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偽王の骸  作者: 亜薇
本編
22/41

二十.変貌

 闍梛の森で七日間を過ごした魁斗は、第二の試練が行われる地下宮に近付いていた。

 森での試練は、魁斗にとって然程辛いものではなかった。他の王子には多大な障壁と為る魔力の制限も、彼には大した足枷に為らない。森に棲む妖異が現れれば蹴散らし、決められた日数が経つまで耐えるのみだった。

 先に森へ入った荐夕は、地下宮へ下りたきり行方知れずと為った。姿を消しただけなのか、死んだのかは分からない。荐夕の無事を示す蝋燭の火が消えたため、命を落としたか、生きていたとしても己を失い彷徨さまよっているかのいずれかであろう。

 妖と戦いながら、魁斗は荐夕のことばかり考えていた。あの強き異母兄あにが、何故試練に失敗したのか。森や地下宮で迷っているなら、たとえ亡骸に為っていたとしても見付け出したかった――魁斗が試練を受けた目的は、大部分が其れであった。

 もう少しで森を抜けるところまで歩くと、木々の向こうに人影が見えた。妖と魁斗以外居ないはずの地で人と会うとは、何か妙だ。

「魁斗!」

「樹莉か?」

 地下へ続く入口に立っていた異母妹いもうとを見付け、魁斗は思わず凝視した。

 普段走ることなど無い彼女が、騎獣が使えないため懸命に駆けて来たのだろうか。両肩を上下させ、見るからに憔悴している。色白の顔が一層蒼白に為り、何時いつもの涼しげな可憐さは何処にも無い。

「魁斗兄。お願い、摩伽羅宮へ戻って」

 第一声からして、非常事態が起きたと察した。試練の最中は候補者に接してはならないし、宮殿に戻れと言うのは魁斗に王座獲得の権利を放棄しろと言っているのと同じだからだ。

如何どうした。何が有ったんだ」

「荐兄が、荐兄が」

 兄の名を繰り返す乾いた樹莉の声は、殆ど音に為っていなかった。

「急いで! 早くしないと皆殺されてしまう。荐兄が、おかしいの」

 精一杯張り上げた声は、酷くかすれていた。良く見ると紫苑しおん色の両眼も、泣いた後らしく赤く腫れている。

「殺されるって、荐兄にか?」

 怪訝に問うた魁斗は、樹莉を落ち着かせようと彼女の頭に触れようとした。此れまで幾度もしてきた行為だが、樹莉は魁斗の手を払い除けた。震えながら自身の腕を抱き、怯えるような、嫌悪するような過剰な反応を示していた。

「私、私、荐兄に……」

 樹莉は先を続けようとしなかった。そして此の時は、彼女と荐夕との間に何が起きたのか、魁斗にも想像が付かなかった。

 明らかなのは、樹莉は其れきり魁斗と目を合わせなく為ったことだ。

「魁斗じゃないと止められない。早く、早く行って!」

 只ならぬ樹莉の様子を見て、魁斗は宮殿の異変が事実であると判断した。賢く気高い異母妹が、魁斗に嘘を吐いて試練を止めさせようとしているなど考えられない。

「私の所為だ。荐兄を返してって……どんな姿でも、死んで骸に為っていたとしても返してって言ったから。ごめんなさい、ごめんなさい、謝るから……」

「樹莉、分かった。先に戻るが、一人で帰れるか?」

 何かを恐れ、身震いを押さえ付けている樹莉に、魁斗は出来る限り優しく問い掛けた。彼女は心細げに頷くと、下を向いたまま最後に付け加えた。

「魁斗、荐兄を助けて。必ずだよ」

「ああ、もちろんだ」

 固く約束して、魁斗は一人摩伽羅宮へと走って行く。兄の背を見送りながら、空疎な樹莉は独りちた。

「嘘を吐いたら、許さないからね」









 事の真相を確かめるため、摩伽羅宮に戻った麗蘭と魁斗は、豹王の王命の下『王の爪』に囲まれ囚われの身と為った。

 想定外にも二人は離れた場所に監禁され、魁斗の扱いは殊更ことさら酷いものだった。地下に存する冷たい鉄格子の牢屋へ連れて行かれ、囚人同様に天井から垂れる鎖に繋がれたのだ。

 魁斗の誤算は三つ有り、こうして縛される瞬間まで気付けなかったために、窮地に陥ることと為った。

 一つ、肉親である樹莉に悪意は無いだろうと踏んでいた点。二つ、今の樹莉がかつての彼女と変わっていないだろうと思っていた点。そして三つ目は、今なお麗蘭にすら隠し続けていた許されざる罪過ざいかが、浮那大妃や樹莉を含めて誰にも知られていないと考えていた点であった。

