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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
三国武道大会編
30/43

第28話 各隊と予選・最終日3

第28話 各隊と予選・最終日3





・とある一般観客席


「いや~、とんでもねぇ威力だったな」


 数分前に行われたブランドンとエイミーの試合を振り返りながら、腕を組んだおっちゃんが言った。


 ま、俺も激しく同意だけど。


 プロテクトがかかっているから死ぬ事はないし、何より相手がブランドンだったから良かったもの。


 正直アレを生身で受けたくないぜ。


 今グラウンドの有様はめちゃくちゃだ。


 係の兵士が修復作業を行っている。


 たく、プロテクトありでこの威力は恐れ入った。


「でもま、いよいよ後二試合か。旦那なら優勝すると思うが、他の隊長達の戦いを見て、なんだか心配になってきたな」


 そう言いながら、ぼさぼさ頭を掻くおっちゃん。


 確かに、今までの試合とはレベルが違う。


 歴代の中でも最高レベルと言われている、化け物集団だからな。


 まぁ、隊長が来るまでは俺が一番化け物だったけど。


「心配ねぇよ。俺、隊長相手に全力出しても、勝てる気しねぇから」


「それはアレか? 旦那以外だったら、隊長格より自分のが強いと言う自慢か?」


 俺の言葉に、呆れ顔で応えるおっちゃん。


 アリスは俺達の会話を聞いてクスクス笑っている。


「もぉ、兄上ったら」


 笑いながら言ったアリスの言葉に、おっちゃんの眉が下がった。


「『兄上』なぁ、昔は『お兄ちゃん』って言ってたのによぉ」


「あぁ、懐かしいな」


 おっちゃんの言葉に、昔のアリスを思い出す。


 昔は今と違って本当に女の子だった。


 あの時は武術に興味が無くて、お袋に料理教えてだの、菓子の作り方教えてだの、女の子らしい事以外しようとしなかったなぁ。


 そんで、外では『お兄ちゃん、お兄ちゃん!』ってヒヨコの様に付いてきて、ホント可愛かった。


 この頃俺、『妹は誰にもやらん』とか思ってたな。


 それが今じゃ、すっかり城の使用人に毒され、何時の間に取得した武術で魔物を蹴散らし、悪徳貴族に黒い笑みを浮かべ、俺達が気づかない所で他の使用人と一緒に裏で何かをやる。


 正直この何かは知りたくない。


 なぜなら、俺は見てしまったからだ。


 以前とある悪徳貴族が御用になった時、使用人達が集団で口元をつり上げ、目を光らせて居た所を。


 勿論その中にはアリスも居たわけで。


 思えばあの件、悪徳貴族が自首しに来たんだよな…。


 絶対なんかやっただろ、使用人!!


 まぁそんな訳で、俺は妹の将来がかなり心配だ。


 クロードを応援しているのも、実はこれが一番の理由だったりする。


 いや本当マジで、今のアリスに色んな意味で釣り合うのはクロード以外考えられん。


 色んな意味で!!


「兄上? 何をお考えになって居るんですか?」




――――ビクッ!





