先刻まで喧嘩してた筈なのに、いつの間にか、仲直りを飛び越して通じあってた。
屋根の上に座り込んで、星空を見上げる。
震える膝を両腕で抱え込んで、かじかむ手で擦って温め様とする。
鼻が痛むのは寒さの所為。胸が痛むのだって、きっと凍った空気が悪いんだ。
涙が零れない様に息を殺し、ぐいっと口を結んで月を睨む。
斬り付けた様な細く走る傷痕みたいだ。
クウン、と不意に耳元で悲しげにボスが鳴くから、月がみるみる滲んだ。
歯を食い縛ったのに、ボスが鼻面を押し付けて来て顔を舐めるから……泣いてるわけじゃない、コレはボスの唾液だ!
全く、どうやって屋根なんか登ったんだよ、いつだってひとの後ろくっついて回りやがって、ひとのかおベッタベタにしやがって、全く……本当にいい迷惑だ!
ボスの毛並みにかおを埋めて唾液を拭う。
「ゴメン…ゴメン……!」
要らないなんて言ってゴメンナサイ、叩いたりなんてしてゴメンナサイ……!
拭った端からボスが舐めるから、泣いてるのか何なのか判らなくなった。
途中から無性に可笑しくなって、笑い転げてボスとゴロゴロ転がってたら、親に見付かってカミナリを落とされた。
オレとボスはかおを見合わせて肩を竦め合い、そうして笑い合う。