米が食いたいのです!
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米の苗はそう簡単には見つからなくて、とうとうタイムリミットとなった。
「お願い! あと少しだけ! 1時間……いや、30分だけでも……!」
神頼みをするように手を擦り合わせるわたしを、みんなは苦い顔をして見た。
わがままを言っていると分かっていても、どうしても諦められない。
「公務は先まで決まっている。俺達のスケジュールを変えたら、他の者のシフトにまで影響が出る」
カウルは、ねばるわたしに、どうしたものかと頭を悩ませる。
「わかってる! わかってるの。でも、どうしても欲しい苗なの。夕暮れまでやったら今度こそ諦めるから!」
「暗くなったら森の中なんか歩けねぇよ。獣に襲われるのがオチだ。この辺じゃあ野営は出来ない。リクリエンツの領地との境目なんだ。俺たちゃ、無茶はできないんだよ」
デフもやれやれといった様子だ。
あまりにも聞き分けがないので、「やっぱりリア姫の我が儘は変わってないじゃないか」と誰かが舌打ちをした。
「―――あ……」
まずい。
ふっと我に返る。
これ以上の我が儘は、リアとしての立場を悪くしそうだった。
空を見上げると、オレンジが消えかかり、うっすらと藍色が浸食し始めている。すぐに暗くなるだろう。
「じゃ、じゃあ、今度はいつ来れる? 明後日とかは?」
「馬鹿いうな。そんな早く来れるか。……そうだな。一ヶ月後……くらいならなんとか」
「一ヶ月!」
そんなに待ったら季節が変わってしまう。
目当てのものを見つけたとしても、すぐに食べられるようになるわけじゃないんだ。
根付くかもわからない。来年まで育てても食べれない可能性の方が大きい。
それに、うかうかしているとすぐに冬が来てしまう。
日本と同じように育てるならば、冬の備蓄を目指して苗を植えるには、今がギリギリだ。
「はぁ……ものすごいスピードで育つとかいうチートとかないのかな」
茶碗いっぱいのご飯とササミフライが脳をよぎる。
それに想いを馳せてため息をついた。
ナスとトマトは成長を期待しよう。サニーレタスはそれっぽいのがまだ見つからないけれど、まあまあそこはご愛嬌。キャベツとかレタスで充分だろう。
チーズはなんとか手作り出来そうだし、シソの苗は発見済だ。畑に植え替え肥料を撒いたので、害虫さえ気をつければシソはどんどん増えてくれる。
そう。
サイドメニューと味噌汁は、刻々と準備が進んでいるのだ。
あとはメインだ。
ササミと、米! なんとか養鶏をして鳥さんを増やそう。小屋を建てられるような土地の目星はつけている。
最難関は米だ。
こんなにも長く米を食べていないのは、生まれて初めてじゃないだろうか。
日本人から米をとったら駄目だ。
禁断症状がでてきて、どんぶりいっぱいの米をかき込む夢まで見るようになった。米を食べたいという気持ちに囚われている自覚はある。
もしかしたら稲が見つかるかもという期待を持ちすぎたがゆえに、今日なにがなんでも、苗を見つけて帰りたいという気持ちが大きかった。
「そんなに焦らなくても、また来れるだろ? ゆづかが国の蓄えを気にしてくれているのは嬉しいが、そうなんでも一度には無理だぞ」
考え込んでいたわたしに、カウルは気遣わしげに言った。
肩を優しく撫でられる。
カウルにも、先ほどの不満が聞こえていたようだ。
周囲から、ここへ来たばかりの頃と同じ不満げな視線を感じた。
まだまだ城のみんなから、信頼を得るには至っていない。
ここまで来たいと言いだしたのもわたし。
なんとか行程を組んでくれた彼らに、無理を言ってついてきたのもわたしだ。
我が儘をたくさん聞いて貰っていて、いい加減にしろよ、という雰囲気が漂っていた。
せっかく少しずつ仲良くなってきたのに、これ以上粘ったら振り出しに戻ってしまいそうだった。諦めなくっちゃ……
焦る気持ちをぐっと飲み込んだ。
まだまだ探したい気持ちを無理矢理押さえ込みながら、カウルの説得に頷いた。