 ギギギと音が鳴るんじゃないかと思う動きで、アリスの方に顔を向ける。


 アリスは何時ものように笑顔だった。


 ただし真っ黒い。


「い、いや。早く試合始まらないかなぁと」


「そうですか」


 顔を引きつりながら誤魔化すと、アリスは笑顔から黒いのを消した。


 たぶん誤魔化されて居ないんだろうが、『これ以上失礼な事を考えるな』って事でしまったんだろうなぁ、の黒いの。


背中に嫌な汗かいた。


 ふとおっちゃんを見ると顔が引きつっていた。


 ついでに周りを見ると、話しが聞こえていたり、アリスの黒い笑いが見えた奴らも似たような反応だ。


 やば、本当に早く試合始まってくんねぇかな。








**********








・グラウンド


 ついに私とセレスの試合だ。


 私達はグラウンドで互いの武器を持ち向き合っている。


 改めて彼女の木槍を見て警戒した。


 長い分間合いが広い上、彼女の筋力もあり一撃にかなりの威力がある。


 それだけでも驚異だと言うのに、槍兵特有のスピードも厄介だ。


 正直なところ、『朔夜』で挑みたかった。


 木刀じゃ鞘が使えないから、アレが使えないんだよな。


 まぁ、この世界に来て練習は欠かさずやって完璧に使えるが、実戦で使ったことは一度も無いけど。


 でも、だからこそ今の状況で試したかった。


 彼女の槍捌きとどちらが早いかを。


 それは筋肉兄さん相手にも同じなんだけど。


「始めて宜しいでしょうか?」


 審判が私達に聞く。


 それに頷き、武器を構えるもを見た審判。


「それでは、始め!!」


 審判の合図で、思いっきり踏み込んで間合いを詰めてきたセレス。


 突きを放ってきたが、それを木刀で受け流す。


 お返しにと斬りかかったが、巧みに槍を扱い刃の部分とは逆の柄の方で防がれる。


 槍の用途は突く事だが、何もそれだけが敵を討つ方法ではない。


 さっき斬りかかった時のように、柄の部分で受ける事も出来る。


 他にもその長い柄を利用し、相手をなぎ払う、振り上げる、振り下ろす、など色々ある。


 剣や打撃武器も同じ事が出来るが、長さがあるためその分範囲が広い。


 逆に言えば懐に入る事が出来れば此方のものなのだけれど。


 さてどうするべきか。


 セレスの払いをバク宙で避け、そのまま2回連続バク転をし、距離を取り木刀を構える。


 セレスも槍を構え此方を見据えている。


 よく見ると、少し息が上がっている様子から、初めから飛ばしてきていると見える。


 まぁ同然か、私と違ってセレスと筋肉兄さんは、他の二人と戦ってかなり疲れて居たようだし。


 それでも今の試合に負けるつもりは無いらしく、出来れば次の試合に体力を残しておきたいと考え、開始早々勝負に来たのは、何度が打ち合って分かった。


 しかし、何だろうなこの気持ち。


 今の疲労状態でそう来ると言うことは、それだけ私の事を認めてくれているって思って良いのだろうか?


 いや、彼女の場合そうなんだろうな。


 普段の彼女なら、疲れていようと大抵の相手なら軽くあしらえることを、私はこの半年で知っている。


 性格の事も嫌と言うほど理解した。


 彼女はどんな状態だろうと、強敵の前で嬉しそうに口角がつり上がる。


 ようは戦闘狂なのだ。


 そしてそれは相手が強ければ強いほど、はっきりした表情になる。


 要するに何が言いたいかというとだな、今目の前に居るセレスの表情はこれでもかと言うほど嬉しそうだと言うことだ。


 つまりこの表情で彼女は私を、全力で挑むに値する相手と認識していることが分かるわけだ。


 それが嬉しいと思ってしまう、今の自分が不思議でならない。


 半年前までただの何処にでも居る女子高生、しかも何処ぞの幼馴染み関連で、他人から疎まれていた私だ。


 そんな私が、どんな状況であれ、目の前の相手に認められ、全力で相手をしてもらえる事が嬉しくてしかたがない。


 ならば私も彼女に全力で答えたい。


 天照様から頂いた、もらい物の力だけど、この半年で培った私の技量を彼女に見せたい。


 力加減は流石に押さえなくてはならないが、技量でなら全力勝負が出来る。


 それが今の私に出来る、彼女への答え方だ。


 私は息を吐き、右足を引き右脇を締め切っ先を下に構える。


 『五行の構え』の一つ『脇構え』。


 その状態で睨み合う。


 セレスが何時動くかが勝負だ、集中して相手をよく見ろ。


 今の私なら自信を持って見極められるはずだ。


 そして、勝負の時。


 セレスが踏み込んで距離を詰めてくる。


 真っ直ぐに槍を構え私に向かって一直線に。


 ギリギリまで動くな、槍が私に届く手前まで。


 そして




――――ガン!!




――――ミシ




 私は後数クアメイトと言うところで、木刀を振り上げ、木槍を上へと押し上げだ。


 セレスは驚いた顔を浮かべバランスを崩し、そのすきに胴に向かって木刀を振り払う。


「ガハァッ!」


 セレスはそのまま後方へ飛び、横たわる。


 起きようとするが、腹を押さえ激しく咳き込み出来なかった。


「そこまで! 勝者黒騎士!!」


 これ以上は続行不可能と見なした審判によって、告げられるジャッジ。




――――ワァァァァァァァァア!




 それによって歓声が沸き上がる。


 私はセレスの元向かった。


「セレス、大丈夫か!?」


 なるべく押さえて、彼女なら大丈夫だと思う力加減で振るったんだけど、どうやら少し力み過ぎがようだ。


 とりあえず上体を起こさせ、背中をさする。


「だ…いじょ……ゲホッ! ゲホッ!」


 うん、全然大丈夫じゃないよね。


 咳が止まらないせいで、エイミーみたいなしゃべり方してるよ。


 セレスは咳をする度、腹部が痛むらしく涙目になっている。


 本当にごめんなさい!


