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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
三国武道大会編
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第23話 各隊と予選・2日目、槍兵隊

第23話 各隊と予選・2日目、槍兵隊







・軍人関係者専用観客席


「ハァ~……」


 現在、槍兵達の試合を観戦しながら、私はため息を吐いた。


 ため息を吐くと幸せが逃げると言うが、私の場合、吐く前から逃げられている。


「あ~……よ、良かったじゃないか?」


 筋肉兄さんが、珍しく励まそうと声をかけてきた。


 しかし、何故疑問系?


 そして、全く良くなんか無い。


「ブランドン、何がどう良かったんだ?」




――――ビクッ!




 コンラットが筋肉兄さんに聞いたとたん、私を含めたコンラット以外の兵士達が震え上がった。


 なぜならその声は地をはうほど恐ろしく静かで、そして無表情。


 それにプラスしてコンラットの周りには不機嫌オーラ漂っていた。


 理由はさっきのシャルロットとのやりとりが原因なんだが、何故コンラットがここまで不機嫌になるんだ?


「コ、コンラット?」


 私は恐る恐るコンラットに話しかけて見た。


 すると


「はい、何でしょうか隊長?」


 あらまビックリ。


 不機嫌オーラが飛び散り、何時も私に向けてくる優しい笑顔で返事を返してきた。


 何でだ?


