表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
皇太子巡礼編
39/43

第37話 二年の月日と皇太子

第37話 二年の月日と皇太子





 ある日、幼馴染の高杉勇介に巻き込まれ、日本で知らない者は居ないと言ってもいい天照大神様に助けられ、色々得点付きでこの世界、エルドアにやってきた私、斎藤智慧。


 偶然伝説の黒い一角獣ユニコーンハヤテと出会い、偶然皇族一家御一行を助け、成り行きで騎士隊長になり、当時問題になっていた事件をたまたま解決し、その半年後の三国武道大会で優勝、アクシデントも無事解決、その数日後に帝国軍団長に就任と異例な出世をしてしまった。


 その後も色々あったけど、この世界に来て約二年、十九歳になった私は


「団長、こちらの案件はどのように?」


「ああ、これは…」


「団長! 最近問題になっている盗賊団について話が!!」


「分かった、少し待っていてくれ!」


 激務に追われ、忙しい日々を送っています。


 騎士隊長も兼任しているのもあるけど、団長に就任した日から仕事の量が大幅に増えた。


 流石に毎回全兵士の訓練を見るわけにはいかなくなり、他の隊は隊長達に、騎士隊はカイルに任せるようになった。


 私の意見を取り入れるのは変わらないけど。


 まぁ、訓練の事は問題ない。


 問題は軍が動くときは、まず私を通すことになったこと。


 今までは団長が不在のため、各隊の隊長が話し合い、それを陛下に報告し許可をもらう流れだったけど、その報告と許可を陛下ではなく私がする事になった。


 その為書類整理の仕事が増えた。


 かといって私が現場に出ないと言う事もなく、もちろん赴く事もある。


 むしろ私じゃないと解決しない案件がある。


 何故かここ最近、ドラゴンによる被害がごく少数だが出てきた。


 被害と言っても、人里に居りてきたとかではなく、村や町を繋ぐ道で商人やギルドの傭兵が襲われると言うものだ。


 本当に少数案件だが、死傷者も出ている。


 そして厄介なことに、現段階でドラゴンの相手を出来るのが、人間では私しかいない。


 しかもあいつら飛ぶし早いし火吹くし、中には毒もしくは溶解液を吐くのまでいるときた。


 具体的にはもっといろいろな攻撃をしてくるドラゴンもいるけど、今のところ相手にしているのは、さっき上げた攻撃をするドラゴンだ。


 もうね、私一人で相手しないと、こっちに被害出るんだよ。


 幸いハヤテが居るから、長期戦になることはないけど、流石にドラゴン相手だと私でも無傷で済まないこともある。


 何回か空中で攻撃されて骨折したり、血を吐いたりした。


 この鎧、地に足がついていれば地面に衝撃を逃がしてくれるけど、空中じゃ衝撃が貫通するんだよね。


 貫通する程のダメージは、ドラゴン並みの強さが無いと通さないから、普段は平気なんだけど。


 直ぐにハヤテが治療してくれるけど、怪我するたび城に帰ってもハヤテが離れてくれなくなる。


 心配させているのは私だし、可愛いから強く言えないのも理由だけど。


 その時は馬小屋で一晩過ごすことになる。


 まぁ凄く楽しいんだけどね。


 なんせ、馬小屋は騎士隊が管理している為、当然他の騎士もいる。


 彼らが『今日団長がハヤテに捕まってるから、差し入れ持っていこう!』『どうせなら偶には自分たちも、あいぼうと過ごすのも悪くない』と言う理由で集まって、男女関係なくお泊り会になるんだ。


 今じゃ、馬小屋の倉庫に、個人の寝袋が置かれている。


 当然コンラットやカイルも参加するよ。


 騎士隊仲が良いな。


 こういう事があるから、ドラゴン退治は別に苦ではない。


 むしろ体を動かす方が楽だ。


 デスクワークは座って、下を向いている時間が多いから、肩と首が凝る。


 昔は部屋にこもるのが好きだったけど、今じゃ逆だよ。


 生活環境が変わると、人間変わるものなのかな?





