桜下七武神~序章~
満月には少し足りない月明かりが照らす中、全身裸になり水浴びをする姿が薄ら明るい闇に照らされる。
不安を拭い去るように何度も何度も水を浴び続けているようだ。
春を迎えようとしている季節だがま朝夜は肌を刺激するような寒さも残る時期。
「冷たいいいいいい寒いいいいいいいいい、ねぇ牙、これ100回浴びるまで終わっちゃダメなんだよね」
「うむ、本来なら三回ぐらいでいいんだけどな、紫の弛んだ心体じゃ百回でも二百回でもいいぜ」
「そうか・・・・・・私の弛んだ心体じゃ一杯あびなきゃね・・・・・・え?三回でもよかったの?」
「うむ、というか何の疑いも持たずにこのクソ寒いなかそんだけ水浴びるとかやっぱお前阿呆だろう」
「牙ぁぁぁぁぁぁ叩き折ってくれる!そこへ直れ!」
「うむ、それは困るスマン」
「もう、いっつもからかうんだから、牙の馬鹿」
「明日へ向けての準備と思えばよかろうワシも未熟なれど乳も尻も久々に見れたし眼福じゃ」
「折る!絶対折る!」
腰まで届く長い髪が水にぬれ月明かりで照らされた様は妖艶に見えたが近づくとツルペタだった。
「ハックシュン、誰かに噂された気がする」
「親父殿じゃないのか、痛く心配されておったし」
「父上はいつまでも子供扱いしすぎなの、私だって明日で十六、立派な大人の女なんだから」
「ツルペタだけどな」
「うーーーーーー」
「お嬢、風邪をひきますぞ大方、牙にそそのかされ延々と水を浴びたのでしょう、もうお休みなされ」
「じい、明日の事なんだけど・・・・・・」
「お嬢でも不安ですかな、姉上の緑様はなんの気負いもなくこなしましたぞ」
「私も不安なんかないもん!大丈夫だもん!もう寝るね!」
「はいはい、お休みなさい風邪を召されぬようにちゃんと身体を拭くのですぞ」
「子ども扱いしないでってば!お休み!牙は罰として一晩そこで頭冷やしなさい!」
紫は走って自室にもどり数分後には寝息が聞こえてきた。
「やれ、牙やお嬢をどう見る」
「ワシに聞くか、おぬし等が一番分かっておろう」
「ん・・・・・・む、才覚で言えば歴代の中でも一番であろう、しかしああも子供染みていては」
「紫はまっすぐに育っておるよ、ワシが保障する明日の事も心配するな紫ならやりおおせるだろう」
「頼むぞ牙、旦那様も心配しておる」
「うむ、任せておけい、所でワシを・・・・・・」
「お嬢の言いつけじゃワシがどうこうすることもできぬよ」
「クソ、我慢するしかないか」
時は幕末世は維新へと向かう中、混沌を極める日本に暗躍する影あり、絵巻物の物語かと思われた魑魅魍魎が跋扈する世でもあった、魑魅魍魎を捻じ伏せ世に安息をもたらせる決して表舞台には出ぬ存在それが
「桜下七武神」(おうかしちぶしん)桜を筆頭とする7人の武人集団である。
これはそんな7人を取り巻く物語である。
昔から温めてた作品です、途中で原稿など紛失し新たな書き直しで見苦しい点も多々あるとおもいますが生暖かい目で見守ってくださると幸いです。