「あ、いや、何でもない。何時ものコンラットならそれで良い」


「はい?」


 取り合えずいつもの彼に戻った事にホッとして、何でも無いと言っておいた。


 それに首をかしげるコンラット。


 私達の様子を見ていた周りも、コンラットの機嫌が直った事にホッとしている様だ。


「そ、それよりだ、槍兵隊の戦闘も面白いな!」


 私は目の前で繰り広げられている、槍兵隊の試合に集中することにした。


 改めて見ると、なかなか参考になる。


 槍とは色々な種類があり、戦い方も違ってくる。


 一般的には長い棒に、短い刃物が付いている物を想像するが、ランスと言ったが短くつばが傘状になっている物もある。


 私の隊、騎士隊でもランスを使用している騎士はたくさんいる。


 他にもアールシェピースと言う1.5メイルほどの短さで、刃の部分が若干長く、鍔が丸く、柄にはなめした皮が螺旋状らせんじょうに巻かれている物もある。


 槍兵隊の中で、アールシェピースを扱う者は少なくない。


 この様に、槍にも色々あるため、様々な戦闘スタイルが存在している。


 よって、槍兵隊の訓練メニューを考えるのは実はかなり難しい。


 それは、騎士隊も同じだ。


 他の四つの隊は、ある程度考えがまとまりやすいのだが、槍は種類によって形が違う上、戦闘方法も違ってくるし、騎士隊に至ってはそもそも剣だけとは限らない。


 さっきも言ったように、ランスなど槍を使う騎士もいれば、打撃武器を使う騎士もいる。


 以上の点からこの二つの隊には色々頭を悩まされている。


 今回のこの予選大会は、今後の方針を決めるのにもっとも打って付けで、正直面倒だが、入隊してまだ半年の私にとって、嬉しい事でもある。


 まぁ、明日・・は色々気を遣いながらの観戦になるだろうけど。


 色々と。




**********




・槍兵隊決勝戦のグラウンド


 私セレスティア・エイヴァリーは、副隊長である青い髪の短髪、身長はアデルと同じくらい、我が副将ながら凛々しい男、シーザー・アンヴィルと対峙している。


 それにしても、やはり何時も使い慣れているパルチザンと違い軽いな。


 すべて木でできているから当たり前だが、もっとこう刃の部分を重くできないだろうか。


 そう思いながら私は木槍を振ってみる。


 うん、軽い。


 班長、副隊長相手なら負ける気はしないが、同じ隊長各やコンラット相手では難しいだろう。


 まず、黒騎士殿には敵わない。


 あの人の強さは計り知れない。


 何せ、呪い竜と恐れられる『ファフニール』をたった一人で撃退したお方だ。


 私など到底足下にも及ばない。


 でもだからこそ、あの人と戦いたいと思う私がいる。


 本当は、全力で戦えるように、自身の得物を使いたいのだが、この際贅沢は言っていられない。


 その為にも、今は目の前の戦闘に全身全霊で向かおう。


 この試合を見ている隊長各達に、不甲斐ない姿を見せるわけにはいかない。


「シーザー! 遠慮はいらん。全力でかかってこい!」


 私は頭上で数回、木槍回しそこから構えのポーズをとる。


「望むところです!」


 シーザーも同じく構えを取る。


 彼が使う得物はアールシェピース。


 当然木槍もアールシェピースの形の物だ。


 別名『突き錐槍』。


 攻防に優れた武器で、槍隊で多く使用されている槍である。


 間合いは短いが、使い手によっては驚異となる。


 シーザーはその驚異となる物の一人。


 油断はできない。


「それでは、はじめ!!」


 審判の合図により私たちは同時に駆けだした。




**********




・軍人関係者専用観客席


「おお! さすが隊長と副隊長!!」


 私はセレスとシーザーの戦闘を見て興奮している。


 合図と共に始まった凄まじい戦闘、槍全体を使った巧みな技や、何より身軽でしなやかな動き。


 この身軽さはクロードに負けていないと思う。


 う~ん、これはクロードの動きを観察するのもいいかもな。


 それにしてもセレス、よくあの『重い』木槍を振り回せるな。


 確かあれ、普通の槍と同じ重さのはずだけど。


 まぁ、彼女が持つパルチザンよりは軽いだろうけど、あれってセレスの特注だったっけ。


「あ、相変わらずの怪力……」


「確かあいつの槍って、普通のパルチザンより幾らか重かったな」


 隣でアホ剣士と筋肉兄さんが表情を引きつらせながら言った。


 そう、セレスティア・エイヴァリーは隊長各二、三を争うほどの怪力の持ち主なのだ。


 なぜ一、二で無いかというと、一番は私だからだ。


 別に自慢しているわけでなく、天照様がくれたこの肉体のせいだ。


 好きで怪力になったわけじゃ無い事だけは言っておく!


 って私誰に言ってんだ?


 とにかく、セレスは怪力だ。


 争い相手の筋肉兄さんといい勝負なのである。


 華奢な美人さん的な外見からはとても想像できないが、真実である。


 聞いた話だと、先日のトロール討伐の任務で、素手で投げ飛ばしたそうだ。


 もしかして、この間教えた背負い投げやったの?


 嫌々、まさか。


 あれは相手の勢いを利用して、投げ飛ばす物だけど、さすがにトロールは大きすぎて無理だろう。


 …………。


 何故だ?


 全面的に否定できない、セレスならやってもおかしくないと思う私がいる。


 そう考えるとセレスは強敵だろう。


 何せ、スピードとパワーを兼ね備えた実力者。


 実戦経験も豊富。


 どうしよう、プレッシャーが押し寄せてきた。


 セレスとエイミーは私を慕ってくれている。


 おそらく彼女たちの中では私が代表になると思っている。


 それはコンラットやクロード、アリスも同じだ。


 たぶん陛下達も。


 うわぁ…今から胃が痛くなってきそう。


「隊長? どこかお加減が優れないのですか?」


 お腹を押さえていた私に気づき、コンラットが気遣わしげに聞いてくる。


 毎度の事ながら、コンラットはよく私を見ているな。


 よく気がつく、勇介ばかとは正反対の人種だ。


 コンラットの優しさに、少し痛みが引いた。


「大丈夫、ちょっと明後日の試合を思ってたら緊張してきただけ」


 そういうとコンラットを含めた周りがビックリした表情で私を見た。


 あれ?


 私なんか変なこと言った?


「く、黒騎士が緊張……冗談…だろ?」


 アホ剣士があり得ないとでも言いたげに、私に言った。


 コンラット達も同じようだ。


「お前ら……毎回毎回私をなんだと思ってんだ!」


 思わず声を荒げてしまった。


 だが本当になんなんだ!