「う~、終わった!」


 最後の書類にサインをして、背伸びをしながら言う、


 窓の外を見れば日はすっかり沈み、真っ暗だ。


 時計を見ると二十時をとうに過ぎている。


 時間を意識したとたん、今まで気付かなかった空腹感が襲ってきた。


 この時間だと食堂閉まっているな、自分で何か適当に作るか。


 鎧を解除して、黒い私服になりながら、キッチンに向かう。


 団長になってから、コンラットは私の手の回らない仕事を回している為、書類整理は一人ですることになった。


 だからなのか、一人で集中していると時間を忘れてしまう。


 アリスも十九時には上がりだから、もういない。


 そういう時は自分で食事の準備をする。


 帰る前に、アリスが部屋の明かりをつけてくれているから、魔硝石越しで部屋を見る必要が無いのが大変助かる。


 あぁ~、自分の体質が恨めしい。


 消すのは問題ないのに…。


 そう思いゲンナリした表情で、キッチンにつく。


「あれ?」


 キッチンに入って最初に目に入ったのは、台の上ある布がかけられた何かと、コンロの上にある小さな鍋。


 布の上にはカードがあり、それを手に取る。




――――『チエ様へ

     お仕事でお食事を忘れていると思って、作っておきました。

     温めて食べてください。

                           アリスより』




 読み終えて布を取ると、バスケットに入ったパンが数個。


 鍋の蓋を開けると、野菜とベーコンたっぷりのポトフが一人分。


 ちょうど何時も私が食べる量だ。


「ハハッ」


 アリスには頭が下がるよ。


 冷めてしまったポトフを温めなおしながら、笑いが込み上げた。


 あの子はいい嫁になるぞ、親友よ。


 早く恋人関係になるかもしくは結婚しろ、とこういう時毎回思う。


 一応出会ってからの二年で、それなりに距離は縮まってるけど、恋人までに至っていない。


 あと一歩なんだけどなぁ、切っ掛けがあるか、もしくは告白するためのシュチュエーションをセッティングすればいいんだけど。


 生憎切っ掛けはそう簡単にできないし、告白に至っては何かといつも間が悪い。


 今まで告白しようとして、何回邪魔が入った事か。


 それでもめげずに、この恋を諦めないクロードの一途さに、あいつは凄いと思う。


 ここまで本気だって分かっているから、私もコンラットも応援しているんだよね。


 温め終わったポトフをお皿に移し、パンと一緒にテーブルへ運ぶ。


 一度キッチンに戻り、水もテーブルに置いて椅子に座る。


「『いただきます』」


 いつものように手を合わせて言う日本語。


 食事の時以外で、もう使う事が無いな。


 ふとそんなことを思いながら、スプーンでポトフを口に運ぶ。


 空腹だったのもあり、とても美味しい。


 これ食べたら、書類を片付けてお風呂入って今日は寝よ。


 本当は食べた後、二時間は起きておく方が良いんだけど、もうクタクタだし明日も仕事だから、眠れる時に眠らないと。





 しっかり眠り、爽快な気持ちで目が覚めた今日、現在私は皇太子殿下の部屋へと向かっている。


 何故私が殿下の部屋に向かっているか、それは今朝陛下の元へ報告書を届けに行ったときの事だ。


 何やら最近様子がおかしいらしのだが、陛下と后様が聞いてもはぐらかされてしまい、理由が全く分からないらしい。


 元々ため込んでしまう性格の殿下。


 本人は自分の事で回りに迷惑をかけたくないと思っての事だけど、何となくだが親しい人間には分かる。


 特に陛下と后様と姫にはバレバレで、流石家族だと感心する。


 だから何でもないと言われても、心配は消えない。


 そこで私が相談相手になってくれと頼まれて、殿下の元へ向かっている。


 もしかしたら家族には、言いにくい事かもしれないからと。


 ここ最近様子がおかしかったのは、私も気になっていたのでいい機会だ。


