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セレニアの国の物語  作者: さなか
アルソリオのトゥヴァリ
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終幕=====第4幕

 鏡に向かって、髪を梳いて、赤い一つの束にした。ルグネの花で染めた茶色の服を着て、ペルシュはくるりと回った。


(黄色の花だったから、黄色になると思ったのに。)


 三年前から精霊王は、人間にも植物を使う事を許した。畑で食べ物を作ったり、服を織ったり、食べ物の調理をしたり、これからは人が自分でやるようにと言った。

『放牧と言うのです。ナランサに教えられ、どういうものか見て来たんですよ。』

 と、集まった人々に向けてにっこり笑った。


(精霊にやってもらえば成功したんだろうけど...。)


 ペルシュは、その茶色も自分の赤毛に悪くない、と思った。


「母さん、父さん。」


 ペルシュは、テーブルに籠を置き様々な葉野菜の葉をちぎるのも手馴れてきた両親に声をかけた。

 ミスラは立ち上がって、テーブルを回り込んでペルシュの元へ来た。


「...行くのね。」


 と、険しい顔をして、言った。


「ごめんなさい。」


「...怒っているのではなく、心配しているの。」


 そう、ペルシュの手をぎゅっと握りしめた。


「これを持って行きなさい。」


 父も立ち上がって、戸棚から取り出した物をペルシュに渡した。

 乾燥させた肉だった。


「こうすると何日かもつと、アイピレイス様に教わったんだ。精霊に作ってもらったんだよ。」


「父さん...ありがとう。」


 ペルシュは父に抱きついた。母にも、そうした。


「トゥヴァリが憎いわ。」


 ミスラは苦い顔で、けれどどこか笑い顔のような口元で言う。


「でも、宮殿の牢に閉じ込められていたあなたを救ってくれたんだもの。他の誰も気がつかなかった。こうして会えたのも、彼のおかげだわ。」


「ありがとう、母さん、父さん。」


 ペルシュはもう一度二人に抱きついて、家を出た。


 東の門に行くと、人影は三つあった。


「レニス、ラナ!」


 ペルシュは二人に飛びつこうとした。が、ラナはそれを避け、レニスがペルシュを止める。


「子どもがいるんだって。」


 と、白いの馬の背の上で、鳶色の髪と目の青年は言った。精霊がひとつ、側に漂っていた。


「ラナ!そうなの?」


「ええ。それで、トゥヴァリという名をつけたいのだけれど、もらってもいいかしら。」


「やめろよ、122番目なんて名前。」


 トゥヴァリはしかし気恥ずかしそうに、言った。


「もっといい名前がある。オルマというのはどうかな。新しいって意味だよ。」


「いいな。でもそれ、俺たちの子につけていいのか?」


 レニスは少年の頃のような、悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「何で?」


「お前たちにも、そのうち子どもが生まれるだろ。」


「な!」


 トゥヴァリの大声で、馬が嘶いて動いた。トゥヴァリはあたふたと慣れない手つきで馬を宥める。

 ペルシュはキョトンとした顔でいる。


「トゥヴァリとは...家族になったわけじゃないし...。」


「二人きりで別の地に行くのに、ならないでどうするの?他に人はいないのよ、ペルシュ。」


 ラナは呆れて言った。


「どうして男と女は家族にならなきゃいけないんだろう?」


 とペルシュは考え込む。


「トゥヴァリ、お前、頑張れよ。」


 レニスの励ましにトゥヴァリが苦笑いをした時、遠くから「おーい」と呼ぶ声が聞こえた。

 赤い帽子に赤い服、赤いとんがり靴で走ってきたアイピレイスは、しばらくぜいぜいと息を切らした。


「大丈夫ですか?」


「うーん、さん、びゃく年ぶりに、老化していく体が、重くてね...。」


 はー、と落ち着いたところで、アイピレイスは一冊の本をトゥヴァリに手渡した。

 トゥヴァリはパラパラとページをめくる。


「胃もたれ...切り傷...頭痛...脳震盪...。これは?」


「ハーヴァがこの三年で書いたものだよ。おそらく、君に残すために。」


 トゥヴァリは本を閉じ、しみじみとその白の表紙を眺めた。'医学'と記されている。

 三年前の宮殿崩壊の日以来、トゥヴァリとハーヴァは会っていなかった。長い間ペルシュを牢に閉じ込めていた確執もあって、トゥヴァリはハーヴァを許すことが出来なかった。


「元気ですか?」


「...一言も話さない。毎日ひたすら、書き続けている。死ぬまでのすべての時間を費やしてしまうようだ。」


「お礼を伝えてください。」


「いいとも。君たちは、どこへ行くんだい?」


「東の森でナランサ様が待っているんです。木は家を作れる、食べ物も多くある。森は人が初めの拠点に出来るだろうと。」


「そうか。それでも危険は数多い。気を付けて行くのだよ。」


 トゥヴァリはアイピレイスと握手を交わした。それからレニス、ラナとも同じように別れの挨拶をして、ペルシュの手を取り馬に上げた。


「じゃあね!」


 手綱を取るトゥヴァリの前で、ペルシュは大きく手を振った。


「ようやく冒険だね、トゥヴァリ。」


 ペルシュは興奮して言った。赤毛がトゥヴァリの鼻をくすぐる。


「精霊のお守り付きだけどな。」


 光の球はペルシュよりもトゥヴァリに近いと張り合うように、周りを飛び回った。


「ああ、ワクワクするなー!そうだ、周りの景色をよく見ておかなくちゃ。東の門を出たら草が少ししかない荒野だよ。まずは地図を作らなくちゃね。それから家を作って...ナランサ様の部屋はどうしたらいいと思う?四本足じゃベッドに寝られないよね?」


「お前って、すっごいな。」


 トゥヴァリは笑った。


「怖いもの知らず。」
























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「それが本当なら、オルミスに伝わっている歴史は全然違うってことになってしまうんですけど...。」


 焚き火の炎に、ゆらゆらと影が揺れる。

 ハンドレッドの感想にコカトは満足そうに、胸を張って鼻を鳴らした。


『そうだとも。戻ったら俺の活躍を正しく伝えるのだぞ、オルミスの王子!』


「俺の活躍?どこにコカト様が出てきたんでしょうか?」


『途中からずっといたじゃないか!何の話だと思って聞いていたんだお前は!この間抜け!』


 コカトは鳶色の目をキッと釣り上げて、固い木の実のついた棒でハンドレッドをぽこぽこ殴った。


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