花火と合宿 2
「ごーめん奏!遅くなったー」
智香先輩のところに行っていた2人が戻ってきた。
「いいよーそんな待ってないしー、それでどうだったー?」
「いやーそれが、智香先輩、彼氏の前だと智香先輩デレデレでさー……」
玲奈も奈々子も楽しそうに話してくれた、明日が怖いのは自分だけだろうか。
「あ、そうだ、空と葉加瀬くんに会ったよー」
「マジ!?どうだった?」
「どうって、まぁお似合いなんじゃない?空はめっちゃたどたどしかったけどねー」
「そうじゃなくって!葉加瀬くんの方、脈アリそうだった!?」
「流石にそこまでわかんないよ、っていうか奈々子勢い強すぎ」
「ご、ごめん……」
「奈々子ちゃんは空ちゃんのこと心配なんだよねー」
「ばっ!ちっ違うって!」
玲奈に的を当てられて奈々子は顔を真っ赤にして焦っていた。
こういう奈々子は初めて見るが新鮮だ。
「違うの?」
「……違うく……ない」
「素直で宜しい!」
玲奈は満足気だった。
「とりあえずこれ、綿飴」
2人に綿飴を渡して近くの空いていた段差に腰掛ける。
「こっからなら花火も見えるしここでいっか」
「そうだね、にしても暑っついねー、浴衣って正直そこまで涼しくないよね」
玲奈はパタパタと手で仰ぎながらだるそうにしていた。
「かき氷でも買っとけばよかったね」
「奈々子ちゃんそれだ!かき氷!ちょっと買ってくるね!」
「良いなーあたしも行くー」
そう言って玲奈のところまで行くと、奈々子に聞こえないように小声で話してきた。
「奈々子ちゃんのことお願い、かき氷はあたしが買ってくるから」
「まじか……」
「二人ともどしたの?行かないの?」
「奈々子ちゃん、さっき奏ちゃんが綿飴買ってくれて待っててくれたから、あたしが全員分買ってくるから奏ちゃんに良いよーって言ってたの、奈々子ちゃんは何味が良い?」
「あ、そーなの、ありがと玲奈、それじゃあイチゴよろしくー」
「りょーかーい」
ということで奈々子と二人で待つことにした。
「ほんっと玲奈ってわかりやすいよね……」
「流石に気付くかー奈々子は鋭いね」
「奏もあたしのこと気遣ってくれなくて大丈夫だよ」
「聞いても良い?」
「何を?」
「なんでそこまで心配なの?友達とはいえ普通そこまでにはならなくない?」
奈々子は少しの間黙ってしまったが、何かを諦めた様子で応えた。
「奏って鋭いところあるよね」
「鋭いっていうか流石に過保護がすぎるというか」
「あー、違うの、空のことは友達として心配なのは違わないんだけどさ、この結末をあたしは知ってるから、二人がうまく行くかどうかが心配なんじゃなくって、その後の空が大丈夫加賀心配なんだよ」
結末を知っている、奈々子ははっきりとそう言った。
二人は恐らくダメなのだろう、この恋は成就しない、奈々子の言葉と表情からそれは容易に読み取れた。
「実はあたしさ、葉加瀬の気になってる人知ってるんだよね」
「え?そのこと空には……」
「言ってない、言える訳ないよ、っていうか奏は鋭いね、誰かを先に聞かないんだね」
「……それは……」
それは確信が無かったから。
直接聞いたわけでもない、間違っていたらただの自意識過剰になる。
「あたしね、コンクールの前に葉加瀬に直接訊こうと思って呼び出して聞き出したの」
「なるほど、っていうかどうやって聞き出したの?あたしも結構頑張ったけど教えてくれなかったのに」
「簡単だよ、人の善意をつくだけ、特に葉加瀬みたいな優しい人なら尚更効果的だよ、適当にそれらしい雰囲気で好きですって告白してフラれる、そこから理由を聞いて……あとは判るでしょ?」
絶句してしまった、軽蔑してしまうほど最低な方法、でも確かに答えを知るならもっとも効果的な方法だった。
