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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
黒騎士誕生編
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第6話 都と任命式

第6話 都と任命式






・帝国・都城壁門前、夕方


 説明が終わり私達は1時間かけて帝国の城壁門の前までたどり着いた。


「ここが都の」


 私は高い城壁を見上げながら呟いた。


 石造りの城壁は、左右を見ても何処まで続いているのか解らないほどの長さで、高さも首が痛くなるほど本当に高い。


 おまけに魔法で補強しているらしく、これなら上級モンスターの襲撃にあっても、内部に侵入される事は無いと思う。


 まぁ、上級魔族とかドラゴンなら一瞬で壊されるだろうけど。


 その城壁の唯一の出入り口である城門前で、私はアーメットを被ったフル装備状態で皇帝達と居た。


 その光景を門番2人と旅人やらギルドの人間やら遠出していただろうと思われる都の住人らしき人がポカーンとした顔でこっちを見ていた。


 正確に言えばハヤテとハヤテの手綱を引いていた私を見て。


 当たり前の反応だが。


「フフフ。注目の的ですねチエ」


 后が笑いながらそう言った。


 おっと、忘れるところだった。


「すみません。出来れば私の名前を伏せてもらえませんか?」


 私は男の低い声で言う。


「ああ、そうでしたね。では、何とお呼びすればいいですか?」


 后が首をかしげながら聞く。


「黒騎士で構いません。この鎧や刀を私に渡した方もそう言っていました」


 私がこの世界に来る時、確かに天照様が言っていた。


 それに、実は気に入っていたりもする。


 物語で出てくる勇者や仲間達とは、全く別の存在であると自分で実感も出来るから。


 勇介バカとはパーティー組みたくない…。


「分かった。では、黒騎士よ参ろうか。出来ればハヤテだったかの?に乗って都に入ってはくれまいか?伝説の黒い一角獣ユニコーンに乗った最高の騎士の姿を皆に見せるがよい」


「はい」


 私は皇帝に言われて、ハヤテに跨る。


 私自信は目立ちたくないんだけど、コンラットに先刻言われてしまった。


『貴方は帝国はおろか、このエルドアの中でも最高の騎士なのです! ですから、都に入る時は一角獣ユニコーンに跨ってください!』


 と、物凄い勢いで言われてしまったのだ。


 でも、私自身ハヤテに乗っている方がいいと思っていた。


 コンラット達が思っている事とは違うが、私がハヤテに乗って、皇族と一緒に居る所を大勢の人間に見られる事に意味があると思う。


 理由は二つ。


 一つは、都には国の人間以外の旅人・商人に見せる事。


 旅人や商人はよく都に集まっている。


 現在私達の周りにも居る。


 彼等に見られる、つまり黒い一角獣ユニコーンに認められた騎士が帝国側に付いたと認識させ、噂を広めるためだ。


 そうすることによって、他国が下手に手を出さないようにするためだ。


 何故そう言う事をする必要があるのかと言うと、敵は魔物や魔族だけではなく人間も含まれているからだ。


 このエルドアの大陸はひし形状の形をしており、その周りに幾つかの島がある。


 その島を含めた大陸に、帝国・聖国・王国の三国が存在し、そして聖域と呼ばれるエルフ族の森がある。


 その中でも帝国の領土は広い国土を有しており、土地の事で他国が強引に奪おうとする事が過去何度もある。


 その事は知識の中の歴史にあった。


 もう一つは、この国で起きている悪事の元凶共に見せる事。


 さっきの旅人・商人に見せる事同様、私の存在を認識させ、この国で悪事をさせられないようにすることが目的だ。


 ようするに、脅しをかける事が目的だ。


 実際、今日ハヤテで都を移動するだけでは効果は薄いかもしれないが、とりあえず私の存在はすぐに大陸全土に広がる。


 以上を踏まえて私はハヤテに乗り、皇族一家は城門前で手配した馬車に乗り、コンラットともう一人の緑の髪の騎士も馬に騎馬した。


 そして城壁門が開く。



――――ギィィィィ




――――ワァァァァア!