 両手首を上から吊され、膝を石床に付けた状態にされ身動きが出来ない。麗蘭の安否も分からず、いざと為れば簡単に破れると思い抗わなかったが失態だった。拘束具には強い術が掛けられていて、魁斗の神力でさえ歯が立たなかったのは、完全に読みが甘かった。

 神気を感じるため、麗蘭が王宮の中で生きているのは確か。しかしごく小さな波動であり、位置の特定は難しい。

「久し振り、魁斗。やっと帰って来てくれたんだ」

 彼を縛った複数の男たちと入れ替わりに、樹莉が入って来た。異母妹の姿を見るのは三年振りで、闍梛宮の真前で別れた時以来だ。正面で向かい合った樹莉は、魁斗の頭から足元までを見て満悦な笑みを浮かべた。

 知的で大人びた雰囲気は、以前と少しも変わらない。自分の妹ながら、離れているうちに美しさも磨かれた。只、決定的なものが違っていた。樹莉を元の樹莉ではない別のものに為らしめた、得体の知れぬ何かが。

「あんたを捕まえたら如何してやろうかって、ずっと考えてた。考えるのは楽しかったけど、あんたの顔を思い出す度に如何か為りそうだった」

 其の言動から、魁斗は異母妹から確かな害意をみ取った。嫌厭けんえんの眼差しを向けられる理由として、直ぐに思い当たる節は無い――無いと思い込もうとしていた。危機感を持った途端、真っ先に麗蘭が心配に為る。

「麗蘭を何処へやった」

 焦燥を込めた目で睨むと、樹莉は怯むどころか愉悦に口端を歪ませた。

「あのお姫さまが相当大事みたいだね。三年も家を避けていたあんたが飛んで来たくらいだから、予想はしていたけど」

 破顔する異母妹の言に、魁斗は耳を疑った。

「母上みたいに妖の餌にする? 其れとも、其処らに居る兵にでも襲わせようか? 魁斗、麗蘭のこと未だ抱いてないんでしょ? 天帝に仕える処女おとめが凌辱されたらどんな天罰が下るのか、とても興味有るな」

 樹莉が何を話しているのか、理解するのさえ難しかった。斯様に醜い言葉が、幼い頃より見知った少女の口から出たとは、欠片も思いたくなかった。

「おまえ、自分が何を言ってるのか分かってるのか。一体如何したんだ」

 苛立ちを忘れ、魁斗は鋭い戦慄に貫かれた。身内だからこそ混乱を隠さず、はっきりと狼狽えていた。

――同じだ、荐夕の時と。

 あの時も、尊敬していた兄が狂うのを止める機会すら与えられずに、戦わざるを得なく為った。既視感を覚えて唖然とし、樹莉の変貌を受け容れられずまばたきを繰り返す。

 動揺する魁斗に対し、樹莉は愛らしく首を傾げて微笑み続けるのみである。

「樹莉、教えてくれ。何故こんな真似をする? 麗蘭に大妃の企みを止めるよう依頼したわけは?」

 罪状としての大妃暗殺が、魁斗らを捕らえる名分であるのは、既に自明だった。

「そもそも、大妃の企みなんて本当に有ったのか?」

 確信を持ち尋ねた時、樹莉は勿体振らずに答えてくれた。

「大妃には協力をお願いしただけ。闍梛宮の大蛇に身を捧げれば、あの人が蘇る。豹貴兄の身体に降りて、二人で魔王として君臨出来ると言ってね」

 推測した以上の凶行に、魁斗は訊かなければ良かったと悔やんだ。『あの人』というのは、恐らく荐夕を指すのだろう。

「簡単に騙されて、おぞましい蛇に呑み込まれてくれたよ。あの母上が、信じられる? ま、魁斗は知らないだろうけど、母上もあの人を喪ってから大分おかしく為っていたし」

 詰まるところ、樹莉がはかり大妃を死に追いやったということだ。荐夕に大勢の子供を殺され、本人までもが死んだ悲劇のために、実の娘に真顔で提案されて疑う力を失くしていたに違い無い。