 てか担架遅いな。


 何やってんだよだく。


 セレスの姿見てたら、罪悪感半端無いんですけど。


 早く医務室連れて行って、ベットに寝かせてやれ!


 そう思って門に目を向けると走ってくる、担架を持った二人の兵士。


 一応急いで居るようだが、私からしたら遅く見えてしかたがない。


 あーぁ! こうなったら!!


「よっと」


「ヘェッ!?」


 私はセレスを抱え全力疾走で医務室に向かって走った。


 人生二度目のお姫様だっこ(する方)。


 もの凄く驚いていた、審判と担架係二名とすれ違がったが無視。


 怪我人優先だ。


 周りの目は気にしない。






 医務室にたどり着くと、医務官と先に運ばれたアホ剣士が目を見開いた。


 次の試合が連続してある私は、気にせずセレスを医務官に預けてグラウンドに戻った。


 真っ赤になったセレスを不思議に思ったけど、よく考えればあんな大観衆の前でお姫様だっこは恥ずかしかったよな。


 あとで謝っとこ。






**********






・とある一般観客席




――――キャァァァァァア!




 昨期隊長が、セレスティアを運んでいったのを見た女達が、黄色い声援を上げる。


 ああ、確かに男の俺から見ても格好良かった。


 隊長女だけど、男として色々負けた気がする。


 だけどな…。


「はぁ~、旦那素敵…」


「私も、黒の旦那にされたい」


「もししてもらえたら」




――――……………。




――――キャァァァァァア!!




 妄想して盛り上がって、頬を染めるな女共!


 だぁぁぁあ! 弓兵副隊長の次は街娘共もかぁ!!


「まぁまぁ、兄上落ち着いて」


 そう言いながら、アリスは楽しそうに微笑みながら、俺をなだめる。


「それにしても、足早いな旦那」


 そんな中ただ一人、感心しながら言ったおっちゃん。


 周りの黄色い声援なんて全く気にしていない。


 まぁ本来気にする事でも無いんだが、隊長の事となると、こうモヤモヤと。


 何だこれ?


「お、帰ってきたぞ」


 言われてグラウンドを見ると、すでに入場していたブランドンと審判の方へ走ってくる隊長の姿。


 確かに早い。


 おっちゃんが驚くのも無理はないだろう。


 だが俺は違うところに驚いた。


 あんなに走れると言う事は、隊長は疲れていないと言うことか?


 今日一日で隊長格二人と戦って?


 では、隊長と他の隊長達とはどれだけ差がある?


 いや、俺と隊長にはどれだけ差があるんだ?


 そう思うと、何だか怖くなってきた。


 恐怖からくる恐れではなく、隊長に置いていかれるんじゃないかと。


 半年前まで『帝国最強』の称号を与えられていたこの俺が、誰かに置いていかれる事に恐いとは笑える。


 だけど今の俺にとって、隊長の下に居る事が今まで生きていた中で、もっとも誇らしい事になってしまった。


 『帝国最強』よりも甘美なものへと。


 だから、置いていかれたくない、ずっと側にいたい。


 あの人の直ぐ隣は俺のものだ。


 いつの間に、俺の心はそう言う醜い独占欲にも似た感情を、持ってしまったのか。


 俺は唇を噛み締め、両手を握りしめ、グラウンドを睨むように見つめた。







 そんな俺に一人だけ気がついたアリスが、深々とため息をついて呆れて居た。


 その事を数年後、懐かしむように話すアリスから聞いて、どれだけ自分の心に鈍感だったのかと、頭を抱えるのは、また別の話。







**********







・グラウンド


 セレスを医務室に連れて行き、急いで戻ってきたグラウンドにはすでに筋肉兄さんが入場していた。


「すまない、遅れてしまった」


「いや、気にするな。事情が事情だ」


 そう言って苦笑する筋肉兄さん。


 こう言うサッパリした性格は好感持てるんだよな。


「すみません、早速始めても宜しいでしょうか?」


 審判が申し訳なさそうに言った。


「ああ、此方こそすまない。私は準備出来ている」


「俺も問題ない」


 そう言って私達はそれぞれ構える。


 アレ?