 今日は学校が休みで、今は自室で勉強中と聞き、勉強の邪魔をするのは忍びないけど、今しか時間が無いから仕方がない。


 この時間もコンラットや他の隊長達に協力してもらって作ったんだけど。


 殿下の部屋の前までたどり着く。


 『コンコン』とノックをする。


「誰だ?」


 中から殿下の声が聞こえてきた。


「殿下、黒騎士です。今お時間よろしいでしょうか?」


「くっ黒騎士!?」


 来たのが私だと分かった途端何故か慌てだし、ドタバタと殿下らしくない音を立てて扉に近づいているのが分かる。


 『ガチャ』と音を立てて扉が開かれた。


「どうした黒騎士?」


 扉から出てきた殿下はいつも通りだった。


 何であんなに慌てた音を立てていたんだろう。


「殿下にお聞きしたい事がありまして、今大丈夫でしょうか? 何やら慌てていたような?」


「いっいや! 何でもないんだ! ハハッ(言えない、最近まともに会えていなかったから、来てくれて嬉しいなんて恥ずかしくて言えない)」


「はぁ、そうですか」


 なんか笑って誤魔化されたけど、どうしたんだろう。


「そんな事より、私に用があるのだろ? 大丈夫だ、中へ入れ」


 なんかモヤっとするけど、中へ入る許可をいただいたから中へ入る。


 さっきまで勉強していた為、アンティークなデスクの上には参考書が広げられている。


 私は殿下に促されソファーに座り、殿下が侍女さんにお茶の用意を頼み、紅茶がローテーブルの上に置かれ侍女さんが退出したのを見届けた後、私とは反対側のソファーに腰をかける。


「それで、話とは?」


 持ってきてもらった紅茶に口を付けた後、私に用を問われる。


「ええ、回りくどい言い方をしても意味が無いので、単刀直入にお伺いいたします。最近殿下、悩み事があるのでは?」


 私はド直球で本題に入る。


「本当に直球だな…。悩み事なんて」


 苦笑しながら誤魔化そうとする殿下。


 しかし私は殿下の目が泳いでいるのを見逃さない。


 誤魔化すとき目を泳がすのは彼の癖。


 二年も交流があるんだ、彼の癖ぐらい把握している。


「嘘ですね」


「ぐっ」


 速攻で否定したら殿下が苦い顔になる。


「ここ最近殿下の様子がおかしかったので、絶対何かあります。二年も交流しているんですよ? それぐらいわかりますから。言っときますけど、私より長い付き合いのコンラットも心配していましたよ。陛下や后様、姫も気にしています。殿下の様子がおかしいときは大抵何か悩み事があるときですからね、ため込まないでいっそ吐き出した方が解決しますよ?」


 悩みがあるなんてお見通しだと一気に言う。


 数秒下を向いて黙っていた殿下は、『はぁ~』と息を吐き、顔を上げる。


「何でいつもお前には反論できないんだろうな?」


「仕事柄とでも言っておきましょう」


 色々な人間と接触することが多い今の職。


 その為相手を言いくるめる為の話術や、相手のちょっとした動作ですら見逃す事のないように観察力は嫌でも鍛えられる。


 そんな私から逃れられると思うなよ。


「さぁ、愚痴だろうが、悩みだろうが、何でもお伺いいたしますよ?」


 声のトーンを明るくして、話すように促す。


 もちろん声は男のまま、いつ何処で聞かれるか分からないからね。


 そんな私に観念した殿下が口を開く。


「その…、実は最近学校で…」


 フムフム、学校でか。


 ご友人と何かあったのか? それとも勉学の方で何か気になる事でも?


「えっと、女生徒に……絡まれる事が増えて」


 ………え?


 殿下が両手で頭を押さえながら言った言葉に、理解ができない。


「あの、絡まれるとは?」


 とりあえず具体的な情報が欲しいと思い、続きを促す。


「例えば、私が席についていると、必ず何処かのご令嬢達に囲まれる。それからトイレに行こうと廊下に出たら、またご令嬢達が待ち構えている。友人と食堂へ向かうと、押し寄せるようにご令嬢達に迫られて。静かな場所を求めて図書館へ行っても、一応静かなのだが結局ご令嬢に囲まれて」


