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10話 「村の内政と再建」

なんだかんだで食糧不足は回避出来そうではあるが、もうワンプッシュ必要な気がする。

そして、村の見回りで気づいたことがある。

村人の数だ。


昼間だというのに農地を耕している人数が少ないし、何より男女比が圧倒的に女が多い。

というより働き手となる成人男性が少なすぎる。

村の案内を続けてくれているリアにそのことを聞いてみると――


「ここ辺境は戦乱続きで、国境を超えてやってくる敵国の兵隊と何度も戦っていました。そのたびに男の人達が兵士に取られて亡くなって……。村は女子供か老人しか残っていないんです……」

「そうだったのか……」


なるほど、この村は人手不足という根本的問題を抱えているのか。


「付きました。ここが最後に案内する場所になります」

「ここは……」


 村から少し離れた森の中に寂しげに並べられた墓石。

 誰も手入れしていないのだろう。

 苔が生え放題だ。

 

「ここにみんな眠っているんです……。戦場で亡くなって運良く死体だけ持ち帰られた人も、みんなのおじいちゃんやおばあちゃんも、みんな……」


悲しげに告げるリアはどこか大人びて見える。

きっとこの子は死体が運ばれてくるところを目の当たりにしたことがあるのだろう。

もしくは両親の死を思い出したのか。

子供にこんな顔をさせたくはない……。

こんな形で人の死に触れて、つらい思いをさせたくない。


「リア、つらい思いをしたんだな。だけどこれからは! 俺が領主になるからにはリアにも、村の誰にもそんな悲しい思いをさせたくない!」

「アレク様……」

「だから信じてくれ! 俺は絶対リアを幸せにしてみせる!」

「そんな……! それって、もしかして……」


勢いった言ったはいいが、まだ人手不足の問題も、橋の再建の話も片付いていないからなぁ。

それとどうしてリアは顔を赤らめているんだろう?


「まあ、領主として目下、人手不足を解消しなきゃだがな」

「あっ、あの、そのことで提案があるのですが!」

「お、なにかいいアイデアでもあるのか、リア?」


「その、こんなことを提案するのは憚られるのですけれど……。この墓地に眠る人たちを使えばいいのではないでしょうか……?」

 

 なるほど――それは盲点だった。

 たしかに死者である彼らは食料も休憩も必要としない労働力として使える。

 俺がその発想に驚いているのを見てか、リアが慌てて弁明する。


「あ、ごめんなさい! やっぱりこんなの間違ってますよね! 今のは忘れてください!」

「いや、素晴らしいアイデアだよ、リア! さすがリアだ! それでいこう!」

「え? えぇ!?」


 俺はしどろもどろのリアの手を取って彼女を褒める。



 俺は寂れた墓地に手をかざし、その下にある無数の『死』に命じる。


「この地に眠りし死者たちよ! 今こそ汝らの力を以て汝らの子を救い給え! さぁ、蘇るのだ!」


すると骨だけとなった手が次々と墓から生えてきた。

革と骨しか残っていない数百の屍者の群れが俺のあとに続く。

俺は早速、村まで降りて橋の再建作業を取り掛かるように彼らに命じた。

俺は村人から集めた斧やら鎚やらを彼らに持たせ、木を伐採し、橋を組み立てさせる。


相変わらず勢いの激しい川での作業は困難が予想されたが、水温を苦としない屍者たちの働きにより、日没前には橋が完成していた。

まあ、多少流された個体もいたようだが、数百人もいるのだから大した痛手ではない。


ついでに再建作業をさせるには人手が余ってしまったから、余ったのには収穫作業もさせた。


「すげぇ、まさか1日で橋を建てるなんて! やっぱあんたは俺たちの救い主だ」

「それに麦の刈り取りも終わっているなんて」

「あれ? 俺たち、明日から働かなくてもいいのでは?」


 やはり、村人たちの称賛の声は気持ちいい。




 ――それからというもの村の経営は良くなっていった。


 俺は屍者に命じて、洪水で壊れたという家や、貯蔵庫(浸水しないように)、更に風車やはなどを建て直した。

 今まで人手が足りなくてできなかったことすべて解決した。

 ここに村の内政は成った。





 俺はリアと二人きりで丘から村を一望する。


「こうしてみると壮観だな……」


「私とアレク様が初めてであった日のこと覚えてますか?」


「ああ……」

「あの日、私は死のうとしていたって話しましたよね」


「私はアレク様に命を救われたんです。大好きな村まで助けていただいて……。アレク様と出会ってから信じられないことの連続で……。でも私は施されてばっかりで何も返せなくて……」

「そんなことはない。あのとき命を救われたのは俺の方だ。これは半分は助けてくれた礼でもあるし、もう半分は俺の望んだことでもあるんだ。だからリアがそんなに気負う必要はない」

「でも……!」


「いえ、すみません……。お父さんとお母さんとの最期を思い出してしまうんです……。あの日、私はわがままを言ったんです。いつもよりパンが少なかったから。ただ、それだけだったんです……。でも二人は『ごめんね』って……。その夜の洪水で……、二人は……」


 リアの声はだんだんとかすれていき、その顔には涙がぼろぼろと流れ、とうとう話を続けられず泣いてしまった。


 そうか――両親と別れてしまったときのことを、この子は今も悔やんでいるんだ。

 それが彼女が誰に対しても優しく、困っている人を助けてあげたい理由なのだろう。

 『何もしてあげられないまま別れるのが嫌だから、何かしてあげたい』

 それが彼女の本質なのだろう。


 全ては死に備えるため――

 親しい人の死――それはすごく辛いことだ。

 そしてリアにとって俺は命の恩人だ。

 俺がいなくなることを怖がっていて――



「泣かなくてもいいさ、リア。俺は死なないよ」

「ぐすっ…………、えっ?」

「俺はネクロマンサーだ。死を司る力を持っているんだ。その俺がどうして死ぬことがある?」


 もちろんこれはハッタリだ。

 俺は彼女の涙を拭いながら言う。


「そしてその隣はリアのものだ。約束しよう」 

「アレク様……」


 リアには泣いてほしくない。

 リアには笑顔でいてほしい。

 だから――


「まだリアに命を助けられたお礼をしていたんだ。リアを幸せにするって――」


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