「筋肉兄さん、そのガントレット」


「だから筋肉…ハァ~もぉ良い。 お前相手に素手は流石にまずいからな。訓練用だが無いよりましだ」


 今筋肉兄さんが付けているのは、普段訓練用で使用している無手武道家用のガントレットだ。


 訓練用であるため、至ってシンプルな銀色のそれには、同じく訓練用の木製の武器と同じ様に補強魔法が掛かっている。


 しかし、それを付けて私との試合に挑んでくると言うことは、セレス同様本気で相手をしてくれるという意味だ。


 普段アホ剣士との訓練でも素手で相手をしている彼が、それを付けてくれている事で分かる。


 なら私も真剣に挑もう。


 私は黙って構え直す。


 それを見て審判はうなずき


「始め!!」


 と、合図をした。


 合図と同時に筋肉兄さんに向かって木刀を振るう。


 それをガントレットをした腕で受け流し、私の顔面に向かって拳を振るう。


 頭を左にずらしてかわし、腕を木刀で上に振るい上げる。


 だがそこは無手武道家、バランスを崩す事無く、右足で木刀を振り上げた際横向きになっていた私の背中に蹴りを入れる。


 前のめりになったが、顎を引き身体を丸めて前方に一回転、柔道で言う『前方回転受身』をし直ぐに起き上がり、また攻撃に移る。


 思えばこの予選が始まって始めて、まともに攻撃を食らったかも。


 考えても見たら、素手武道って中々強敵じゃないか?


 威力が落ちて、リーチが短い分、危険度は高い。


 しかし、リーチが短いと言うことは、懐にさえ入り込めば、武器を使うより早く攻撃に移れる。


 それに威力に関しては鍛えたり、マジックアイテムで補うことが出来る。


 勿論、並の素手武道家なら問題ないが、目の前にいる極めた人間は厄介だ。


 どうしたものかと、考えながら攻撃、防御を繰り返す。


 と、その時




――――ミシ




 ん?


 さっきから変な音するな。


 音がするのは、私が使う木刀から。


 アレ?


 そう言えば、さっきの試合の最後にもしたような…。


 まずい。


 この手作り木刀、職人が作ったものじゃ無いから、他と比べて脆いのは分かっていた。


 補強魔法が掛かっているとは言え、今回の予選であれだけ打ち合えば、ボロボロになっても可笑しくない。


 いや、無手でも戦えない訳ではないでど、全力の技量で相手をすると決めた以上、刀で決着を付けたい。


 となるとだ、しかたがない。


 私は筋肉兄さんと距離を取り、声をかける。


「筋肉兄さん、ちょっと良いか?」


「あん? どうした、まさか降参か?」


 戯けて言う筋肉兄さんに、苦笑しながら言う。


「いや、そうじゃない。もうちょっとやり合いたい所なんだが、木刀こいつが限界らしい」


「どういう事だ?」


 木刀を軽く振りながら言うと、訝しげな表情で聞いてくる。


「さっきのセレスと試合した時、かなりダメージ受けてたらしい。それを差し引いても、まぁ良くもった方だ」


「そうか。弱ったな、お前なら無手でも戦えるだろうが。生憎と俺は、カタナをもったお前とやり合いたい」


 頭をガシガシかきながら、本当に困った表情で言う筋肉兄さん。


 お、嬉しい返事が返ってきた。


 筋肉兄さんも同じ事を思っていてくれたらしい。


「私もだ。だから提案」


「ん?」


「お互い次の一撃で決めると言うのはどうだ? 恐らくそれで木刀こいつは折れる。だけど」


「一撃で全力は出せるか?」


「ああ、どうだ? 中々面白いと思うんだが」


「ん~……」


 筋肉兄さんは腕を組み考える。


 そして直ぐにニヤリと笑い。


「面白い! 受けて立つ。その代わり本当の全力でこい!!」


「了解だ!」


 そう言ってお互いが構えを取る。


 筋肉兄さんは片足を引き、両拳を胸の前で構える形。


 私は同じく片足を引き、切っ先を上に向け、腕を八の字のようにして構える。


 『五行の構え』の一つ『八相の構え』。


 本当は『上段の構え』の方が、力が入りやすいだろう。


 でも『上段の構え』は相手に失礼だ。


 なんせ、格上の相手には御法度であると本で読んだ事がある。


 この世界では別に使っても良いのだろうけど。


 でもそれを知っている以上、剣を持ってたかだか半年の小娘が、武の道を極めてきた相手にしていい構えではない。


 だから、『上段の構え』から変形されたと言われる『八相の構え』を取る。


 やや威力は落ちるし、本来多数相手に用いる構え。


 一対一では不利かもしれない。


 しかし、今の木刀こいつで全力を出すには、この構えしかない。


 私は心を落ち着けるために深く息を吐く。


 この互いの一撃で全てが決まる。


 私達は構えたまま動きを止める。


 次に動くときは全力の一撃を出す時。


 その時を私達は待つのだった。






**********





・とある一般グラウンド


 隊長とブランドンが互いに構えたまま動かなくなって数分。


 互いに微動だにしないまま、完全に静止している。


 そして、あれだけ五月蠅かった声援も、ピタリとやんでいる。


 素人ながらに騒ぐべきではないと、判断したのだろう。


 と言うか、一言も出せないと言った方が正しいか?


