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米が食いたいのです!

***


米の苗はそう簡単には見つからなくて、とうとうタイムリミットとなった。


「お願い! あと少しだけ! 1時間……いや、30分だけでも……!」


神頼みをするように手を擦り合わせるわたしを、みんなは苦い顔をして見た。

わがままを言っていると分かっていても、どうしても諦められない。


「公務は先まで決まっている。俺達のスケジュールを変えたら、他の者のシフトにまで影響が出る」


カウルは、ねばるわたしに、どうしたものかと頭を悩ませる。


「わかってる! わかってるの。でも、どうしても欲しい苗なの。夕暮れまでやったら今度こそ諦めるから!」


「暗くなったら森の中なんか歩けねぇよ。獣に襲われるのがオチだ。この辺じゃあ野営は出来ない。リクリエンツの領地との境目なんだ。俺たちゃ、無茶はできないんだよ」


デフもやれやれといった様子だ。


あまりにも聞き分けがないので、「やっぱりリア姫の我が儘は変わってないじゃないか」と誰かが舌打ちをした。


「―――あ……」


まずい。

ふっと我に返る。

これ以上の我が儘は、リアとしての立場を悪くしそうだった。


空を見上げると、オレンジが消えかかり、うっすらと藍色が浸食し始めている。すぐに暗くなるだろう。


「じゃ、じゃあ、今度はいつ来れる? 明後日とかは?」


「馬鹿いうな。そんな早く来れるか。……そうだな。一ヶ月後……くらいならなんとか」


「一ヶ月!」


そんなに待ったら季節が変わってしまう。

目当てのものを見つけたとしても、すぐに食べられるようになるわけじゃないんだ。

根付くかもわからない。来年まで育てても食べれない可能性の方が大きい。

それに、うかうかしているとすぐに冬が来てしまう。

日本と同じように育てるならば、冬の備蓄を目指して苗を植えるには、今がギリギリだ。



「はぁ……ものすごいスピードで育つとかいうチートとかないのかな」



茶碗いっぱいのご飯とササミフライが脳をよぎる。

それに想いを馳せてため息をついた。


ナスとトマトは成長を期待しよう。サニーレタスはそれっぽいのがまだ見つからないけれど、まあまあそこはご愛嬌。キャベツとかレタスで充分だろう。

チーズはなんとか手作り出来そうだし、シソの苗は発見済だ。畑に植え替え肥料を撒いたので、害虫さえ気をつければシソはどんどん増えてくれる。

そう。

サイドメニューと味噌汁は、刻々と準備が進んでいるのだ。


あとはメインだ。

ササミと、米! なんとか養鶏をして鳥さんを増やそう。小屋を建てられるような土地の目星はつけている。


最難関は米だ。

こんなにも長く米を食べていないのは、生まれて初めてじゃないだろうか。


日本人から米をとったら駄目だ。

禁断症状がでてきて、どんぶりいっぱいの米をかき込む夢まで見るようになった。米を食べたいという気持ちに囚われている自覚はある。

もしかしたら稲が見つかるかもという期待を持ちすぎたがゆえに、今日なにがなんでも、苗を見つけて帰りたいという気持ちが大きかった。



「そんなに焦らなくても、また来れるだろ? ゆづかが国の蓄えを気にしてくれているのは嬉しいが、そうなんでも一度には無理だぞ」


考え込んでいたわたしに、カウルは気遣わしげに言った。

肩を優しく撫でられる。

カウルにも、先ほどの不満が聞こえていたようだ。


周囲から、ここへ来たばかりの頃と同じ不満げな視線を感じた。

まだまだ城のみんなから、信頼を得るには至っていない。


ここまで来たいと言いだしたのもわたし。

なんとか行程を組んでくれた彼らに、無理を言ってついてきたのもわたしだ。

我が儘をたくさん聞いて貰っていて、いい加減にしろよ、という雰囲気が漂っていた。


せっかく少しずつ仲良くなってきたのに、これ以上粘ったら振り出しに戻ってしまいそうだった。諦めなくっちゃ……


焦る気持ちをぐっと飲み込んだ。

まだまだ探したい気持ちを無理矢理押さえ込みながら、カウルの説得に頷いた。



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