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片平家の事情

こんにちは!!7話目の投稿です♪

「はぁ~、やっと終わった。」



現在、終業時間から約1時間30分経過中。



そう、なんと今日は珍しくも残業してしまったのだ。

いやいや、本当は今日だっていつもどおり1日の終わりを告げるあのメロディーとともにこの場を去るはずだったんだけどね


まぁ、タイミング悪くラスト5分で受けてしまった電話の対応で、気がつけばこんな時間に…

薄情な上司の姿も既になく、えぇ、一人きりでなんとか乗り切りましたとも!!



クレーム時の対応は、とにかく相手の話をしっかり聞くこと。そして出来るだけ相手に共感の意を示し、心底申し訳ないという思いをこめてひたすら謝罪する



あくまでも私個人のマニュアルであって病院自体でそう対応しろって言われてるわけじゃないから、もしかしたら間違った対応なのかもしれないけど、基本はやっぱり「相手の対場に立って対応する」だと思う




そうこうしているうちに相手の方もだいぶ落ち着きを取り戻し、最後は比較的円満に電話を切ることが出来た―――うん、多少時間はかかったものの、今回は成功例かな




ひたすら受話器を握り締めてやり取りした1時間

受話器を持っていた左肩はガチガチに固まってしまっている

踏んだり蹴ったりではあったけど、自分自身へのクレーム対応ではなかったのが救いかなぁ(笑)




「今日は子どもの誕生日なんだ」と右手を上げてすまん、と定時でお帰りになられた薄情な上司(まぁ、家庭内での地位確立の為にもやむを得ない状況であったことは十分理解できるけどね?)への報告書も無事作成し終わったことだし、私もそろそろ帰ろうっと




右手で左肩を押さえながらくるくると数回肩回しをしてなんとかコリを解す

ちょっと前までもう少し長時間であっても耐えられていたと思うんだけどなぁ……



少しだけ物悲しい気分に陥りながら戸締り消灯を確認して部屋を後にした








※※※※※※※



いつもより遅い駅のホームは、まさに帰宅ラッシュのど真ん中!

見渡す限りのヒト、ひと、人!!!

  

 

―――やっぱり今日は厄日だ…



ただでさえもクレーム対応で疲れているのに、これじゃとても座れそうにない

それどころか、ぎゅうぎゅうに押し詰められた、まさに人間缶詰としか言いようのない電車に乗らなくちゃならない……しかも!!揺られることさえもままならない程にパーソナルスペース完全無視状態の空間で周りを囲むのは背広姿のオジサマ方ときたら、もう、ね。




「はぁ~」




思わずため息をこぼしてしまったけど、数分後の自分を思えば仕方ないことだと思う。



だが、しかし!!

神は私を見捨てはしなかった





「亜季さん?」





少しでも現実から目を背けようと、遠くをぼんやり眺めていると、不意に心地よい響きの声音で私を呼ぶ声が聞こえた 





「片平君!」




振り返るとそこには、一日も終わりに近いというのに相変わらず爽やかな様子で佇むイケメンが!!

思いがけない人の登場に、思わず名前を呼んだ私に、片平君は「よかった」と笑ってみせる




「後姿からなんとなくそうかな?とは思ったんだけど、やっぱり亜季さんだった。」


「片平君も今帰りなの?」


「そ、今日はちょっと図書館でレポートやっていて。亜季さんは残業?普段この時間の電車にはあまり乗ってないよね?」




そのまま横に歩いてきた片平君と肩を並べる。




「そうなの、終了5分前のクレーム電話を見事引き当てちゃってね。その対応してたらこんな時間に。」


「それは、ご愁傷様でした。」




げんなりした私の様子が面白かったのか、ちょっと笑いながらも片平君はこちらを労ってくれる。

う~ん、まさに掃き溜めに鶴!!周りのオジサマ方には大変申し訳ないけどね(笑)