 それだけの威圧感が、観客席まで届いている。


 動きがないと言うのに、とてつもない戦闘だ。


 恐らく両者が動いたときに、勝負が決まる。


 いや、恐らくじゃないな、絶対にだ。


 見たところ、両者ともまだ余力がある。


 撃ち合いが続いても可笑しくない筈だ。


 それなのに、二人が何かを話していたと思ったら、次の瞬間にはこの威圧感。


 理由は分からないが、二人の間に何か不都合でもおきたとみえる。


 まぁそれは良いだろう、二人が最善だと思ったのならば。


 それに、もうすぐ決着が付く。


 数分緊張が続いているが、それもそろそろ終わる。


 何となくだが、分かる。


 それは戦う事を生業としている人間なら、大なり小なり分かるはずだ。


 そしてその時が来た。


 二人が同時に踏み込んだ。


 合図も何もないにも関わらず、時が来たと言うように。


 互いにもの凄い早さで、拳と剣を構え、そして




――――ッ!




 静かな音が鳴ったと思うと、一人は右の拳を前に、一人は剣を振り下ろした状態で止まっていた。


 どうなったのだと、周りが息を飲む。


 数秒後




――――バキッ!




 と音がした。


 見ると隊長の剣が、真っ二つに折れている。


 まさか、隊長が…?


 ブランドンが今までの体制から、真っ直ぐ背筋を伸ばし、隊長の方へと身体を向ける。


 審判はそれを見て、口を開こうとした。


 だがそれに『待った』をかけるブランドン。


 ブランドンはスッキリした表情で


「見事!」


 闘技場に響き渡る程、大きな声で一言いった。


 その後、後ろへと傾き、




――――ズシッ!




 っと、大きな音を立てて倒れた。


 隊長はゆっくりと立ち上がる。


 そして振り返り、倒れたブランドンに向かって


「此方こそ、全力で相手をしていただき、ありがとうございました!」


 と、普段の軽口ではなく、畏まり頭を下げる隊長の姿が目に入る。


 その姿は、立場が違えども、双方が誇り高き誠の武人であると示していた。


 武人達の姿に見惚れていると、どこからとも無く拍手が聞こえた。


 それは瞬く間に広がり、感極まって涙を流す奴まで居る。


 隣のおっちゃんなんて、まさにそれだ。


 俺もアリスも立ち上がり、拍手を送る。


 こんな感動、今まで味わったことがない。


 今まで殺す事でしか振るってこなかった俺は、まさか同じ戦う者に感動を与えられるとは思ってもいなかった。


 短い、それも一瞬の出来事。


 しかし、そこに全てを詰め込まれている。


 それはまさしく、二人の武人が居てこそ生まれた奇跡。


 それをこの目で見ることが出来た。


「勝者、黒騎士! よって帝国代表者は、帝国騎士隊隊長兼皇族専属騎士黒騎士となります!!」




――――ワァァァァァァァア!




 再び声援が響き渡る。


 隊長はその声援に答えるように、折れた『木刀』の柄を握りしめ、天高く拳を突き上げる。


 その姿はまさしく屈強なる騎士の姿。


 それにまた、大きな声援が響き渡った。





 こうして、三国武道大会出場者予選は幕を閉じた。


 二人の武人により生み出された、感動と共に。







To be continued


あとがき

お待たせして申し訳ございません!

第28話いかがでしたでしょうか?

今回も誤字や脱字、変な文になっている所があると思いますが、後ほど修正いたしますのでご了承ください。

さて、皆様。

ようやく……ようやく! 予選が終了いたしました!

長かった。

本当に長かったです。

まさか、戦闘シーンでこれ程苦戦するとは、思いませんでした…。

3年近くかかるとは思ってもおらず、本当はもっとサクサク書けると思っていた、あの頃の私を殴りたい。

それでも、この『三国武道大会編』は今後、とても重要な役割を果たしますので省けないんですよね。

仕事もありますが、がんばって書いていきます。

今後も更新が遅れると思いますが、この小説をよろしくお願いいたします。

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