 門が開くと同時に歓声の声が響いた。


 どうやら皇族を迎えるためにパレードの準備がされていたようだ。


「凄いな…」


 あまりの熱狂に思わずつぶやく。


 私達は城への道を進む。


 都に入って一番初めに見た物は、大きな城。


 周りには、物語やゲームで見たような建物だった。


 それらを見て改めて思った。


 此処は科学が発達していない、剣や魔法の世界だと。


 私が辺りを見渡しながら移動している、そんな中


「お、おい」


「アレって伝説の黒い一角獣ユニコーン?」


「本物かよ?」


「てことはあの黒い騎士は」


 と言う声が聞こえてきた。


「ホッホッホッ! やはり皆驚いておるの」


 馬車に乗った皇帝が笑いながら言う。


「黒騎士よ、さっそくじゃが其方の任命式を今夜執り行う。其方のマントもすぐに仕立てよう」


「マント?」


 私は皇帝の言った言葉に聞き返したが、皇帝夫妻は笑うだけでそれ以上何も言わなかった。


 でも任命式って、一般兵にする必要無いような?


 少なくとも私はそう思う。


 しかも今夜って。





・城門前


 しばらくして、城門前に到着した私達。


 城門前には都に配属されている使用人、兵士達、貴族達が勢ぞろいしていた。


 おいおい。


 兵士さん達は都の警護に回ってないと駄目でしょう…。


 私が呆れながら思っていると、一人の貴族が皇族の前まで来て、膝をつく。


「陛下! ご帰還心より安心しました」


 その貴族は深緑色の貴族服を着、緑色の髪に蒼い瞳、身長は174、5クアメイト位で、年は50代ぐらいの中年の男だった。


 あれ?


 この人、緑髪の騎士さんに似ているような…。


「レイズ、今戻った」


 皇帝が男の名前を言い、答えた。


「儂が聖国に行っている間、何か変わった事は?」


「いえ、これと言って何も。ところで陛下、そこの騎士はいったい?」


 男は私の存在を気にしていたようで、皇帝に聞いた。


 それは、他の貴族や、兵士、一般の人間達も思っていた事のようだ。


「紹介が遅れたな、黒騎士此方へ」


「ハッ!」


 私は出来るだけ騎士らしく返事をし、皇帝の乗っている馬車の近くまでハヤテで移動。


「この者は黒騎士。分け合って名を明かす事は出来ぬが、我が帝国の騎士になったものだ」




―――ザワザワ!




 皇帝がそう言うと辺りがざわめきだした。


「へ、陛下! 何を仰っているのですか! このような得体の知れぬやからを!?」


 男は皇帝の言葉に声を上げた。


 まぁ、普通の反応だわね。


 しかし、その言葉を聞いた皇帝は


「レイズ! 口を慎め!この者は儂等の命を救ってくれた者なのだ!」


「!? ………命を?」


 ん?


 何だ今の反応?


 私は男の反応に疑問を抱いた。


 でも、何かが引っ掛かっただけで特に何て事無い反応だったため、皇帝の言葉に耳を傾ける事にした。


「その通り。儂等が都へ向かっている時にオーガ5体に襲撃されたのだ」


 それを聞いた周りは更にざわつく。


「3体は何とかコンラット達が倒したが、本来オーガは20人でやっと相手を出来る相手だ。そして儂等を庇いながらでの戦闘。当然体力の限界が来る。窮地に陥ったその時、黒騎士が一角獣ユニコーンに乗って儂等を助けたのだ。その者に対して何を言うか!」