「片平君のほうこそ、レポートは無事に終わったの?」


「それが、今日中に終わるかなと思ったんだけど、ちょっと甘かった。明日まで持ち越しだね。」


「そっか。大学生も大変だね。レポートとかちょっと懐かしい(笑)」




う~ん、大学時代の思い出といえば色々あるけど。

レポートに追われた日々もその一つかな。


通常の試験よりは時間も与えられるし、そういう点でプレッシャーは感じずに済んだんだけど

ひどい時は3つも4つも期日が重なっちゃって、それこそ図書館の閉館ぎりぎりまでひたすら参考文献とにらめっこ、なんて事態もまぁ珍しくなかったなぁ




「あれ、でもまだ図書館の閉館時間にはちょっと早いよね?」




過去の自分を少し懐かしく思い出したところで、ふと気になって尋ねる




「そう言えば言ってなかった?俺のうちお袋死んでるから、家事全般俺が担当してるって。」


「えぇっ!!?ご、ごめん!!なんか、ちょっと無神経なこと言っちゃったね…」


「なんで?そんなことないよ。俺が勝手に話しただけだし。」


「でも、そっかぁ。だから夕飯の買出しもしてるんだね。大学生にして家の手伝いなんてえらいなぁって思ってたけど……お手伝いどころじゃなかったんだね。」




まじまじと片平君を見つめながら、しみじみと呟く

お母さん思いのホント出来た息子さんだと思っていたけど、なるほどそういう事情があったのか




「お袋が亡くなったの、俺が高校の時で、弟はまだ中学なりたてで遊びたい盛り。親父は当然仕事で忙しくてさ。一番時間に余裕があったのが俺だったから、お袋みたいに完璧になんて無理だけど、せめてやれることはやろうってね。ま、親父の家事能力が壊滅的過ぎて、このままじゃ圭太も俺も飢え死にする!!っていうのが一番理由としては大きかったんだけど(笑)」




高校生といえば、まさに青い春の真っ只中

勉強に部活に恋に、そして一生物になるだろう友人達との出会い

普通にしてたって時間なんて全然足りないって感じるくらい、その時にしか出来ない、様々なイベントが目白押しのはずで



友達がわいわいと遊んでる時に、洗濯して掃除して、買い物してご飯作って……



慣れない家事への挑戦は、大変なことばかりだっただろうに、何事もなかったように笑って話す片平君は今まで以上に大きく頼もしく感じられて



ほんとに

見た目だけのかっこよさなんてそんな表面的なものじゃなくて

人としての在り方や物事に対する姿勢、そういった内面の部分がこんなにもイケメンな人っているんだな、って尊敬すると同時に嬉しくなる



皆様ご存知の通り、残念ながら私自身は全くもって内面美女タイプではないので、少しは片平君を見習わないとなぁって素直にそう思う(でも、人間出来ることと出来ないことって絶対あると思うんだけどね?)





「そっか。うん、なんかほんとに、片平君はカッコイイよね。残業の疲れなんてどっかいっちゃったよ。」






今日は厄日だ、ってさっきまでは思ってたけど

―――全然違った



自分でもびっくりするくらい心が温かくて軽い

コントロール不能に陥っている私の表情筋は、いっそ気味が悪くなるほどニヤニヤしていることだろう




片平君はちょっと驚いたように目を瞠った後、いつもの柔らかい表情で笑ってくれた





「亜季さんは、ほんと感情表現ストレートだよね。面と向かってカッコイイ、なんて亜季さんくらいだよ?俺に言うの(笑)」




イヤイヤイヤ。

たぶん同年代の子達は逆に言えまいよ。

そこはほら、やっぱり羞恥心とかあるだろうし、面と向って言ったらある意味「告白」っぽくなっちゃうし




まぁ、こちとら歳の差5歳。

だからこそ、臆面もなく言えるんだけどね




「ふっふっふっ。青い春だね、片平君。」




勝手に彼の周囲の状況を妄想してにまにまと告げると

「何それ?」と今度は苦笑されました




ふふ~ん、そのうち君にも分かるよ。

得てしてそういうのを当事者が知るのは最後の最後って相場が決まっているんだから





それにしても。




うん、こんなに素敵な子なんだから

願わくば、彼の隣に並ぶ子もまた、表情筋が崩壊するくらいの素敵な女の子でありますように






ご無沙汰してます(汗)季節の変わり目に絶対風邪引く人っていますよね?はい、私です(笑)鼻&喉→熱→咳の経過を辿り、現在掠れ声で仕事してます(笑)皆様もお体には十分お気をつけて♪(←お前が言うなよ!!って感じですね)

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