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「決意」

お久し振りです。今回の話をアップする上で少し過去の話を一部変えました(汗)主人公のお酒飲めない設定を無くしています。ブレてしまってすみません!!


片平君への気持ちを自覚し、最近妙にもやもやした日常を送ってる私に「今夜飲みに行かい?」と天使様からの久しぶりのお誘い



どうしようもないことをグチグチ考えているのは私の趣味じゃないし



現状、特に何か変化があったわけでもない

独り悶々と悩んでいることが馬鹿らしく思えて



もうとにかく飲んで飲んで呑まれてしまえ!!

と1も2もなく即効で「行こう!!」ってメールを返した私は、彼女が「天使の皮を被った白衣の魔王」だという事実をすっかり忘れていた……






「じゃ、とりあえず乾杯~」




憂有紀の掛け声に、黄金の液体にふわっふわの白い泡が入ったジョッキをカチンとあわせてぐぐっと飲む




ぷっはぁ~

最近なんだかんだでアルコールを摂取していかった体にじんわりと染み渡るこの感じ

うん、最高だね!!




仕事のこと、上司への愚痴、共通の友人の話題と取りとめもなく流れていく会話が気を遣わなきゃいけない相手じゃないだけにとにかく楽して、心も落ち着いて




もやもやなんて吹き飛ばせ!!との思いも重なって気がつけばいつも以上にピッチを上げて飲んで食べておしゃべりに興じていた



―――そう、相手はあの「憂有紀(魔王)」だというのに警戒も心構えもしていなかった私にその時は突然やってきた




「で?」




少し話題が途切れた瞬間に憂有紀が何かを尋ねてくる




「え?何?」




「とぼけるんじゃないわよ。最近の心ここにあらず状態の理由を聞いてるのよ。」




今まさに食べようと口に入れた枝豆がいきなりのド・ストレートな質問でおもわず口から飛び出しそうになる



あ、あぶな~コントのようになるとこだったよ





「いや、…別にこれといって何もないけど?」





私ってそんなに分かりやすい!!?

とか内心あせりながらも、なんとか誤魔化せないかととぼけてみせる



「ふぅ~ん。ね、亜季。まさかとは思うけど、その程度であたしを誤魔化せるなんて、思ってないわよね?」



綺麗なパッチリ二重の瞳をすぅっと細めて嗤って見せる



や、やばい!!

なんか獲物認定されてる!!?





「うぅぅ、……はい、思ってない、です。」





素面の時でさえ憂有紀の追求をかわすのは至難の業なのに、いつも以上に飲んで思考能力低下している今ではなおさら勝ち目なんてない




早々に白旗を揚げた私に「よくできました」とばかりに満足そうにうなづく





「で?」





振り出しに戻ったセリフにがっくり肩を落としながらはぁっと一つため息をついて、気合を入れなおすためにグラスに残っていたお酒を一気に煽る




「うん、なんていうか、色々とままならななぁって。気持ちを自覚したと同時に叶うはずもない現実に叩きのめされたというか……」





「ふうん。……それって、例の年下の爽やかイケメン君の話?」





「そう、……っって!!!何で分かったの!!!?」





相手の名前一つ、話の方向性ひとつ明確にはしていないこの言葉だけでどうしてそこに直結するの!!?



恐るべし魔王!!



ずばり言い当てられて、繕うことも出来ない裸の心がそのまま浮き彫りにされてしまった





「そりゃあ、分かりますとも。気付いてないかもしれないけど、亜季はすっごく分かりやすいのよ。まぁ、にぶちんの亜季にしてはわりと気付くの早かったんじゃないの?褒めてあげる」





くすっと笑う憂有紀から目が離せない




「え?気付くの早かったって……どういうこと?ここ最近だよ?そんな感情持ったの」




「自覚したのは、でしょ?あんたが初めて彼の話をしていた時に既に兆候はあったんだら。ま、年齢差もあることだし、なんと言っても年下の「学生」。この条件下では気がつかないままってこともあったかもしれないけど。…自分で思っている以上に亜季は人見知りする性質なのよ、それがたった数回会っただけの人にあんなに心を許してた。それってつまりはそういうことでしょ?」





驚きすぎて声も出ない



え?そうなの?

私ってば最初から片平君のことそういう対象として見てたの?




っていうか、この口ぶりからすると前回初めて片平君のことを話したときから憂有紀はほぼ確信してたってことだよね?




……

………



憂有紀の恋愛感知能力、半端ない!!!

本人よりも先に気がつくとか、そんなこと可能なの!!?




なんか、色んなことに驚きすぎて逆に冷静になっちゃったよ





「そう、なのかなぁ。……うん、でも、そうなのかもしれない。ほんと、かっこいいんだよね、片平君は。見た目は勿論なんだけど、それ以上に考え方とか行動とかがね。一緒にいると年齢なんて関係なく尊敬しちゃう部分も沢山あって。なにより、どきどきするけど安心もするっていか、さ」





この際だ!!

