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じゃがいも?こうして、こうやって、こうしてやる!

城の生活は朝が早かった。ゆづかは少しでも眠気を落とすように目を擦る。電気が無いからだろうか。この世界の人たちはみんなどこぞのヤンキーみたいな風貌なのに、早寝早起きで規則正しい生活をしていた。


掃除係も調理係も世話係も子供もすべて髪型から喋り方までヤンキーみたいだ。

警備隊が一番派手で、何度か緊急出動のようなものを見かけたが、全員でバイクにまたがり出発する姿は申し訳ないが暴走族そのものだった。


不思議なのは元の世界と変わらないバイクだ。

名前もバイクという発音らしく、それだけ素材や性能が別物であった。


詳しくは教えて貰えなかったが、バイクは錬金術師による錬金術によって形成されるらしい。各国の軍事力を示す物で、警備隊にだけ支給されるそうだ。


燃料ではなく魔力で走っているため、力が弱ければ小さなバイクにしか乗れないし、力が大きければその分大きなバイクを動かせる。


だから警備隊は魔力の強い者たちで形成されていて、憧れられる存在でありエリートなのだ。


警備隊の訓練指導で、三輪車みたいな可愛いバイクにのって練習している候補生達をみたが、笑ってしまうほどかわいらしかった。



そんな感じでこの国のことを少しずつ覚えていく中で、ここ二週間ほどのわたしの仕事は主に掃除だった。

とんでもなく広い城の掃除は手分けしてもやることがたくさんあるし、広大な敷地のていれも人の手ではなかなか、はかどらない。



わたしは食事と睡眠以外はほぼ働いていた。掃除した筈の場所をまたわざと汚され、水をかけられ、知らない失敗を自分のせいにされ、元々簡素であったベッドまで切り裂かれていたときには泣きそうになったが、とにかく“わたし”を信じて貰いたい。リアではなくゆづかなのだと伝えるのがわたしの第一の目標だ。


理不尽なこともあったが、文句を言わずに働いた。

仕事内容に不満はない。



ーーーーーーしかし、



「ジャガイモだ」


この世界へ来てからというもの、わたしはジャガイモしか食べて居なかった。

蒸かしたりスープに入っていたりはするが、とにかくジャガイモだった。


美味しいです。

貴重な食料をわたしのようなものに分けてくださりありがとうございます。

ーーでも、ちょっと工夫がほしい。


ついついこぼしてしまった不満を、周囲の者たちは耳ざとく聞きつけた。



「ーーーなんだと?!料理長が作った食事に文句があるというのか!」


見張り役の男が怒鳴ると、それを聞いた周囲の人たちもいっせいに非難を始めた。




「なんて図々しい」

「やっぱりリア姫はわがままだわ」

「文句があるなら食べるな!食わしてやるだけでもありがたいと思え!!」


料理係が調理器具を持ったまま次々と出てきてわたしを取り囲んだ。

おたまにフライ返し。うん。可愛らしい。

フライパンに包丁。やめようか。今にも刺されそうだ。卵を持ったそこの君。それは生卵かな?投げちゃ駄目だぞ。貴重な食料だ。


「いや、誤解…」


ジリジリと包囲網が狭まる中、わたしは顔を引き攣らせた。違うんです。ごめんなさい。口が滑りました。


「何をやっている!」


叫んだのはカウルだった。ちょうど警備隊が朝の訓練から戻ってくる時間であった。


わたしと警備隊を繋ぐ直線が、ざあっと人が避け道ができる。

カウルを先頭に、ラジとフェン、さらにその後ろへ何人も従えて食堂へ入ってきた。


「何を揉めているんだ」


「リアがなんかしたんだろ」


二週間たってもフェンはわたしをゆづかだと認めてくれない。顔を合わせればフェンの気が済むまで罵倒されるだけだ。

反対にラジは静かに怒るタイプらしく、親のかたきのようにわたしを睨んだ。


「リア姫が俺達の食事をバカにしたんだ!」


料理係のこどもが母親の影から叫んだ。


「あぁ?」


ラジの目が据わった。ひぃっ、こ、怖い。普段比較的静かなタイプだから一言が重い。凄い迫力だ。

「はああ?」と言いながら顔をちかづけてくる。これが不良界のメンチを切るってやつですか。



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