第2話 高天原と太陽神
第2話 高天原と太陽神
「ウヴン…」
「あら目が覚めたのですね、智慧さん」
………。
「誰ですか?てか何で私の名前?」
目が覚めると、中国や韓国の歴史ドラマに出てくるような豪華な部屋に、豪華なデザインの着物を着て羽衣をまとった、若くて美人な神々しいという言葉が似合う、大きな女性。
何でこんなに大きいの?
「自己紹介が遅れてしまいましたね。私はこの高天原の太陽神、天照大御神と申します」
………。
え?
高天原に天照大御神…。
「あの天照大御神って日本神話に出てくる高天原の主神の? 太陽を神格化した神様? 」
「あらよくご存じで」
マジですか!?
なんで日本神話の高天原の主神様が私の目の前に!?
名前知ってたのは神様だから!?
「まぁ混乱するのも無理ありません。とりあえず、こちらに」
そう言って、天照大御神様の手にすくい上げられるように持ち上げられた。
ってなにこの状況?
体の感覚がないと言うか何というか?
私が混乱している間に、木の丸い机の上に乗せたれ、天照大御神様は椅子に腰かける。
どうやら私はベッドの上に寝かされていたらしい。
「まずさっそくですが、貴方死にました」
「…マジで?」
いきなりとんでもない事を告げられてしまった。
それも爽やか笑顔でサラリと。
しかし、心当たりがある。
「理由はまぁ、分かっているとは思いますが。勇介君に巻き込まれた事ですね」
「やはりあの馬鹿ですか」
予想道理でした。
あの疫病神が!
「はい、本来エルドアと言う世界の勇者として、彼は一人召喚されるはずだったのですが、彼が貴方を巻き込んだせいで肉体が崩壊。私は慌てて貴方の魂だけを引き上げたのです」
そう言いながら、天照大御神様は懐から手鏡を出し私に向ける。
そこに映っているのは、手のひらサイズの丸くて光っている塊だった。
これが魂の形らしい。
この方が大きく見えたのは、私が小さかったからだ。
もう色々ありすぎて驚こうにも驚けない。
「お手数おかけして申し訳ございません、天照大御神様」
「私の事は天照で構いません」
あぁ~、さすが神様。
何て神々しい。
そして滅茶苦茶優しい。
「そう気を落とさないでください、私に一つ提案があります」
「え?」
提案?
何だろうそれ?
「貴方を別の体に入れて、エルドアに行かせることです」
え?
それってどういう事?
「実は勇介君を召喚した世界の神、エルク神とは茶飲み仲間でとても親しい間柄なんです」
「ちょっと待って下さい! 異世界の神様と交流何て出来るんですか!?」
「ええ、神なら異世界にわたるのなど容易いことです」
にっこりとそう返された。
「と言っても神か、神の加護を受けた物しかゲートをくぐる事など出来ません。ほとんど貴方のように肉体や魂が崩壊します」
なんと。
じゃぁ、天照様が引き上げてくれなかったら、魂まで消滅してたんかい!
勇介の奴マジで一度でも我慢せず、ぶっ飛ばしとけばよかった…。
「そのことを聞く限り、あの魔法陣は神の加護を受ける効果があり、正式な召喚者は大丈夫だがイレギュラーの私は肉体崩壊が起きたと言う事ですね」
「やはり貴方は飲み込みが速い」
天照様は感心し、嬉しそうにそう言った。
まぁ物事の状況を把握することには慣れていますから。
「彼を選んだのは私なんですが、彼あまりにも鈍感で、人を疑う事を知らなくて、おまけに周りが全く見えていない事が、さっき調べてみて解りまして。送ってしまった以上、神であっても私は地球の神ですので、アチラの世界に送る事は出来ても見ることはできません。先ほど神であれば行き来できるとは言いましたが、神が住まう異界、地球では高天原やオリンポスのような神々の生活する世界だけです」
ああ、つまり神が神の住まう世界にしか行けないのと同じように、人間も同じく人間が住んでいる世界にしか行けないと言う訳か。
そんで他世界の神は、その世界の神が管理する世界を見る事は出来ない。
勇者召喚はその世界が危機に陥って、なおかつ彼らだけではどうしようもないと判断した時に行われるもの。
神の加護を受けた者を呼ぶためのものなのだ。
そして今回選ばれたのが、あの勇介だったわけだ。
たぶん私がここに居るのは、魂だけの存在になったからだ。
「エルク神やエルドアの他の神々も、世界の安定のために下界に干渉出来ません。ですが、このまま友人の世界を彼に任せても、大丈夫なのか不安になってきてしまって…」
「ええ、全くその通りです」
長年の幼馴染みやってきた私には解る。
「アイツの事だから、行く先々で恋愛フラグ踏みまくって、勇者パーティーのメンバーも美女ばかり。同性からの信頼もされやすい奴ですが、一部の男から嫉妬やらの負の感情を向けられてます。しかし本人はそれらに全く気付きません。おまけに世間知らずのお人好し! 権力者に騙されて、世界を平和にするどころじゃないです!!」
むしろ、悪化するのでは?
