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突撃都市  作者: 山下 式
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岸辺の公園

「失礼、岸部航さんですか」


 壮年の男性の声が木漏れ日をすり抜けて届く。背もたれに後頭部を預けたまま声の主の方へと首を回すと、茶色のスーツを着た、穏やかな顔つきの男が不思議そうにこちらを見ていた。


「そうですが」


 そう答えると、男性の顔は喜びとも驚きともとれるように変化していく。


「これはこれは・・・」


 男は芝生を踏みしめながら近づくと、胸のポケットから一枚の便せんを取り出して俺に手渡した。変色して黄ばんでおり、かなり古いもののようだ。裏返すと連城翠と名前が記されている。

 雷で打たれたかたのようにベンチから跳ね起き、慌てて便せんを開く。


”約束は守った”


 便せんにはその一文だけが記されていた。どういう意味だと詳細を求める眼差しで男を睨む。対して男は穏やかな笑みを崩そうとしない。


「落ち着ける場所に行きましょう。どうぞこちらへ」


 公園の入り口を抜けて丸みを帯びた特徴的な自動車の後部座席へと案内される。窓越しに俺が座っていたベンチを見ると、公園の入り口には”岸部記念公園”と表記されていた。





 走り出した自動車は俺を政府のお膝元へと連れていくなんてことはせず、自動車は未だに公園の隣で停車していた。男は竹内と名乗ると、予め準備していた缶コーヒーを俺に手渡した。竹内は人工臓器がカフェインを自動でろ過してしまうらしく、ほとんど水しか飲まないらしい。

 

 世界はあれから三百年の月日が経ったらしい。日立アキラと富士芳明、新宮八千代の努力は身を結び、新しい社会の下に人類は発展を続けているようだ。彼らは歴史に名を残していたがそこに俺の名前はない。


「あなたが本当に現れるかを知人と賭けていましてね。負けてしまいました」


 そう言って竹内は笑った。どうやら俺の話は現代ではかなり眉唾物らしい。


「俺が現れるってよく信じましたね」


「我々の部署はあなたをサポートしてスムーズに現代に馴染めることを目的に立ち上げられたのですが、そんなものに金を使うのかと、それはそれは相当な物議を醸していましたよ。そもそもこんなおとぎ話を本当に信じるのかって」


「まぁ当然でしょう——」


「それでもこうやってあなたをお迎えできたのは、先人達から強く言われていたからです。しかもサポートにあの日立グループと富士財閥がついているんですから——と、名前で彼らの偉業が分かりますかな?とにかく、眉唾話も信憑性が増すというもの」


 俺はコーヒーを一気にあおってドリンクホルダーに缶を置いた。


「長話が過ぎました。お疲れでしょう。お迎えの準備はできています。出発いたしましょう」

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