「私は半年前までは普通の一般人だったんだ! こんな大舞台で緊張しないわけ無いだろう!」


「皇族を怒鳴りつけた貴方が何を言っているんですか…」


 私の抗議にさらりと突っ込みを入れるコンラット。


 うっ、言えない。


 あの後すぐ後悔して冷や汗だらだらだったなんて今更言えない。


「と、とにかく私も緊張だってする」


 そういって私は腕を組んで黙り込んだ。


 つまり拗ねた。


 全く、一部の兵士とコンラット以外は私の性別を知らないから仕方ないと思うけど、コンラットは私が女だって分かってるんだから、少しは配慮して欲しいものだ。


 アリスの言うとおり、コンラットは乙女心が分かってない!









 それから決勝戦が終わるまで、コンラットが私に色々謝っていたがその日は不機嫌オーラ全開で無視し、次の日の朝まで許さなかった私。

 その光景を見ていた周りが、生暖かい目を向けていたなんて私は知らない。




**********




・槍兵隊決勝戦グラウンド


 ん?


 なんか軍の観客席の様子がおかしいが、気のせいか?


 そう思いながら私は、シーザーの突きをジャンプしてかわし、空中で一回転してシーザーの上を飛び越える。


 やはり前回の予選と比べて強くなっている。


 当然か、黒騎士殿と私が考えた訓練メニューを日頃行っているのだから。


 今度、この試合から訓練メニューを考え直すそうだが、次はどのような内容になるのか今から楽しみだ。


 しかし、そろそろ決着をつけるか。


 確かにシーザーは強くなったが、やはりまだまだだ。


 私は一旦間合いを取り、構え直す。


 腰を落とし刃の部分を後ろに向けるように、右手を後ろに伸ばし、左手で支える。


 私は一度息を吐き、まっすぐシーザーを見た。


 そんな私を見てシーザーは防御の態勢をとる。


 正しい判断だ。


 だが!




――――ッダ!




 私は踏み込み一気にシーザーに近づき交差する瞬間




――――ドゴンッ!




 私は木槍をシーザーの胴めがけていきよいよく振り切った。


結果、彼の木槍は大破し、シーザーも後ろに吹き飛び壁に激突した。


「しょ、勝者セレスティア・エイヴァリー! よって槍兵戦優勝者はセレスティア・エイヴァリー!!」




――――ワァァァァァァァア!




 審判の判定に観客席から歓声があがる。


 私は急いでシーザーの元へ向かった。


 しまった、手加減するつもりが、つい力を入れすぎてしまった!


「おい! シーザー! 大丈夫か!?」


 近寄って気づく。


 シーザーはひっくり返り、目を回して気絶していた。


 し、しまった、やはりやり過ぎてしまった。


「き、救護班!! 担架を!! 早く!!」


 私は大慌てで、救護班を呼んだのだった。


 ほ、骨は折れていない……かな?




**********




・智慧自室


「ふーん、今日の試合も面白そうだったんだな」


「ああ。まあ変な事もあったけど……」


「………がんばれよ」


 今日一日あったことをクロードと飲みながら話す。


 と言っても、クロードはウイスキーだが、いつもの如く私はジュースだ。


 現在の私は私服で、クロードはあの黒尽くめの服だ。


 何故彼がこの格好なのかというと、まぁちょっと調べてもらっていた事があって、その報告を兼ねてこうして私の部屋で飲んでいるのだ。


「悪いな急な事を」


「別に構わねぇよ、それが俺の仕事だ」


「それで、どうだった?」


「それが……」


 私はクロードの話を聞き、やはりかと腕を組む。


 はぁ、一難去ってまた一難とはこのことか。


「分かった、引き続き頼む」


「おう。でコンラットさんにこの事は?」


「まだだ。彼には悪いがもう少し、情報が欲しいからな」


 そう、まだ話すには早すぎる。


 ある程度準備を整えてからでないと、今のところまずい。


 この国の為に、まだ私とクロードだけの秘密だ。


 いやアーロンさんを含めると3人か。


「分かった、そんじゃ明日も引き続き調査を進めとく。お前も頼むぜ」


「了解。ちょうど明日は彼らの側での観戦だから、こっちは任せとけ」


 彼ら、皇族の側に。







To be continued

あとがき

大変お待たせいたしました。

第23話いかがでしたでしょうか。

今回は少し短めのお話となってしまいました。

さて、最後にこの『三国武道大会編』で主人公とクロードの会話でなぞめいた話しがありますが、それは今後のお楽しみと言うことで。

では次回もお楽しみにしてください!

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