なんか、不安になってきた…。
「ええ……よく考えたら、私も選ぶ人間間違えました」
天照様は、頭を抱えて後悔していた。
まぁ、見た目や化け物じみた能力からして、ピッタリなんだけどね。
「そこで、貴方にお願いがあるのです!」
「……まさか」
嫌な予感。
「勇者とは別に、魔王退治をしてください!!」
そう来たかー!!
「貴方をこれから、私が作った肉体に移します。外見は元の身体と同じにしていますから違和感なんて感じません。私の加護により身体能力や魔力も、召喚された勇介君以上に設定しています。いきなり魔王と闘っても互角に渡り合えます。当然あちらの世界でお困りにならないように知識・言葉も分かるようにしていますし、字の読み書きもできます! あと、私が貴方のために作った刀や鎧もご用意しました!!」
準備早いな!
まぁ、友人の世界のためだから責任感じているのだろう。
どうやらこの神様、よっぽど友達思いのようだ。
「それに貴方はまだ若すぎます。地球に戻すことは出来ませんが、異世界に送り込む事が貴方が助かる唯一の方法なのです。…申し訳ございません私がタイミングを誤ったばっかりに…」
なるほど、私の事を思ってのことだったようだ。
なら、断れないな。
どうやら私もかなりお人好しのようだ。
「解りました、お引き受けします」
「本当ですか! ありがとうございます!! ではさっそく貴方の新しい身体に移しましょう」
そう言ってまた私は天照様に抱えられ、隣の部屋へと移動した。
その部屋のベッドには、紛うこと無き私が横たわっていた。
今から行く世界の私服だろう、黒を重視にしたファンタジー的な西洋風の服を着、茶色いブーツを履いている。
「服装は動きやすいようにズボンにしました。黒にしたのは貴方に一番似合う色だと思いまして」
実際動きやすそうだ。
色も好き。
何だろう、ファンタジー好きだったからこれから行く世界にわくわくしてきた。
天照様は、その身体に私を乗せる。
すると、スーと身体に入ってしまった。
「………」
「いかがですか?」
私は起き上がり、首や腕、足を動かしてみた。
なんの違和感もない。
「大丈夫です」
私は天照様の横に立つ。
目線が同じくらいになった。
「よかったです。それでは、こちらが貴方の武器と防具です」
言われて、そちらを見る。
………。
「黒いですね」
「あら、ごめんなさい。お気に召さなかったかしら? 貴方にピッタリだと思うのですが?」
「いや、まぁ良いんですけど…」
私は黒く光沢のある、プレートアーマーとアーメットを見る。
ゲームに出てくる、黒騎士ぽいな。
横には、同じく柄も鍔、鞘も黒い打刀があった。
これは正直嬉しい。
「うわぁ! 私刀好きなんです!!」
私は鞘から少し抜いてみた。
刃は黒曜石の様で綺麗だった。
でもやっぱり黒なのね…。
「その刀の名は『朔夜』と言い、私が貴方のために作った聖剣です」
「聖剣?」
聖剣ってか、見た目魔剣ぽいんですが?
「その刀は、勇介君が持つはずの聖剣『デュナミス』と違い剣圧を飛ばすことはできませんが、ドラゴンをも切り裂くことが出来る唯一の剣です。鞘にはどんなに強力な攻撃をも防ぐ結界を張る効果があります。魔王の攻撃をも防げます。見た目は確かに魔剣ぽいですが、神気をまとった正真正銘の聖剣です」
なんか色々すごいな。
てかデュナミスって、能力・可能態・潜勢態の意味だよね。
可能性を秘めた剣ってこと?
いやそれより、勇介の聖剣って剣圧何て出せんの!?
