8 ひとつめの記憶
私が生まれたのは...さあ、わからないな。自分の生まれた事象なんて観察出来ないもの。でも、私に似たやつが2つに分かれて新しいのが生まれた事があるから、多分私も何かから分かれたんじゃないかな。
とにかくお腹が空いていたんだ。他に何もできないくらいにお腹が空いていたから、手当たり次第に食べた。大きくなるために。
食べ物はいくらでもあった。たっくさんあったから、たーくさん食べた。はじめの頃のことは、それしか覚えていない。
私たちが気付いた時には、食べ物は全員であと何日食べる分もなくなっていた。みんなで食べ過ぎてしまったのだ。
私たちは思考を共有する1つの生命だったので、みんなに同じ考えが生まれていた。食べ物をなんとかしなければいけない、という事。これ以上好き勝手に食べてはいられないという事。
私たちは、何が悪かったかを考えていた。生まれてすぐの時には、何故あんなにたくさんの生物がいたのか?
察知したところによれば、生物は生物を食べていたーしかも私たちのように生命力を吸い取るだけでなく、物質的にーのだから、なくならないのは変だった。
私たちは、残ったわずかな食料を一か所に集めた。きちんと分配するためだ。あらゆる生物をひとまとめにしてみたら、2000を超えるばかりの数だった。
私たちは識る事にした。
生物の記憶を幾つか取り込む事にしたのだ。
私は人を喰った。今までの食事のように生気を吸い取るだけじゃなく、自分の血肉に変える、そんな力がある事が分かったのだ。
そうして私は、
私は、
今までとは違う存在になった。
生きてはいない半物質の体。今までの両方の記憶を持つ精神。
そうなった私がどちらの私なのか、わからない。今までの記憶はあるものの、すべてが曖昧になってしまった。




