第1話 怪しすぎる男にはついて行ってはいけない
平日の午後、空は快晴 雲は流れ 外からは子ども達の無邪気な声がちらほら聞こえる。 ーーあぁ、子供はいいねぇ…
6畳ワンルームの部屋に使えないPCやゲーム機、ラノベ、 そして大量のゴミが散乱している。僕の名前は速見走馬。大学受験に落ちて俗に言われるニートをやっているピチピチの21歳だ。先日、仕送りを絶たれて残金は2078円…ついに昨日には電気もガスも止められて絶望真っ最中だ。
特になにもすることはないので眠っているとインターホンの音が部屋中に鳴り響いた。
ーー誰かが尋ねて来ることなどほとんどないのに…
僕は不思議に思いながらも石のように硬くなっている足を持ち上げ玄関へ駆けつけた。
玄関の扉を開けると、身長が高くスーツを着こなした、いかにも仕事ができるというような男がたっていた。
「ここは速見走馬様のお宅でよろしいでしょうか?」
セールスか何かかな?とりあえず早急に帰ってもらおう。
「はい、何の用ですか?あいにくセールスなどには興味ないのですが…」
「いえ、セールスではありません」
「じゃあなんですか?めんどくさいんで速く済ませてください」
「はい。じゃあ、単刀直入に申しますと……私たちが開発したテレポートマシンの実験台になって欲しいのです」
「は?」
「簡単に言うと人体実験させてくださいということです。もちろん報酬は差し上げます。失礼ながらあなたのことは調べさせていただきましたが、あなたはもう生きていても仕方がないのではないでしょうか?」
男はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「いや、その言い方は失礼じゃないですか?」
「すみません、我々も緊張してますので…」
ーー我々?
「あなたは電気もガスも止められてもうすることもないでしょう。働きたくもないし、ずっとだらけていたいのではないですか?もし私たちの実験に参加してくださるなら一生分の生活費を保証しましょう。」
「マジで!?」
正直、僕の心は揺らいだ。
「返事は今ではなくていいので決まったらこちらまでお知らせください」
そう言って、男は名刺を僕に渡し帰って行った。
これはとてもいい話ではないか?でも怪しすぎる。こんなの裏があるに違いない。
名刺を破ろうとすると僕の携帯がなった。
「…はい」
10分後、電話を終えると僕の指は名刺の電話番号にかけていた。