「何のために、そんな惨いことを」

 大妃が哀れでならなかった。魁斗の目から見て、善人とは言い難い面も有ったが、娘に欺かれ妖に屠られるという死に方が相応ふさわしい悪人ではなかった。

「一つは、あの女が嫌いだったから。もう一つは、あんたと戦わせればあんたが更に苦しむと思ったから」

 悪びれもない回答に、魁斗はまたもやぞっとさせられた。

「あの大蛇は、『真誠鏡』と共に幾人もの魔王候補を殺してきた地下宮殿の試練の一でもあり、闍梛の地の心臓でもある。光龍でもなければ、本来滅ぼすのは不可能な化け物だよ。麗蘭が倒して浄化したから、地下宮は崩壊した」

 突如落盤が起きたのは、其の説明で魁斗にも合点がいった。魔王を選ぶのにあの地が使われなく為ると思うと、其処だけは良かったと思う。

「豹貴兄を呪ったのも、大妃じゃなくておまえということか。荐夕を復活させようとしているのも……」

「私とあの人は、愛し合っているの」

 昔、一緒に暮らしていた時には見せたことの無い色香を漂わせながら、樹莉は夢見るような表情で詠った。覗かせた魔性は、魁斗をも数瞬戸惑わせる濃厚な毒気をはらんでいた。

 樹莉が荐夕を『愛している』とは、驚くべき事実であるが心当たりが無くもない。家族で過ごす中でも、荐夕に対する彼女の態度は他の兄弟へのものと違っていた。

 されど荐夕には愛しんでいた妻が居たし、樹莉を女として見ているとは思えなかった。何よりも、樹莉とは兄妹として血が繋がっているのだから。

「初めて私を愛してくれた、あの人の身体は朽ちてしまった。だから豹貴兄を器に、大妃の魂を生贄にして、反魂はんごんの術を使った。麗蘭が大妃を斬った時、術は完成したはすだった――」

 悔しそうに奥歯を噛み締め、樹莉は魁斗の頬や顎を手指で撫でていた。ひんやりとした感触を覚えながら、彼は異母妹の話を繋ぎ合わせていた。

「ところで、あんたのところへ送った人形だけど。良く出来た傀儡だったでしょ? あれは麗蘭の分身みたいなものだし、あのまま抱いても良かったんだよ。折角寝所へ送ってあげたのに」

 当初大妃に依るものと思われていた魂封こんぷう術は、樹莉が為したものだったらしい。人界で魁斗が襲われた際、麗蘭は闍梛に居た大妃と未接触だったことから、元より違和感は有った。

「出来損ないの代替品が無くても、麗蘭はもう直ぐあんたのものに為りそうだけど。あんた如きが、あんない女を良く落とせたものだね」

 魁斗の顔に触れていた樹莉の手が、顎や首筋へと下がってゆく。

「あんたの正体を知っても、清廉な神巫女さまはあんたを好きでい続けるかな? 想い人どころか、仲間としても失格なんじゃない?」

「俺の、正体?」

 何の話をしているのか分からず、魁斗が聞き返すと、樹莉は眉間に皺を寄せた。

「私が知らないと思ったら大間違いだよ、魁斗。あの人は自害なんかしてない。あんたに殺されたんだって」

 彼の首元へ添えていた両手指に力を込め、締め上げようとするが思い止まる。唇を結び、激情を押さえ込んで手を離すと、代わりに魁斗の頬を平手で打ち据えた。

「人殺し人殺し人殺し人殺し! あんたが生きててあの人が死んだなんて、絶対におかしい! 何であの人だけが! 何で私だけがこんな想いをしなきゃならないの? おかしいおかしいおかしい」

 まくし立てながら何度も打ち、終わりの数回は拳で殴り付けた。口内を切ったらしく、唇の隙間からは血が流れ、頬が赤く腫れた。

 流血を目にして嬉しそうに笑い、樹莉は打つのを止めて気を静めた。

「ねえ、何で? あの人を助けてって言ったのに、何で殺しちゃったの?」

 一転して虚ろな声で尋ねられ、魁斗は目を見開いた。神々でもなければ誰も知り得ぬはずの秘密が樹莉に伝わっていたのは衝撃であり、自らのおごりを痛感した。

「母上にも教えておいたから、化け物に為っても冥府に行っても、魁斗を憎んでいるでしょうね。ひょっとして、あんたばかり蛇に狙われたんじゃない?」

 愉しそうな樹莉の笑みに、魁斗は敵意を通り越した殺意を感じた。

――樹莉。本気で荐夕を恋い慕っていたのか。

 そうでなければ、此れ程までに憎まれるわけが無い。魁斗は兄と妹の関係を受け入れざるを得なくなってゆく。

「私も大妃に似て嫉妬深いところが有ってね。あんたが居ないうちに、気に入らない女は皆殺してきた。例えば春澪しゅんれいは、お腹を剣で切り裂いて処刑させたし――あの人の子供を身篭もってたから」