 皇帝は怒ったようで、男を睨みながら言う。


 さすが皇帝とでも言うべきか。


 風格がある。


「し、しかし、どこの誰とも解らなければ……」


「お前は宰相のくせにまだ分らぬか! 黒い一角獣ユニコーンに選らばれた騎士以上に、この者の素性を証明する物があるか! このエルドア最高の騎士だとな!!」


 この人宰相だったんだ。


 確かに皇帝の言う通りである。


 一角獣ユニコーンに選ばれた事、すなわちその人物が、どのような人間かの証明そのものだから。


 それが伝説の黒い一角獣ユニコーンならなおさらだ。


「グッ……」


 宰相は何も言えなくなる。


「今夜この者の任命式を執り行う! 各自急いで用意せよ!」


 皇帝は使用人たちに命令し、すぐに準備に向かわせた。


 使用人達は一瞬驚いた顔をしたが、何故か私を見て納得したらしく急いで準備に向かった。


 何で驚いたんだろう?


「黒騎士よ、失礼したな。すぐにお前が生活する部屋を用意させよう。準備もある事だ、ゆっくり休むが良い」


 皇帝は先刻と違い穏やかな笑みを浮かべた。


 后が、同行していた侍女の一人に指示をし、私の元へやってきた。


「黒騎士様クレア后様の命で、貴女の世話係をさせていただく、アリス・エイデンと申します」


 その侍女は、茶色い長い髪を御下げにし、赤みがかった茶色い瞳、顔は整っていて落ち着いた雰囲気、服装は他の侍女さん達同様黒い長袖ロングスカートのワンピースに白いフリルエプロン、黒い靴を履いている。


 身長は160クアメイト位で、年齢は14歳位の少女だ。


 私より年下なのに偉いな。


 あれ?


 さっきこの子『エイデン』って……。


「アリス頼むぞ」


「ハイ兄上」


 コンラットが言うと、アリスがそう返した。


 ああ!


 確かにこの二人、髪と瞳の色が同じだ!


 成程、兄妹だったのね。


「その前に、黒騎士様。馬小屋へご案内いたします。一角獣ユニコーンを普通の馬小屋に案内するのはどうかとは思うのですが、そこしか休ませる事が出来ないので」


 コンラットは申し訳なさそうに言った。


「いや、そんな気にしなくていいよ。ねぇハヤテ?」


「ブルッ!」


 ハヤテは頷く。


 ハヤテの了承を得た私達は、馬小屋に向かった。








・時は流れて城内の一室


 ハヤテを馬小屋に入れて、アリスに城内のとある一室へ案内された。


 因みに、ハヤテの馬具は、ハヤテ自身がしまった。


「此方にございます」


「……あの、本当に此処使っても?」


 私が案内された部屋は、テレビで見た高級ホテル顔負けの部屋だった。


 壁際に設置されたベッドはダブルベッド、家具は全てアンティークなデザインで、仕事で使うような大きなデスクと座り心地がよさそうな椅子。


 窓は大きく、ベランダには丸い鉄でてきた机と2つの椅子。


 お風呂やトイレも完備されている。


 間違い無い、此処は偉い人に与えられる仕事部屋だ。


「陛下達のご命令で、黒騎士様は本日よりこの部屋をお使いください」


 アリスは笑顔でそう言った。


 皇帝、あんた等一般兵になんつう部屋与えてるの?


「この部屋は完全防音の魔法が掛かっております。鍵はこちらです」


 そう言ってアリスは蒼いひし型の石を渡してきた。


 アーメットに埋め込まれているものと、色は違うが魔硝石だ。


 分かりやすく説明すると、魔硝石は蒼が一般的に出回っており、赤い魔硝石は強い魔力が込められており、数が少ない。


「髪を一本いただけますか?」


 私は辺りの気配を探って、誰も居ない事を確認しアーメットを外す。


 そして、前髪を一本抜き彼女に渡して、すぐにアーメットを装着する。


 誰も居ないと言っても、用心に越したことは無い。


 後で結界も張ろ。


 そう考えながらアリスの行動を見る。


 アリスは、私の髪の毛を蒼い石のあてると、髪が石に吸収された。


「これで、この石は貴女にしか使えません。これをドアに埋め込まれている魔硝石に翳すことで魔力が発動し、鍵の管理ができます」


 おお、便利!