「あ、はい。もう結構です、把握しました」


 どんどん青くなりながら、最近の学校での出来事を語る殿下を止める。


 私は全てを把握し、頭痛がしだした頭を右手で抑える。


 今回問題の一番のポイントは只の女生徒ではなく、ご令嬢と言う事。


 殿下の周りに、どこぞの貴族の娘達が集まると言う事は、答えは一つしかない。


「つまり、そのご令嬢達は皇太子妃の座を狙っているのですね」


「理解が早くて助かる」


 ガックリと落ち込みながら肯定する殿下。


 成程、そういう事か。


 今年で殿下は二年生。


 高校に進学して、殿下より二つ上の学年が卒業している。


 殿下本人は大学に進学する為、まだまだ学生生活は終わらない。


 しかしご令嬢達は違い、この年で学生生活が終了する。


 もちろんすべてのご令嬢が大学に進学しない訳ではないが、多くのご令嬢は何処かに嫁ぐか、もしくは婚活に勤しむ。


 使用人学校に通う者は、家のコネで上級貴族の屋敷に奉公に行くが、殿下が通っている学校はかなり学力レベルの高い高校だ。


 男は官職になる為、女は己を磨く為に。


 実際多くの優秀な人材が卒業をしている。


 言ってみれば一つのブランドだ。


 そんな学校に通っていると言う事は、当然己に自信がある人間達。


 皇太子妃の素質があると、自負する女生徒も多い筈だ。


 これまでは何時でも機会があると思っていたからか、動きが少なかったみたいだけど、二つ上の生徒が最後に慌てて殿下にアプローチをかけて、見事に失敗したのを目撃した女生徒達はさぞ慌てただろう。


 このまま学生最後の年になっても何もなかったら? 


 大学にいってしまったら?


 そうなったら接触する機会が、めっきり減ってしまう。


 考えて恐れてしまったのだろう。


 それで焦って、殿下の周りに群がり始めたと言う訳だ。


 何とか見染みそめられようと。


 まったく、節度を弁えろご令嬢方。


 殿下は確かに、容姿も学力も武術も内面も優れていて、皇太子殿下としての立場を抜いても一人の男性として素晴らしい方だがな、相手に迷惑をかけるようでは感心しないぞ。


 それでは皇太子妃として相応しいとは、とても思えない。


 焦らず、冷静な判断ができれば気づくと思うが、今の状態では難しい。


「黒騎士、私は如何すればいい?」


 普段見せない情けない顔になってしまっている殿下。


 如何すればいいか、か。


 一番いいのは『暫く殿下が学校へ行かない』だろうか。


 問題の種である殿下が、ご令嬢達の前から一時的に姿を消せば、彼女達も冷静に考える時間が作れるし、己の失態に気づいて反省もできるだろう。


 だがそう簡単な話ではない。


 学校へ行かないと言う事で殿下の評価が落ちるかもしれないからだ。


 学問に関しては心配ない。


 専属の家庭教師殿が学校より先へ進めている為、例え一月ひとつき学校へ行かなくても、ついていけない何て事はない。


 何も理由がなく学校を休むのは、流石に問題だ。


 あるか? 殿下の評価が落ちず、合理的に長期休学ができる方法………あ!


「殿下、一つだけ方法が」


「何?」






・皇帝陛下の執務室


「成程、ここ最近様子がおかしいと思えば、そんな事があったのか」


 現在私は、殿下と共に陛下へ報告に来ている。


 そばに控えている宰相閣下は、話を聞いてから眉を寄せ、やれやれとため息をついている。


 そうなりますよね。


「なので、しばらく休学をした方がよろしいかと」


「そうだなぁ」


「しかし、長期の休学となると難しいのでは?」


 どうしたものかと考え込むお二方。


 そんなお二人に提案をする。


「それなのですが、『巡礼の旅』に出るのはいかがでしょう」


「ああ! その手があるか!!」


 私の言葉に、『ポン』と手を鳴らす陛下。


 閣下も、それならばと顎に手を当てて考え込む。


 『巡礼の旅』とは、皇太子が皇帝に即位する前に他国を訪問し、その国の大聖堂で洗礼を受けに行くものだ。


 それと他国の城を訪問し、王へ挨拶に行く。


 つまり挨拶回りも兼ねている。


 だが只訪問するのではなく、少人数で旅をする。


 野宿、魔物や野盗との戦闘、安宿に宿泊と、贅沢は一切してはならない。


 実はこれが一番の目的だ。


 一度、何一つ苦労のない生活から離れ苦労を知り、外の世界を見て回る。


 皇帝とは国や人を治め、守る者。


 そんな人物が苦労を知らないとは以ての外、と言う考えから来ているそうだ。


 本当凄いな、この国の皇族。


 そう言うことで、これなら休学しても問題ない。


 元々殿下もそろそろと考えていたところだったし、後は護衛に誰をつけるかを決めれば何時でも旅立てる。


「この案でよろしければ、早急に隊長達と会議を行いますが、いかがでしょうか?」


 この案でいいか尋ねる。


 陛下はにっこりと笑い


「問題ないだろう。よくぞ良い解決案を提示してくれた」


 と答える。


 それを聞いて殿下が、安心したのか顔色が少し良くなった。


「すまない黒騎士、助かった」


 笑顔を浮かべ、私に言う殿下。


「いえ、お役に立てて何よりです殿下」


 兜の下で、私も笑う。


 良かった、何時もの明るい殿下だ。


 さて、殿下の為にもう一働きするかな。


 先ずは、コンラットと隊長達に集まってもらって、


「では、旅路での護衛を頼むぞ、黒騎士」


 ………へ?