もうどうせバレてるわけだし、いっそ色々吐き出しちゃおう!!




このままもやもやしたままなんてイヤ過ぎるし。





「でもさ、憂有紀が言ったように、6歳年下の学生、なんだよね。この間たまたま外で片平君を見かけたとき、同年代の女の子とそれはもう楽しそうに笑ってたの。それ見た時さ、「あぁ、お似合いだなぁ」って、すごく納得してしまったというか。やっぱり片平君の隣に立つのはああいう感じの女の子がいいなぁって。」




お酒をちびりちびりと飲みながら、ぽつぽつと話す私に横槍を入れるでもなく憂有紀は静に聞き役に徹してくれている




「片平君は、もうここ何年も干からび続けてた私にとって突如目の前に出現したオアシスなんだよね。自分が乾いてることから意図的に目をそらして忘れて。…だってそうしないと、ただ生きてるだけなんていう自分が無価値に思えて辛る。

……そんな風に生きてきた私にとって片平君の存在はまさに天からの恵。でも、だからこそ、ずっとそこに居続けるのはあまりにもずうずうしいというか。……自分の駄目さ加減は身に染みて知ってるからね。」





「ふふ、あんたの例えは相変わらず聞いてるこっちが恥ずかしくなるけど、でもまぁ、言いたいことは分かったわよ。」




じっと話を聞いていた憂有紀が苦笑しながらグラスを手に取る。





「でもね、結局は全部あんたの思い込みだけなのよね。別に彼にそう言われた訳でもなく、あんたが勝手に分かった振りして自己完結してるだけ。話を聞いてると、相手はどうやら割りと何でも自分ひとりで背負っちゃうタイプみたいだし。今までずっと1人で頑張ってきて、もしかしたら初めて対等に、でも甘えられる存在に出会えたって、思ってるかもしれないじゃない。こういうのはね、頭の中でいくら考えたって無駄なの。だって相手と自分が全く同じ思考回路を持ってるわけじゃないんだから。行動あるのみ、なのよ。しっかり自分の気持ちを相手に伝えて、それでも駄目だったなら仕方ないけど、何も動いてないうちからあきらめるなんてただの愚か者よ。ましてや、恥ずかしげもなく「オアシス」なんて言い切れちゃう相手ならなおさら。」




ぐうの音も出ない。



憂有紀の言葉は、彼女自身の経験が裏打ちしてるだけあって、軽く受け流せないだけの重みを伴ってこちらの胸にストンと落ちてくる。




…分かってる

ホントは年下の子に入れあげた挙句の自滅を恐れてかっこつけて表面だけ取り繕ってるだけだって



こんなに想える相手には、きっともう二度と出会えない



そう確信できるほどには

本気で片平君が好きなんだって




叶うなら

ずっとずっと片平君の隣を歩いていたい


あの優しい眼差しが見つめる先に居るのはいつだって自分でありたい



気付けばそんな浅ましいまでの想いを抱いてしまってる




あのとき、

二人が並んでるのを見て「お似合いだって」想ったのはホント



でもそれ以上に傷ついて、悲しくて、苦しくて…



隣に居るのが自分じゃない現実に

ただひたすら打ちのめされた



だから、これ以上は望まないようにしなきゃって、自分に言い聞かせてきたけど…




…あがいてみても、いいのかな

みっともなくても、なりふり構わずに




嘘偽りのない自分の気持ちをしっかり伝えて


そんな私を片平君は戸惑ったり、驚いたりはしても絶対に嗤いはしないのだから



憂有紀の言うとおり

挑戦もしないうちから独りよがりに自己憐憫に浸るなんてナンセンス



やってみなくちゃ結果なんて誰にも分からない

人の気持ちならなおさら




「そう、そうだよね。後悔だけはしたくないし。…うん、憂有紀の言うとおり、頑張ってみる。気持ちだけでも伝えたい。」




あきらめるのはそれからでも遅くない

悲劇のヒロインなんて柄じゃないし

自分の気持ちに嘘だけはつきたくない



真剣に想ってる相手だからこそ、なおのこと





「よくできました」





ふふっと微笑う憂有紀に

照れたような笑みを返す



……憂有紀、いつもいつも迷惑かけてほんとごめん

でもこんな私の背をいつだって押してくれることに、心から感謝してる

  


だから「ごめん」よりはたくさんの「ありがとう」を伝えたい

  


一大決心に力尽きたのか、はたまた方向性が決まった安堵感からか、



私の意識はここでブラックアウトした




    


少しでも楽しんでいただけたら幸いです♪

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