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友情と恋愛 2

 

 次の日の放課後、早速空のお願いを実行するために葉加瀬のいるクラスへ向かった。

 だが、そこには葉加瀬の姿は無かった。


「あの、葉加瀬くんってどこ行きました?」


 とりあえずクラスにいた人に聞いてみる。


「ん?花咲さんだよね?葉加瀬なら用事あるからって先いっちゃったよ?」


「そっか、ありがとう」


 他のクラスの男子を尋ねるというのはやはり気が引ける。

 ため息をつきながら仕方なく下駄箱へ向かう。


「奏、どうだった?」


 そこには空が待っていた。

 かなり緊張しているようだ。


「葉加瀬くんいなかったよ、先帰っちゃったんだって」


「そっか残念、ごめんね無理なお願いしちゃって」


「別にいいよ、ただ何回も尋ねるのはちょっと気が引けるけど」


「だよねー、流石に違う日にもう一回行ってきてっていうのは悪いから部活始まったら時間あるとき聞いてくれると嬉しいなー」


「まあ聞くのは前提なんだね……」


「ご、ごめん、嫌だった!?」


「いいよ、空のお願いだし、その代わりパフェおごりね!」


「ありがとう!パフェなんかで良かったらいっちばんいいやつ奢っちゃうよー!」


「まあそれは聞いてからね、とりあえず行こっか、玲奈と奈々子待ってるし」


 今日も同じ場所で勉強会を行うことになっている。

 玲奈と奈々子には先に向かうように言っているので恐らく先について席をとってくれているはずだ。


「つーわけで、奏ちゃん前よろしくー」


「しょーがない、帰りは奈々子に乗せてもらいなよー」


 普段歩いて通学している空を乗せて二人のいるカフェへ向かった。


「にしてもさー、空は葉加瀬くんのどこに惚れたの?」


「え?普通にカッコよくない?優しいし」


「いや、それはそうだけどなんか他にないの?カッコよくて優しい人なら吹部じゃなくても他にいっぱいいるじゃん」


「まあ、そう言われるとその通りなんだけど、ぶっちゃけ一目惚れなんだよねー」


「一目惚れって本当にあるんだね、都市伝説とかだと思ってた」


「その表現はどうかと思うけど……」


 走行している間に目的地に到着した。



 勉強会が終わり、昨日に引き続き玲奈と自主練することになった、どうやら両親にちゃんと許可をとってきたようだ。


「テスト終わったらコンクールメンバー発表だね」


「だね、まぁでも玲奈は余裕でしょ?」


「ありがと、奏ちゃんも多分大丈夫だと思うよ?」


「そうかな、それより2年の先輩たち、やっぱりダメなのかな」


「贔屓目に見ても今のうちの部活のレベルを考えたら難しいかな」


「やっぱりそうだよね、あたしもあんまり偉そうに言える立場じゃないけど流石に経験者とそうでない差は大きいよね……」


「……そんな事考えるよりさ、全国行くためにどうするか考えようよ!」


「そんなことって……」


「そんなことだよ、夢先輩にも言われたでしょ?奏ちゃんはメンタル弱すぎ、演奏にすぐそれが出ちゃう」


「そう言われても……」


「治さないとダメだよ!あたし達は部活を背負って戦わないといけないの、そんなことで本番ダメだったらそれこそ先輩達に失礼だよ!」


「……そっか、そうだよね!」


「あ、そうだ奏ちゃん、ソロパートのとこ練習してる?」


 ソロパート、今回の課題曲は2箇所トランペットのソロがある。

 オーデションの時にクマ先生に一応練習をしておけと言われたがそこまではまだ手が回っていない。


「一応クマ先生に練習しとけとは言われたけどまだそこまで到達してないや」


 玲奈はそれを聞いて驚いていた。


「そ、そっか、そうなんだー」


「どした?」


「な、なんでもない!なんでもないよ!」


「なら、いいけど」


「……奏ちゃんは、やっぱりソロパート吹きたいと思う?」


 ソロパート、正直考えた事もない、そもそもオーデションが大丈夫かどうかさえ自分ではあまり自信が無いぐらいなのだ。


「流石にそこまでは考えてないよー、そりゃ選ばれたら頑張るけど」


「そっか……」


「玲奈こそどうなの?玲奈なら1年でもソロ狙えるんじゃない?」


「うん、そうだね……」


 どこか変な感じだ、質問しておいて自分の応えにどこか上の空というか、なんか思い詰めているようなそんな感じがした。


「ごめん、今日は先に帰るね」


「あ、うん気をつけて」


 玲奈はそう言ってそそくさと帰ってしまった、帰り際何か言ってた気がするがよく聞こえなかった。

 次の日からの玲奈は特別変わった様子は無かった。




 テストも無事終わり、成績は勉強会のおかげで上から数えた方が早いぐらいかなりの好成績で終わることができた。

 そして待ちに待った部活が再開した。

 音楽室の黒板には1枚の大きなプリントが掲示されていた。


 コンクールメンバーと書かれた紙にそれぞれの名前が記入されている。

 トランペットは3年生3人、2年は夢先輩のみ、後は玲奈と自分の6人が合格、その他1年と2年の先輩たちはオーデション落選という結果だった。

 部内はなんともいえない雰囲気になっていた、純粋に喜べないそんな空気だった。

 そんな中、先生が教室に入ってきた。


「今回、オーデションの結果は見ての通りです。メンバーに選ばれた人、そうでない人、各パートそれぞれ居ると思います」


 何人かは悔しさで泣いている人もいる、そしてトランペットの先輩たちも、これがオーデション、自分も心が痛い。

 玲奈はというと真っ直ぐクマ先生の方を向き集中していた。


「しかし、あくまでもこれは現時点での話です、県大会に出場するという意味でのです、ここからの努力と実力次第ではまだまだチャンスはあります、この結果にめげずにオーデションに落ちてしまった皆さんも諦めず努力して下さい」


 その言葉に全員が顔を上げた。

 そして、チャンスがあるということは自分達コンクールメンバーも逆に落ちる可能性があることを意味していた。


「それとですね、今回のトランペットのソロパートなのですが、現状まだ決まっていません、山崎さん、倉島さん、最上さん、そして花咲さん、以上4名の中から1名もしくは2名選出しようと考えています」


 発表されたメンバーに部員たちはざわめいていた。

 まさかの3年の先輩すら差し置いてソロパートに選ばれる可能性があるということに驚きを隠せない。

 正直な所自分の技量では美咲先輩はもちろんだが他二人の3年生に劣ると思っていた、だがクマ先生が誰かを優先したり贔屓をするようなことはこれまで無かったと先輩たちからも聞いている。

 オーディションの結果、その一瞬だけ、一時的にだけ自分の演奏が先輩たちの演奏を上回ったのか、それが可能性としては恐らく一番高いだろう。


「ソロパートのオーデションは来週行います、それまでに選ばれたメンバーは練習をしておいて下さい」


 周りは正直選考の結果に不満が湧いていた、所々1年二人を選ぶのは何かあるという声まで聞こえてくる。

 こうなるとは思っていなかったが、こうなって嬉しいという気持ちは一切なく、周りの醸し出す疑惑にソロパートオーディションの辞退をしたくなる。

 特にトランペットの3年の先輩達は何も言わなかったものの、やはり思うところは大きいのか表情はかなり強張っていた。

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