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プロローグ

二十世紀に流行ったアニメ、『宇宙戦艦ヤマト』がリバイバルされました。

それをヒントに創ったパロディです。

 二〇一八年、JAXAが打ち上げた小惑星探査船はやぶさ2は、探査対象の小惑星リュウグウに到着した。はやぶさ2は小惑星リュウグウのサンプルを採取するため、インパクタを撃ち込み、クレーターを掘った。そのクレーターを見た人間たちは驚いた。クレーターの底に現れたのは人工物だった。


 地球人たちはオーバーテクノロジーを手に入れた。重力制御である。それを真っ先に手に入れたのは日本だった。小惑星リュウグウは慣性飛行を止め、重力制御で軌道を変更し、太陽系外縁に向かった。その場にいてサンプルを手に入れた探査船は、はやぶさ2だけだった。世界中の国が重力制御の実用化を目指した。そのレースの先頭を、日本が走った。


 だが重力制御の実用化は容易なものではなかった。実現まで半世紀もかかった。二〇六八年、一隻の宇宙船が竣工した。その宇宙船は、日本宇宙自衛隊所属、宇宙護衛艦やまとだった。


 全長二六三メートル、質量三万トンという、当時ではずば抜けた世界最大の宇宙船は、異例なことに地上で建造された。やまとは地球への離着陸が可能だった。ロケットエンジンで飛行する宇宙船の中には、大型の宇宙船で地球に離着陸できるものはなかった。


 地球から離陸するためには、第一宇宙速度である秒速七・九一キロ、時速に直すと二八四〇〇キロのスピードが必要だった。実際は高度が上がると地球の重力が小さくなるので、必要な速度は小さくなる。推力が維持できなくなる前にその速度に達していればよいので、必ずしも第一宇宙速度は必要ない。しかし地球からの離陸には膨大な速度が必要なことに変わりがない。大型の宇宙船は天体への離着陸ができないのが当時の常識だった。


 この常識を打ち破ったのが、やまとの主機(エンジン)、重力制御エンジンだった。やまとは自分の周囲に重力場を作り出し、自由落下によって推進する。必要なのは重力場を維持するエネルギーだけで、速度による運動エネルギーは必要ない。やまとに搭載されたタンデムミラー型大型核融合炉は、そのエネルギーを作り出すことが可能だった。


 実は、やまと以前の移動手段は、全て同じ原理で動いている。人間が走れるのは、足で地面を後ろに蹴飛ばしているからだ。自動車は車輪を回転させることによって、地面を後ろに送り出そうとしている。船なら水、飛行機なら空気を後ろに送り出している。その反作用によって前進している。『何かを押すと、自分も動いてしまう』という作用・反作用の法則が使われている。だがやまとはそうではない。やまとは自由落下で移動する。重力制御は、これまでの移動手段を根底からひっくり返す方法だ。


 その恩恵をもっとも大きく受けるのは宇宙船だ。真空の宇宙には後ろに押し出す物がない。ロケットエンジンで飛行する宇宙船は、後ろに押し出す物を自分で運ばなければならない。これを推進剤と呼ぶ。推進剤を積むと宇宙船の質量が増える。その分、更に推進剤が必要になる。その結果、宇宙船の質量のほとんどを推進剤が占める。例えば、高効率の二段燃焼サイクルエンジンを採用したJAXAのH-ⅡAロケットは、四・四トンの人工静止衛星を打ち上げることができたが、その重量は四四五トンもあった。これでも同等の打ち上げ能力を持つロケットの中では最軽量だった。ロケットは最も燃費が悪い輸送手段なのだ。だが重力制御なら推進剤はいらない。必要なのはエネルギーだけだ。燃料だけ積めばよい。


 とはいえ、初期の重力制御エンジンは大きかった。初めて実用化されたやまとの重力制御エンジンも大きく、やまとも大型の宇宙船にならざるを得なかった。地球への離着陸に必要なエネルギーを生み出す核融合炉も大型化の原因になった。それでもやまとの建造費は、他の大型宇宙船よりはるかに安上がりだった。地球に離着陸できない宇宙船は、宇宙で組み立てるしかない。必要な部品は地球や月で製作して、組み立て現場に運ばなければならなかった。部品を宇宙に運ぶコストは馬鹿にならなかった。その理由は先に述べた通りだ。これに比べれば、当時でも重力制御エンジンは安上がりだった。


 普段はタンカーなどの大型船舶を建造する呉の造船所で、やまとは建造された。そして進宙式を迎えた。

日本宇宙自衛隊とは?


 宇宙空間における国の防衛、情報収集、治安維持、救難活動を主任務とする、防衛省の特別の機関。英語名は"Japan Space Self-Defence Force"、略称はJSSDFだが、JS2DFと呼ばれることもある。もちろん架空の組織。


 アメリカは空軍の組織を拡大して、宇宙も担当する航空宇宙軍を編成した。こちらも架空の組織。

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