 つまり先刻のは、私を石に認識させたのか。


 これなら個人情報は大丈夫そうだ。


 それにしても、今日はついているのか、いないのか分からない日だな。


 勇介に殺されるわ。


 天照様に生き返らせてもらえるわ。


 皇帝に気に入られて、住む所を確保出来るわ。


 まぁ、お金使わなくて済んだけど。


「それでは黒騎士様、任命式の準備が出来しだいお呼びに参ります」


「ああ、ありがとうアリスさん」


「私の事はアリスで構いません。私は14で、黒騎士様より年下ですし」


 予想道理14歳だった。


 姫より1つ上なだけなのに、確りしているな。


「分かった、アリス」


 私が言うと、アリスはにっこり笑った後部屋から出て行った。


 さて、早速結界張らしてもらいましょうか。


 この部屋に案内されて思いついた、自作の魔法結界。


「シャドウシールド!」


 魔力を込めて自分が思い浮かんだ結界の名を言う。


 するとこの部屋の壁や床、天井を黒い靄で覆う。


 しかしそれは一瞬ですぐに消えてしまった。


 この結界は中からは普通なのだが、外からは真っ黒にしか見えない。


 黒いサングラスを思い浮かべたら解りやすいかもしれない。


 こうすることで内部を見られないようにする。


 特に魔導師の使い魔。


 魔導師は、使い魔を使って状況を探る事があるから。


 そして、この結界は私が許可した人間以外入る事は出来ない。


 今のところアリスや皇族だ。


 それ以外は、鍵が開いていても黒い靄に阻まれ進入不可。


 ここまですれば鎧脱いでも大丈夫だろう。


 私は朔夜を残して鎧をブレスレットにする。


 よし! せっかくだからお風呂入ろ!


 因みにお風呂の沸かし方は、お湯出す魔法陣で一瞬だ。


 温度調整も可能!


 お風呂好きの私としては嬉しい限りです!






「…く……さ…」


 ん?


 誰か呼んでる?


「黒騎士様」


「!?」


 目を覚ますとアリスが居た。


「よく眠れましたか?」


「うん。おはようアリス」


 確かお風呂入って、ベッドに横になってる内に寝ちゃったんだ。


 因みに、下着はクローゼットにすでに用意されていた。


 何故かサイズピッタリのが。


 おそらくここに来る前に、皇帝一家に同行していた侍女さんの誰かが用意してくれたのだろう。


 侍女さん恐るべし!


 まぁ、此処に来るまでに荷物の事聞かれて、何処かに落としたと言ったから用意してくれたんだろうけど。


 その時も盛大に笑われたよ。


 服は今まで着ていた黒い服を着用。


 明日にでも服買いに行こうかな?


「黒騎士様、任命式の用意が整いました」


「アリス、今何時?」


「7時です」


 確か此処に着いたのが5時ごろだったから、2時間で用意したんですか?


 帝国の使用人何者?


「早いですね…」


「使用人ですから」


 にっこりと言うアリス。


 いや、説明になって無いし。


「任命式は、玉座の間で行います」


 定番だな。


「それでは鎧を…鎧はどこですか?」


「ああ、今装着するよ」


 そう言って私は鎧を装着するように念じる。


 すると私の身体を黒い靄が覆い全身に装着された。


「まぁ!?」


 アリスは驚いて私を見ている。


 確かに鎧を一瞬で装着出来るアイテム何て、エルドアでも無いしね。


「凄いマジックアイテムですね! どこで手に入れたんですか?」


「刀と一緒。これも私専用でね」


 感心しながら鎧を見るアリスに、男の低い声で言った。


 ん、鎧装着時はなるべく男の人の口調を意識した方がいいかな?


