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めちゃくちゃ美人じゃないですか

***


貴族など位の高い者が処罰をうけ、監視下に置かれる場合、自室に軟禁だとなにかで聞いたことがあった。監視をつけ、行動を制限するのみである。よほどの事がない限り、酷い扱いは受けない。

しかし、一度脱走を試みた者などはそんな温情などなかったこととなり、監禁へと切り替わる。


ーーーわたしの部屋は、地下牢といった、尊厳も信頼も無くした場所であった。


簡素なベッドとトイレがあるのみ。いや、トイレがあるだけマシなのかも。

ベッドは撫でるとゴワゴワとし、布をぺろっと捲ると藁のような植物が敷いてあった。

窓もなく、格子の外側には見張りが二人つく。


「……牢屋…」


初めての経験に、なんとも言いがたい気持ちになった。



「何度も見張りを誑かして脱走したんだ。仕方ないだろう」


「それは確かに仕方ないかも」


以前のリアはやっぱり反抗的だったか。しばらくはここかがわたしの部屋になるらしい。一生ここは勘弁してもらいたい。狭くて良いから、せめて窓のある部屋にランクアップしたい。



「信頼回復に努めます…」


呆然としながら呟くと、チッと舌打ちをした見張り役に、勢いよく格子を閉められた。






***




やっと話し合いが一段落し、カウル・アフェランドラが自室に戻ると、すでに日付を跨いでいる時間であった。


話し合いはリアの処遇について。リアの処罰を軽くすることに、自分以外は大反対であった。

随分と説得に時間がかかってしまった。

しかもまだ理解をしてもらえたわけではなく、とりあえず今日はお開きにしようという流れで、結論を先延ばしにしただけだ。



代々、先代の総長の娘を守るのが警備隊の努めでもある。国政を継ぐのは世襲制ではなく、国で一番最強のものが総長となる。そして総長は先代の娘という姫を守り、のちのちには婚姻を結び、新たに繁栄させてゆくのがノーティ・ワンの流れであった。


リアが産まれた時、国は大盛り上がりであった。

この国では珍しい、金の髪の娘であったからだ。金の髪の者は国を繁栄に導き、人々に幸運をもたらす女神だと言う伝承がある。

リアは容姿も秀でて美しく、ラジとフェンと三人、俺達が警備候補生だった時から、いずれはこの人を守る男になるのだと思いながら鍛練してきた。


しかしリアはその美しさゆえ甘やかされたからか、女神だともてはやされたからか、大層歪んで成長した。ただ我が儘だけならゆるされたかもしれないが、リアは国を破滅に導く破壊者であった。

国の誰しもが、裏切られた気持ちになった。


だから、みんなの気持ちはよくわかる。

いきなりまたおかしな事を言い出して、俺達をこけにしているのだと思うのはあたりまえだ。


ーーーーーしかし。


リアは常に刺々しい雰囲気をはなち、人々を見下していたが、別人だと言い出した彼女は、まったく別物のオーラをだしていた。見た目はリアそのもの、しかし目つきも喋り方も全然違ったのだ。

そんな彼女を処罰することに、俺は躊躇した。


お前は幸運の娘を守るのだぞ、と幼いときから父に教えられてきた。

先代が崩御するとき、

「リアを預けられるのはお前しかいない。我が儘な娘だが、なんとか頼む」と、手を握られた。


俺の名前を呼び助けてくれと懇願する彼女に、その言葉を思い出し、もうこれ以上寛容できないと思っていた気持ちが、急激にしぼんだのだ。



「リア姫の罪は俺も重々承知している。だが、先代の遺言を守りたい気持ちもあるんだ。だから、最後のチャンスが欲しい。また裏切るような事があったら、俺が総長の座を降りて一緒に処罰を受けよう」


そう宣言した俺に、みんなの反応は様々だった。


「何言ってんだ」

「総長がそこまで言うなら…」

「総長まで責任取ることねぇよ!」



「わかってんだろうな。お前まで裏切ったらただじゃおかねぇからな」

フェンには胸ぐらを掴まれた。


ラジには「とち狂いやがって」と舌打ちをしたされる。フェンとラジは幼いころからずっと一緒に育ってきて、信頼のおける仲間だ。その二人が味方になってくれないのは痛いかった。



「これでまた騙されていたとなると、俺の首が飛ぶだけじゃすまないな……」


早くリアの問題を解決し、国を立て直さなくてはいけない。自分が就任してから国政が上手くいっていないことに、大きなストレスを抱えていた。カウルは深いため息をついた。




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