――――「はい?」




 突然の陛下の発言に、私と殿下と閣下が同時に声を上げる。


 ちょっと、何言っているんだこの人。


「陛下、流石に黒騎士が抜けるのは問題かと」


 顔を引きつらせながら、陛下に問いかける閣下。


 そりゃそうだ、現在私は帝国軍団長。


 普段から仕事に追われて、今だってコンラットと隊長達の協力を経て、時間を作っている。


 この後も私がチェックしないといけない書類が山ほどあるし、多分終わるのは昨日よりも遅い時間になるのは確定。


 そして何より


「閣下の言う通りです。特にドラゴンが出たときに、どうなさるおつもりですか?」


 少数だが、ここ最近一番の問題だ。


 いつどこで出るか分からない為、今城を離れる訳にはいかない。


 それは陛下も分かっている筈だ。


 なのに。


「まぁまて、まずは儂の話を聞け」


 陛下が手を上げ、私達を落ち着かせる。


「まずは、クリスは次期皇帝として、護衛には最も力のある人間についてもらいたい」


 それはごもっとも。


 苦労を知るための旅だとしても、やはり次期皇帝の立場の方だ、全力でお守りし確実に旅を終わらせる人間を同行させるのは当然だ。


「次に、この旅は長期の任務になる。その為クリスが共にいて安心できる人物でなければならない」


 確かに、交流のない人間より、良く知っていて気軽に会話ができる人間がいないと、ストレスがたまる。


 旅の道中、気まずい雰囲気になるのは避けたい。


「それから、一人は爵位持ちが必要だ」


 まぁ、各国の王に謁見する際、念の為護衛と言う名の付き人が必要だ。


 陛下の言う通り爵位持ちが。


「そして、黒騎士」


「は、はい」


 陛下の目つきが鋭く私を捉える。


 なんだ、普段と違う陛下に一歩引いてしまう。


「其方、最近何時休んだ?」


 この一言を聞いて、心臓が『ドキッ!』と跳ねる。


「どういう事ですか父上?」


 聞き捨てならなかったのか、殿下が食いついた。


「ここ最近気になってのう、黒騎士をコンラットに監視、報告を頼んでいたのだ」


 全然気づかなかった!


 まさか、名前は出さなかったけどクロードも協力していたんじゃ。


「報告によると、休暇の日でも急遽任務に赴き、書類整理で二一時を過ぎるのも頻繁にあった。もはや働きすぎだ!」


 ギョッとした顔で私を見てきた殿下と閣下。


 思わず顔をそらしてしまう。


「この同行は、其方を仕事から離すのも兼ねている。其方の力に頼り切っている、今の帝国の改善にもなる良い機会だ。今のこの状態が続いては、黒騎士が不休になりかねん。今回の任務は其方の為でもあり、帝国の未来の為でもある。確かにドラゴンは脅威だが、接触を控えれば被害を抑えられよう。出現報告のある場所を、暫く通行禁止にするなど色々方法は考えられる。戻ってきた時、直ぐ討伐に向かってもらう事になるが、城に居るよりは良い休息になるだろう」


 そこまで言った陛下に、私は何も反論できない。


「黒騎士、私からも頼む。父上の話を聞いて、私もお前が心配になった」


 心配で仕方がないという表情で頼んでくる殿下。


 すいません、そんな顔させたくはなかったんです。


 物凄い罪悪感が。


「流石に働きすぎだ。陛下の言う通りにしろ、黒騎士」


 ついに閣下までもが私を心配して、同行を進めてきた。


 もう、私に断ると言う選択肢はなかった。


「分かりました…、同行させていただきます」


 私が降参すると、御三方が安心した表情になった。


 かくして、『巡礼の旅』への同行が決まったのであった。


 はぁ、他のメンバーどうしよう…。






To be continued


第37話お送りしました。

今回から新章突入です。

相変わらず漢字変換のミスや、打ち間違いがあると思いますが、後ほど修正いたします。

次回もよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