 もともと、砕けた話し方するけど私。


「へぇ~、凄い物を作る方も居るのですね」


 作ったの神様です。


「それじゃ、案内してくれるかな?」


「あ、はい! こちらです」


 私はアリスに案内してもらいながら、玉座の間へと向かった。







・玉座の間・扉前


「黒騎士様、陛下の前まで行ったら、跪いて、陛下が言った後にこたえてください」


「分かった」


 私は玉座の間の扉の前で説明を受けている。


「その後、私がマントを羽織らせます。羽織ったら立ち上がり、後ろを振り返ってください」


 説明を聞いてやっぱり思った。


 マントって何?


 私が覚えている限りマントしていたのはコンラットだけ。


 他は付けていなかった。


「それでは開けます」


 そんな事を思っている私を余所に、アリスは玉座の間の扉を開けた。


 開けた瞬間楽器の音が響き渡る。


 真中には真っ赤なロングカーペットが玉座まで続いていて、皇帝、妃、皇太子、姫が座っている。


 近くにコンラットを含めた色違いのマントを着けた人が数名。


 左右にはロングカーペットを挟んで貴族や兵士が立つ。


 なんか嫌な視線を感じるな……。


 一番多いのは嫉妬かな?


 そんな感じの視線だった。


 半分まで移動して、皇帝が立ち上がり、段を下りて杖を右手で持って立つ。


 皇帝の前まで来て跪く。


 皇帝は持っている杖の飾を、私の左肩に当てる。


「汝黒騎士。汝は帝国の剣となり国を守護する者となる事を誓うか?」


「誓います」


「汝を帝国の騎士と認め、騎士隊長及び皇族専属騎士の任を命ずる」


 ………。


 は!?


「陛下!? 何を言っておられるのですか!?」


 宰相が前に出て言った。


 いや、私も何が何だか分からないんですけど!?


 周りも、ざわついている。


 ごく一部、私の正体を知っている人達以外は。


「言った通りだ。この者には公爵の地位を与え、帝国の剣となってもらう」


「なぜこの者にそんな地位を与えるのです!? それに、すでに騎士隊長はコンラットがおります! それなのに」


「閣下、恐れながら申し上げます」


 抗議している宰相に、コンラットが前に出て言った。


 私は思わずコンラットの方へ顔を向ける。


 偉い人だろうとは思ってたけど、コンラットって騎士隊長だったの!


「この件は、自分が陛下と話し合った事によるものです。自分は黒騎士様に付いて行きたいと陛下に申し上げた結果であります。この事は前騎士副隊長カイル・スラースも同意しております」


「!?」


 コンラットの言葉に、宰相は緑髪の騎士さんを見た。


 あの人カイルって言うんだ。


 て事は、コンラットとカイルさんの地位が下がるってこと!?


「陛下!?」


 私は皇帝に抗議しようと声を上げた。


 幾らなんでもそれはいかんだろう!


