目的だった。拠点では他の人が聞いている可能性がある、街ではだれが見ているか分からない。そういった点では霧の森というのはクラウドに話を聞くのにはちょうど良かった。


「あなたは何で本気じゃないの?」


メディアにとってクラウドのパーティー追放は納得の出来る箇所があり、それが彼のやる気のなさだった。

確かに実力は認める所はあるが、勇者パーティーという魔王との戦いも視野に入れる以上やる気の無いメンバーは味方のモチベーションを下げてしまうからだ


「どうしたんだよ、いきなり。」

「今は二人だからはっきり言わせてもらうわ。あなたの実力は明らかに他のテイマーと一線を画している。なのに、あなたはその力を隠しているせいなのか、私にはあなたが勇者パーティーの一員としてやる気がある様に見えないの。ウォルドもマイも少し天狗になる事はあってもそこはきちんと見えるもの。」


マイもクラウドを基準に他のテイマーを雇ってお小遣い稼ぎをした結果、かなり痛い目にあっていた。

メディアはメディアで上位種であるタマエの実力をあらためて知る事になり悪夢で使役していたクラウドの実力も知る事になった・・・


「・・・いや、俺は普通のテイマーで・・・。」


頑なに否定しようとするクラウドにメディアはため息をつく。



「ふぅ・・・いい、普通のテイマーが上位種にあたる猫玉族を使役したいなんて言わないわよ。そんな不相応な事をやったら普通にテイマーは潰れてしまうわ。」


テイマーの契約というのはきちんと使役するに足りる能力が無い限り、使役出来たとしても魔力を吸いつくされてしまう為に自分の力が足りない相手を使役するという考え方には至らない。基本的に1人1体の契約になるのは複数体になると魔力のコントロールがほぼ出来なくなるからと言われている。

しかし・・・


「あなた、タマエと初めて会った時に使役したいと言っていたわよね?それはどうして?」

「そ、それは・・・」


メディアの感じていたクラウドの違和感であり、言葉と行動が合っていなかった。


「当てましょうか?あなたにはタマエを使役出来る自信があったから。」

「・・・。」


メディアは指摘にクラウドは黙ってしまう。


「メディア・・・」

「どうしたの?」

「実は俺・・・!?」

「!!」


クラウドは観念して、メディアに何かを話そうとするが、二人は霧の中にある魔力の流れと・・・


「うぅ・・・。」


霧の中から響くうめき声は男の子の声で、声からして結構近い気がする。


「クラウド、今は男の子の救出を!」

「分かった!」


霧の中、声を頼りに声の主を探す。

足元に気をつけながら、歩いていると・・・


「いたっ!・・・え?」


メディアは男の子を見て驚く。


「見つかったのか?・・・この子ってフェアリー族なのか?」


クラウドも男の子を見つけて驚いた。

確かに男の子の背中には羽が見えていて、誰にやられたのか分からないけどボロボロだった。


「ううん、今はケガをなんとかしないと。クラウド、私は回復魔法をこの子にかけるからモンスターが近づいて来ないか注意して。」

「あぁ。」


男の子の治療を済ませ、気が付くのを待つ二人。


「・・・ん・・・あれ、ここは・・・!!」

「良かった。気がついたのね。」


驚いた男の子が飛び上がり、メディアとクラウドに距離を取った。


「に、人間がどうしてここに!?」


フェアリー族にとっては人間というのはすぐに分かるみたいで、まるで仇敵にでも会ったかの様な反応だ。


「私メディアで、隣はクラウドよ。私達は勇者パーティーのメンバーで霧幻の森を調べにきたの。そしたら、あなたが倒れていたから治療したのよ。」

「!!」


メディアの紹介に頷くクラウド。

メディアの言葉にハッとして男の子は自分の身体を見渡した。


「傷が・・・その・・・ありがとう。僕はトウイ、フェアリー族でこの森に住んでいるんだ。」

「トウイっていうのね。そういえば、どうしてケガをしていたの?」


ケガの理由が気になったメディアはトウイに尋ねると、少し考えてから・・・


「それは・・・助けて貰って言うのも気が引けるのですが・・・助けて貰えませんか?」


真剣な表情でメディアとクラウドに助けを求めた。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

霧幻の森でクラウドに話をするメディア。そこに傷だらけのフェアリー族の少年トウイが助けを求めてきました。

元々あった未来から話が大きく変わり、彼女達の出会いも大きく異なってきました。

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