 春澪というのは、荐夕が寵愛していた只一人の妻である。彼が起こした事件の責任を負わされ刑死したと聞き及んでいたが、樹莉が手を回していたとは思いもしなかった。

「他にも居るよ。あの人が気に入っていた女官や、あの人に色目を使っていた女官。罪を被せて極刑に追い込んだり、人知れず妖に食べさせたりした。嫌いな女が泣き叫んでばらばらに為るのを眺めていると、少しでも気が晴れたの」

 真実であろう残忍な悪行の存在に、魁斗は総身が粟立あわだつのを覚えた。確かに浮那大妃にも似た性質が有ったが、其処まで惨たらしい仕打ちはしなかったし、樹莉のように愉楽を持って行ってはいないはずだ。

「魁斗。人界に行って、紅い瞳の美しい人を好きに為ったね。呪い殺してやろうかと思ってたけど、あんたを裏切ってくれたから見逃してあげた」

 出し抜けに紅燐の話を振られて、魁斗の背筋が寒く為る。

「でも今は、麗蘭が好きなんでしょ?」

 再会したばかりの樹莉が、如何いかにして胸の内を当ててくるのか分からず、もの恐ろしい。

「私とあの人が引き離されたのに、あんたが麗蘭と結ばれるなんて、絶対に許さないよ」

「樹莉、おまえ」

 呪詛じゅその念を込めてめ付けられ、魁斗は其れ以上続けられなかった。樹莉は彼の顔に己の唇を近付け、口元に滲んだ血を温かな舌先で舐め取った。

 続け様に、魁斗の前髪を鷲掴みにして顔を上げさせ、一切の容赦も無しに言い放つ。

「私たちは、結ばれた途端に死に依って引き裂かれた。全部、全部あんたの所為」

 乱暴に手を離した彼女は、魁斗にも聞き覚えの有る名を呼んだ。

「星燿」

 間も無く、入口から四つ足で歩く妖獣が入って来た。樹莉の下まで進み出ると魁斗の方へ向き直り、前足を揃えて喉を鳴らす。

「城の近くで捕まえさせた。あんたの騎獣でしょ」

 にわかには答え辛い位に、星燿の態度は何時もと違っていた。懐いている魁斗を前に全身の毛を逆立て、今にも飛び掛かりそうな勢いで牙を剥き出しにしている。騎獣ではなく、只の妖に戻ったかのようだ。

「今は私の言うことしか聞かないんだ。あの人に、妖を操る力をもらったから」

 其の発言は、魁斗が抱く疑問の一つへの答えと為った。魂封術や反魂などといった高度な魔術を、若い樹莉が浮那大妃に匹敵する程の力で為しているのは、幾通りの仮定を置いても不可解である。誰かから何らかの形で力を借りているとすれば、未だ得心がいく。

「魁斗、あんたは星燿に喰われて死ぬの。大妃と同じ死に方なんて、光栄でしょう。あんたの目の前で麗蘭を殺しても良いんだけど、あんたを生贄にしないとあの人は元通りに為らないから」

 判決を下され、失意の余り放心する罪人のように、魁斗は力無く項垂うなだれた。そんな彼を嬉しそうに見下した樹莉は、燃える官能を刺激されて舌舐めずりをした。

「ふふふ。魁斗のそういう顔見てたらまた身体が熱く為ってきちゃった。さっき散々してきたばかりなのに、未だ未だ全然足りないみたい」

 綺麗な顔を紅潮させて身体をうずかせ、躊躇いも無く淫らな言葉を口に出す樹莉に、魁斗は身を竦ませた。荐夕への道ならぬ恋と魁斗への怨恨が、誇り高い少女を此処まで堕としたのかと思うと、罪悪感に息も出来なく為りそうだ。

「猶予をあげる。私を地獄に落としたこと、此れから麗蘭を絶望させること、せいぜい悔いるが良い」

 星燿を残し、魁斗を鎖に繋いだまま、樹莉は高らかに告げて立ち去った。魁斗は顔の傷を治癒するのも忘れて打ちひしがれていたが、自分の命よりも先ず麗蘭を案じていた。

 変わり果てた樹莉の奥に、一欠片でも良心が残存しているのを願うしか無い。そして、知らず識らずのうちに想いを寄せていた麗蘭の強さを、信じるしか無かった。

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