じゃがいも?こうして、こうやって、こうしてやる!
「してないしてない!ただ、毎日ジャガイモで皆様の栄養バランスは大丈夫かなー?ってちょっと心配を…」
顔と手を一生懸命左右に動かし否定した。
「てめぇが畑を駄目にしたんだろうが!!」
物凄いドスのきいた声で怒鳴られ、ひっと目を瞑った。
(ぎゃーどうしようヤンキー…じゃなくて警備隊怖すぎる!)
ーーーじゃなくて!リアが畑を駄目にしたの?!
「え?ど、どうやって…?」
「しらばっくれやがって。お前の雨を操る魔力で海水を降らせただろ!忘れたとは言わせないぞ!国内の有力な畑を次々と塩浸しにしたじゃないか!!」
「わたし魔法つかえるの?!」
「………」
つい興奮して聞き返してしまってから、しまったと口を塞ぐ。カウルは呆れた視線を寄こした。
「このくそ女、ふざけてんのか」
ラジがキレる。
「違う、ごめん、今のはうっかり…いっ……!!」
ちゃんと釈明をしようと思ったらこめかみにガッと堅い物がぶつかった。
ごすんと床にコロコロと転がったのはジャガイモだった。
「っくぅぅ」
(いったぁーー)
呻いてその場にうずくまる。ジャガイモ堅すぎぃ。
(バカだ。怒らせてどうするの謝らなくちゃ)
「ごめんなさ…」
痛みを堪えてちゃんと謝ろうとしたら、次のジャガイモがどすっと肩に当たった。これも痛い。はっと顔をあげるとみんながいっせいに何かを持って振りかぶっている。
(ど、土鍋投げたら殺人罪で立件できちゃいますーー!!!)
声にならない悲鳴をあげ、逃げ場もなくその場でちぢこまると、「やめろ!」と鋭い声とともに王子様のマント…じゃなくて総長の特攻服に包まれた。
わたしの2倍近くあるたくましい腕が、わたしの体を引き寄せる。リアは細いからカウルの中にすっぽりとおさまった。堅い胸板に顔がぶつかる。
「へっ」
男に抱き締められるのはゆづか人生初である。
「カウル!またリアの味方をするのか!」
フェンがわたしを引き離そうと腕を引っ張った。
「こいつの言い分を聞いていないだろ。聞く前に力でねじ伏せるのはよくない。みんなも落ち着いてくれ」
「何を今更!散々俺達の温情をコケにしてきたのはリアだろう!」
「こいつは以前のリアとは違うだろ?」
「はぁ?何を言い出しているんだ!気でも狂ったか!それともリアに魔力で術でもかけられたか!」
「ちがう。たとえリアだとしても、この二週間の働きは認めてやるべきじゃないのか」
「総長、なにをおっしゃるのです。端正込めてやっと収穫した野菜を灰にし、畑を使えなくし、河口の流れを変え海の幸を途絶えさせた女が、ほんの少し働いただけで許されると思ったら大間違いです!さらにはやっと少ない材料で作った食事にケチをつけたのですよ?!」
みんなの、カウルを見る目までもが憎悪に染まっていた。
(ーーーまずい。この人にだけは迷惑かけないようにしなくては…!!)
「あ、あの、畑はわたしが復活させますから!!」
わたしは声を張り上げた。
わたしたちを取り囲んでいたみんなは一瞬シーンとしたが、直ぐにまた非難をしてきた。
「戯言を!手が汚れるからと畑仕事などしたことがなかったくせに!」
「また適当なことを言って逃げるつもりだろう!」
「そんなに働きたいなら、食事も自分でつくったらどうだ!」
お前に出来るわけないと笑われたが、わたしは餌を前にした犬のように、着いていない尻尾と耳をピーンと立てた。
「え?!厨房にいれてもらえるんですか?!?!」
「……は?え、あ?まぁ……」
わたしの勢いに押されて、言ったおじさんはタジタジとした。
「作ります作ります!喜んで!もちろん掃除も畑仕事もちゃんとやりますから!ぜひ作らせてくださいっっ!!
さっそく今夜の食事からお願いします!!やったーーー!!料理だーーー!!」
両手をあげて喜んだわたしに、周囲は唖然としていた。