5、サリナの話①
「・・・で、どこまでいくの?戦闘訓練なら庭でやればいいじゃない。」
「まぁ、良いじゃないですか。マイ、戦いにおいてどこで戦闘するかは決まっていないのですから、何事も経験ですよ。」
「はぁ・・・めんどくさいなぁ・・・」
不満を漏らすマイと話をするメディア。
というのも、今日は二人でとある場所に来ていた。
〜 1時間ほど前の冒険者ギルドにて 〜
メディアがギルドに入ると、受付のケイナが駆けてきた。
「メディア様、最近とソコノ大橋に通行を邪魔する人が現れて・・・もし良かったら、その人を懲らしめてくれませんか?」
「はい、構いませんよ。」
メディアは彼女と出会う為、あっさりとその依頼を受けた。
悪夢ではタマエとクラウドが彼女と会って、クラウドのゲスな手で彼女は使役される事となった。
なので、今後の事も踏まえてメディアはあるアイデアを実行する事にした。
拠点に戻ったメディアが向かったのはマイの部屋だった。
ドアをノックすると、マイが出てきた。
「どうしたの、メディア。あなたが訪ねてくるなんて珍しい。」
「いえ、一緒に戦闘訓練をしてほしいのです。」
「え?嫌だよ。めんどくさいし、戦闘訓練ならタマエがいるじゃない。」
案の定マイは戦闘訓練を嫌がっている。
「タマエは今、ウォルドと訓練していまして・・・」
メディアが外を指差すと、タマエが駆けて行く姿が見える。
「ウォルド〜だらしないよ。ほらほら、ファイト♪」
「ゼェゼェ・・・上位種の体力、半端ねぇぞ・・・」
どうやら、走り込みをやっている様だ。
「・・・ね。ですから、マイは私と一緒に戦闘訓練をしましょう。」
ニコリと微笑むメディアと対照的に嫌な顔をするマイ。
「じゃあ、一緒に走り込みすればいいじゃん。私は本を・・・」
「あら、いいのかしら?」
「な、何の事よ!」
強情なマイにメディアは切り札を出す。
「あなた、この間アレクの許可取らずに冒険者ギルドでクエスト受けて失敗したって聞いたわよ。いいの?アレクに報告して・・・」
冒険者ギルドでちょこちょこ仕事している事もあって、受付のケイナとは仲良くなっていているから・・・この手の情報はすぐに入って来る。
「う、それは・・・」
「それにクエストの失敗を一緒に受けたテイマーのせいにしてたと・・・クラウドの追放の話はあなたも知っているでしょうう?そんな所にあなたのクエスト失敗と原因をテイマーに擦り付けた事を知ったらどうなるかしらね。」
「わ、分かったわよ!!一緒に訓練すればいいんでしょう?この腹黒聖女!!」
“ごめんなさいね”とは思いつつも
まぁ、この方法が上手く行けばマイの戦闘能力は段違いに上がるので、ここは甘んじて悪口を受ける事とした。
〜~~
「・・・メディア、あの件はお願いね。」
「分かりました。アレクに聞かれた時は『他テイマーの有用性を調べていた。』と口裏を合わせておきましょう。彼も色々忙しいですから、それで納得はしていただけるでしょう。」
「さすがだね、メディア。よっ『腹黒聖女』っ!!」
うぅ・・・そのあだ名は止めて欲しいですねと思いながら、目的地のソコノ大橋に到着する。
渡ろうとした時に蒼いドラゴンがメディア達に飛んできた。
ドラゴンは女性の姿に変わり、戦いを挑んでくる。
「私は竜魔族のサリナ。あなた達、ここを渡りたければ・・・」
メディアは何といきなり彼女に土下座をした。
「あなた様は魔法において聡明な竜魔族の御方。是非とも魔法の極意を教示していただきたく存じます。」
その行動に焦るマイとサリナ。
マイも今の状況が分からず、サリナも強い敵と戦えると意気込んだ所にいきなり土下座されれば、流石に困惑はすると思う。
「え?えっ?ええっ!?」
「ちょっと、何やっているのよ。メディアっ!?」
これがメディアのアイデアである。
・・・と言うのも、悪夢の話ではこの後で英雄の盾の回収する話が出るはずなので、全体的な戦力アップは必須。
そして、クラウド達の力を借りる事になるのだが・・・あんなに醜悪なものを見せられて、追々アレクが壊れていくなら土下座程度は安かった。
そして・・・
「ほら、マイからもお願いして下さい。」
「嫌よ。そんな土下座なん・・・うわっ!!」
メディアの手がマイの頭を掴む。そして、ニコリとしてから毒舌を放つ。
「あなたがどんなに多くの魔法を使えると言っても、所詮は人間基準。上位種・・・竜魔や神霊族の前では敵わないでしょう?」
「そ、そんな事ないもん・・・頭をガッシリと掴まないでよ・・・。」
「そんな調子だから、クエストで他テイマーに失敗押し付けるハメになるのよ。あなた・・・冒険者ギルドではナマイキ魔女とか勇者パーティーの『分からせ』担当とか言われているわよ。」
ずーん・・・マイはメディアの言葉にトドメを刺される。
「すみません、サリナ様。私達に魔法の極意を教えて下さい。」
「マイもこう言っておりますので、何卒・・・」
“マイ、ごめんなさい。”と心の中で思いつつ、メディアはサリナに頭を下げる。
「わ、分かったわよ。あなた達に魔法を教えればいいのね?強くなったら勝負するからね。」
「ありがとうございます。サリナ師匠。」
「師匠・・・うん、悪くないわね。よろしくね。」
鼻を高くしながら、満更でもない様子のサリナ。
こうして、メディア達はサリナを魔法の師匠として勇者パーティーに引き入れた。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
次の仲間サリナのエピソードになります。
上位種の誇りゆえの高慢さが目立つ彼女ですが・・・