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5話 「目覚めと幼女」

 目を見開くとそこには全裸の幼女がいた。


 頭がぼーっとする。

 体もまだ力が入らない。

 体の感覚もない。


 川底まで沈められたところで意識が消えているからして、ここは死後の世界か?

 後頭部に当たる砂利の感触、激しく流れる川の音、ここはさしずめ三途の川か……。


 しかし、なんだ。

 冥界の案内人が全裸の幼女とは珍妙な冥界もあったものだな。

 俺は何気なしに目の前で濡れそぼった肢体をさらす幼女に問いかける。


「死後の世界ってのは裸の幼女がデフォなのか……?」

「な、なな、ななな……何言うんですか、あなた!?」


 幼女は顔を赤くし、そのツルペタな体を細い腕で隠すように覆う。

 まあ、いろいろ隠しきれていないがいいにしよう……。


「いやだって、なにも着ていないだろ、おまえ」

「そ、それは……、あなたを助けるためにしかたなく……」

「助ける……?」


 ようやく体の感覚と自由が戻ってきたところで気づいた。

 俺の足には足かせがついたままで、全身ずぶ濡れ。

 おかげで寒くてたまらない。


 見ればチュロスのようにねじられた、服の切れ端らしきものが岩につなげられている。

 そこで俺はようやく状況を飲み込む。  


 生きている……だと……!?

 水底に落とされたときは死を覚悟したんだが……。


 目の前で手をぐーぱーする。

 ついでに昼下がりの太陽に手をかざしてみる。

 そして実感する。


「生きている…………!? 生きている……! まだ生きているぞ! 俺は! ふっ、ふはははははは!」 


 思わず吹き出してしまった。


「ひぇっ!? やっぱりおかしな人だった!?」


 生きている喜び?


 いや、違う!


 俺の生き死には王族(あいつら)の思い通りにいかなかったということが愉快で仕方がなかった。

 

「ざまーみろっ! ははは、ははははは…………あっ」


 やべぇ、力が抜ける……。

 それもそうか、ずっと川に流されてたんだ。

 体力もなくなっている。

 意識ももうろうとしてきた。

 さっきまで太陽に伸ばしていた手が力なく落ちていく。


「だ、大丈夫ですか!?」


 俺の異変を察した幼女が身を寄せてくる。

 ちょうどそこに俺の垂れ下がった手がツルペタ少女のまな板に触れてしまった。

 なんだこれほんとにまな板か……!?

 幼女の悲鳴を聞きながら再び意識を失う。



「目を覚ましましたか?」  

「ここは……?」


 ふかふかした毛布の感触、暖炉で火の粉の弾ける音、そして先ほどの幼女が俺を見下ろしていた。


「私の家です。急に気を失ったのでここまで運んできました」


 足に今まであった重い感触がなくなっている。


 「運んできたって……、君が?」

 「はい!まず、切断魔法で足かせを切るでしょ。それから、除去魔法であなたと地面との間の摩擦をなるべく減らすことで何とか引きずってきました」


 なんだって?

 切断魔法に除去魔法などとさらっと言っているが、そんなに使いこなせるものなのか?

 この年でそこまで魔法を使いこなせるとは……。

 

「あ、あの、本当はこのようなご無礼申し訳ないと思うのです。ごめんなさい!」

「なぜ、謝る必要がある? 君が助けてくれたんだろう?」

「えっ!? でも貴族様を私なんかが引きずるのは無礼だって領主様が……」

「君は命の恩人だ。感謝こそすれど、怒ったりなんてするはずないさ。それに君は一つ勘違いしている。俺はもう貴族なぞではない」


 あんな下劣な輩と同列に扱われるのはこっちから願い下げだ!


「俺の名はアレク、家名はもう捨てた」

「わ、私はソフロニア・カライユと申します! 名前は長いからみんなから『リア』って呼ばれます」


 その『リ』はどこから出てきたんだ?

 というツッコミはしまい込んで。


「ふむ、レディに年齢を訊くのは憚られるのだが、あえて聞きたい。リアは何歳なんだ?」

「レディだなんてそんな/// まだ11歳ですよ~」

 

「なるほど。そしてこれまた憚られるのだが、この家には君以外の人が住んでいる気配がない。君のご両親はもしかして」


 そこでリアは悲しそうに視線を落とした。


「はい、4年前に洪水で死んでしまいました……」

「すまないことを聞いてしまったな……。魔法については誰に教わった?」

「教会にあった魔導書を読んだことがあって、知識はそれだけなんです。だから少ししか魔法が使えなくて……」


 11歳にして独学でこれほど魔法が使えるとなると、これは間違いない。


 この子は天才だ。

 知識を与え、正しく教えれば賢者にだってなれるかもしれない。

 俺は思わぬところで大魔法使いの卵に出会ってしまったのかもしれない。


「リアみたいな小さな子が助けてくれたなんてな。本当になんとお礼すればいいことか……」

「お礼なんてとんでもないです……! 私の方こそ、救っていただいたのですから!」


「うん?」


「その、骨の魚に乗って流れてきたり、流木を大樹に変えたり……。アレク様は不思議な力を使うことができるんですよね!?」

「えっ? いや、記憶にないな……。ていうか近い近い!」


 リアがずいずいと俺の方に迫ってきた。

 先ほどまでのかしこまった様子とは打って変わって探求心に満ちた研究者みたいだ。


(そうか、これがこの子の本質か)


 俺は合点がいった。

 リアのことだけではない。

 俺が起こしたというその現象のこともだ。


「それは俺がネクロマンサーだからだ。おそらくネクロマンサーの力を無意識的に使った。そして川底に朽ちた魚を使役し、流木を樹としてよみがえらせた」


 ネクロマンサー……。

 俺の人生を狂わせた元凶が俺の命を救うとはな……。

 だがもしかしたらこのスキル、磨けばかなり強力な武器になるんじゃないか……!?


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