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〇話
気がつくと、目が眩むほどのスポットライトに照らされていた。視界に入ってくる無数の光源に手を伸ばす。すると、力が抜けていくようにスポットライトは光を失う。
辺りは暗闇に包まれ、自分の息遣いが聞こえるだけで他に音がしない。
ここは、何だ?
まるで人の気配がしない。ただ何も無い空間が永遠と続いているようだ。暗闇のせいで自分の姿も見えない。
夢なのか?
妄想や想像に頭を侵されているのか。
さっきまでの光は一体なんだったのだろう。ここは現実ではない、俺の妄想や夢なのか。
もしそうなのだとしたら、覚めなければいい。
此の儘なんの柵にも拐かされず生きられるのなら、此の儘でいたい。
アイツのいない現実になど、戻れなくていい。
どこまで続くかわからない暗闇をかき分けるように歩んでいく。そこに出口がないことを祈りながら。現実に目覚めないように願いながら。