 頑張って出世して追い抜くんだったら良いが、行き成り現れた新参者がそんな役職に就く事は他の人にも失礼だ。


 だが


「黒騎士、これは決定事項だ。誰が何と言おうとも、覆せぬ」


 拒否を否定されてしまった。


「さぁ、黒騎士様にマントを」


「はい」


 コンラットの言葉に返事をして、アリスが私にマントを掛ける。


 真っ赤なマントを。


 その色を見て、またも驚かされた。


 真っ赤なマントは、皇族又は皇族と最も近しい者しか、羽織る事を許されていない。


 これを羽織ると言う事すなわち、皇族以外誰もこの者に逆らってはいけない、と言う証でもある。


「さぁ、黒騎士様。お立ちになり、振り返って」


 私は、アリスに言われて立ち上がり、振り返る。


 うわ~……。


 すっごい睨まれてる。


「以上をもって、黒騎士の騎士隊長兼皇族専属騎士、任命式を終了とする!黒騎士よ部屋に食事を持って行かせる。今日、明日はゆっくり休むがよい」


 そう言って無理やり任命式は終了した。






・私室


「は~…」


 アリスに用意してもらった食事を食べながらため息を吐く。


 任命式の後、アリスに連れられて部屋に戻った私は、鎧をブレスレットにして、部屋に用意されていたテーブルと椅子に腰かけ、しばらくすると食事が運ばれてきた。


 私が動こうとすると、アリスに止められたため全部用意させてしまった。


 何だろう、私ってほんの数時間前までただの女子高生だったのに。


 この世界に来て、行き成りとんでもない役職に付いてしまった。


 さっきまで、頑張って出世しようと意気込んでたけど、これ以上出世する必要が無い地位になってしまった。


 おまけに貴族の公爵……。


 この国の貴族制度は、大公・公爵・伯爵・子爵・男爵・下級貴族だ。


 侯爵は無い。


 地位の無い貴族は地球では、騎士と称されているが、この世界では下級貴族とされている。


 つまり私の今の地位は、皇族の次と言う事だ。


 役職だけでも大変なのに貴族の地位まで高くされたら、周りからは当然嫌な視線しか来ない。


 此処まで帰るまでに、どれだけの視線が突き刺さったか……。


「はぁぁぁあ……」


 二回目のため息は一回目より深い。


「黒騎士様、ため息をついていては幸福が逃げて行きますよ?」


 いや、アンタ等のせいだから。


 私は恨めしい気持ちを抱えながら、出されたビーフシチューとサラダ、軟らかいパンを食べた。


 凄く美味しかったです。


 数分後、食べ終わった食器を片付けているアリスに聞いてみた。


「……アリス、もしかして私以外のこっち側の人って、皆知ってたの? 私に与えられた役職や地位の事」


 こっち側とは私の正体を知っている人達の事だ。


「はい。私は兄上から準備の時に聞きました」


 アリスは食器をトレーに仕舞終わり、私の方へ歩み寄る。


「隊長の件ならお気になさらないでください。そもそも推薦したのは兄上とカイル様なのですから」


「そう言えば、コンラットが言ってたな。でも、周りの反応がね……」


 私はこれからの問題が増えただけの様な気がする。


 こっち側の人達はともかく、私の意見ちゃんと聞いてくれるかな……。


「大丈夫ですよ」


 言われて、アリスの方を振り向くと、笑顔を向けられていた。


「彼等はまだ貴女の凄さを分かっていないんです。その内、正しい判断だったと皆が理解してくれます」


「……その自信はどこから?」


 自信満々に言うアリスに聞く。


「間近で貴女の強さ、推理力を拝見しましたから」


 いや、そんなに凄いものでも無いでしょ?


 普通でしょこれぐらい。


「それに、自分の事を過大評価しないところを含めて、兄は貴女の下に付きたいと望んだのです」


 そう言われると照れるな。


「はぁ~、仕方ないか。取り合えず今後の事はこれからゆっくり考えるよ」


「はい、焦る必要なんかありません! 貴女には私達が付いています!」


 その言葉が一番嬉しかった。


 自分が一人じゃないと教えられたから。


「アリス、明日街に出たいんだけど、よかったら案内してくれない? 今の街の状況把握しておきたいし」


 コンラットが、治安が悪いって言ってたからね。


 状況を自分の目で見て情報を集めながら、序に私服や寝巻を買おっと。


「分かりました。それでは朝食後、街をご案内いたします(そういう風に、すぐに都の状況を知ろうとする辺りが、兄だけでなく私達からも信頼を寄せられるんですよ、黒騎士様)」


 よし、今夜は確り寝て、明日は情報収集頑張るぞ!






To be continued

あとがき


第6話如何でしたでしょうか?


今回一気に任命式まで行きました。


普通じゃあり得ないスピード出世をした智慧。


これからも、出来るだけ早く更新しますので応援よろしくお願いします!

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