「最低……だよね……、でもこうするしか無かった、あたしにはこれしか思いつかなかった」
そこまでして聞き出して奈々子はどうしたかったのか、自分を犠牲にして秘密を知ってただ見守るだけ、これになんの意味があるのか。
「ごめん、意味わかんない、そこまでして知りたかったの?それに葉加瀬くんがもしその時に奈々子を選んでたらどうするつもりだったの?」
「流石にそれは無いでしょ、あたしのした告白は予想を確信に変える為だったからね、それにもし告白が成功してたとしてもすぐに嘘だって白状するつもりだったよ」
「奈々子、空のためにやったとしてもそれは葉加瀬くんに対してそれは酷すぎない?」
「あれ、引いちゃった?流石にそうだよね」
「あたしは、奈々子のこと大切な友達だと思ってる、だからこそちゃんと言うね、それは最低だよ、だからって別に嫌いになったりしないけど、そういうこともし今後もするならせめて相談して欲しい」
「ごめん、奏も玲奈も空のためにいろいろやってくてたのにあたしはホント何もできなかったから、それが嫌だった、空と一番近くにいたはずなのに何にもしてあげられない自分が……」
「してあげてるよ、奈々子はあたしや玲奈なんかよりずっと近くで空のこと見てあげてたじゃん、それだけで空は助かってたと思うよ」
「……優しすぎるよ、でもそういうとこなんだろうね、奏がモテるのって、男子からも女子からも」
「もー、そんなこと言われてもなんも出ないよ、けどホント次からは相談してよねー、信用されてないんじゃ無いかってちょっと心配したんだから」
「本当にごめん、次からは頼るよ、奏も玲奈も」
奈々子に少しだけいつもの笑顔が戻った。
「にしても玲奈遅いなー、何やってんだろ」
「良いの?聞かなくて」
「何が?」
「葉加瀬の気になってる人が誰か」
予想で言ってしまって良いのか少し悩んだが、多分この予想は当たっている。
奈々子の話から自分の中でほぼ確信になりつつあった。
「間違ってたらちょっと恥ずかしいんだけど、多分それあたしでしょ?」
奈々子は少し驚いた表情になった。
「気づいてたの?」
「流石にね、そこまで鈍感じゃ無いし、っていうかあたしは今は付き合うとかそういう気は全く無いから、それこそ空に頑張って欲しいって思ってるよ」
本心では葉加瀬が自分に対して行為を抱いていることがわかって嬉しかった、でも自分にとって今は恋愛に向き合えない、空のことも考えると遠慮したくなる。
「なるほどね、今は、ね」
「なに?」
「いや、なーんにも」
奈々子は自分の考えを見透かしたかのような不敵な笑みを浮かべていた。
少しして玲奈が戻ってきた。
「遅いぞ玲奈、かき氷ちょっと溶けちゃってるじゃんかー」
玲奈は少しだけ暗めの表情だった。
「ごめん、ちょっと見てはいけないものを見た気がしてさ……」
「なに?霊的な?……ではないよね……」
玲奈は静かにコクっと頷いた。
タイミングが良いのか悪いのか花火が上がり始めた。
「空ちゃんが泣きながら走ってくのが見えたんだよね……」
玲奈の言葉に奈々子の表情が曇る。
「あたしもすぐに追いかけ用途したんだけど見失っちゃって……」
「あたし!探してくる!」
奈々子はそういうと人混みに向けて走り出して行った。
「あたし達も……奏ちゃん?」
足が重い、今空にあって自分が言ってあげられる言葉が思い付かない。
「花火、見ない?」
「なんかあったの?」
「多分ね、あたし今、空に会わない方が良いと思うんだよね」
玲奈はそれだけで察してくれた、薄々気がついていたのもあるとは思うのだが。
「奏ちゃん、花火、綺麗だね、次は4人で見れたら良いね」
玲奈の言葉に静かに頷いた。
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