何そのチート。
「あ、それと『朔夜』は『デュナミス』よりも強力な剣ですから。剣圧なんかも切り裂いちゃいますよ」
………。
私の刀の方がチートでした。
「ちなみに智慧さん以外には扱えませんよ。鞘から抜く事も出来ませんし、抜いた状態ですと貴方以外の人には重すぎて持てませんから」
「…ああ、悪用されないようにしてるんですね!」
「はい、その通りです」
なるほど。
確かにこんな強力な武器、悪用されたら大変だ。
「続いて鎧の説明をしますね。この鎧は装着時重さを感じず、熱や寒さからも守ってくれ、どんなに攻撃しても傷つくことはありません」
「じゃぁ、つぶれる事も?」
「もちろんありません」
笑顔でそう言った。
鎧までチートでした。
「しかし空中で受けた衝撃は肉体にダメージを受けてしまいます。鎧とは本来受けた衝撃を地面に流すことによって防御するものですから」
あぁ、納得。
どんなにチートでも万能じゃないんだね。
「それと、ドラゴン、上級魔族、魔王などの攻撃では地に足が付いていても、強力なため大きなダメージを受けてしまいますので、私が貴方に与えた肉体でも怪我をする危険性があります」
「私じゃないとどうなります」
「即死です」
………。
ヤバ過ぎ。
まぁ、そこは鞘を上手く使えば大丈夫か。
「あと、アーメットの目の所に埋め込まれている細長い赤い石は、魔硝石と言って魔力を蓄積した石です。それによって、暗闇でもはっきり見えますし、自分の意思で声を変える事が出来ます」
「声を変える?」
そんな機能までついてんの?
「ええ、なにぶん物騒な世界ですので正体を隠す事があると思いまして。ついでに、身長も5cm位高くなるよう、シークレットブーツの様な作りになっています」
「ああ、なるほど!」
確かに、女だっと言うだけで舐められるだろうし、敵に情報を与えないためにも正体を隠すのも大事だ。
天照様からもらった知識の中にエルドアでは、女性の身長は150~170cm、男性の身長は170~190cm。
私の身長が165cmだから、鎧装着時は170cmになり、ちょうど男でも女でも可笑しくない身長になる。
しかも、鎧を着ていたら男女の判断なんて出来ないため、正体を隠すのにうってつけな訳だ。
「じゃぁ、向こうでは正体ばれないようにします」
「その方が良いでしょう。貴方は地球では目立たない人間だったみたいですが、エルドアでは東洋系の顔をした人間はいませんし、黒髪に黒い瞳をした者もいませんから」
うん、その事は知識の中にも入っている。
「はい、気をつけます」
「それでは、鎧と朔夜に触れてみてください」
私は言われた通りに鎧と朔夜に触れる。
すると鎧と朔夜は黒い靄になり、右の手首に集まる。
靄が消えると、真中に黒い石が埋め込まれた、銀色のブレスレットになった。
「それは待機状態です。鎧を身につけるときは、強く念じてください。外す時も同じです」
「あの、何で黒い靄なんですか?」
「それは貴方の属性が闇だからです」
ああ、闇属性なんだ私。
「魔法は貴方のイメージによって独自の魔法を作る事が出来ますので」
それは助かる。
正直知識はあるが、習得が難しそうだから。
「それでは行っていただく前に、鎧を身につけてください」
私は鎧を身につけるため強く念じる。
すると私の周りに黒い靄が集まり、晴れると全身鎧に包まれていた。
朔夜は左腰に装着されている。
本当に重さを感じなかった。
「まぁ、とても素敵な黒騎士様ですこと」
「そうですか?」
私は、コスプレしているみたいで恥ずかしいけど。
「それではゲートを開きます。これは僅かではありますが、あちらの世界での金銭です。」
茶色いお金が入った袋を渡される。
何だろう?
結構重い。
私がそう思っている間に、天照様が手を翳しゲートが開かれた。
なんか、空間が捻じれている様に見える。
「貴方がこれから行くエルドアは、聖国で勇者召喚が行われる4年前の帝国領土にある都近くの森です。エルク神に聞いた話では、そこは優秀で民達からも慕われている皇帝が納めている国の様ですから、比較的安全でしょう。もし生活するのであれば、そこをお勧めします。4年前に送るのは、一応知識と身体強化は与えましたが、実戦を積ませるためです。」
「解りました」
「私が協力出来るのはここまでです。それでは黒騎士智慧、御武運を」
「はい、天照様」
私は、ゲートに飛び込んだ。
新しい私が生きる世界へと。
そう言えば。
私、馬に乗ってないのに騎士決定なの?
しかも黒騎士……。
To be continued
あとがき
この小説をお読みになっていただいてありがとうございます。
今回おかしなところは、ありませんでしたでしょうか?
この小説の主人公の智慧は、基本黒い衣服を着用します。
おしゃれに興味のない子ですので。
さて、次回からようやく異世界エルドアに入ります。




