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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
黒騎士誕生編
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第1話 憂鬱な一日と魔法陣

第1話 憂鬱な一日と魔法陣








・朝、7時30分、現代日本のとある一軒家


「チー! 学校いこ~!」


 ………。


 朝っぱらからうるさい上に、何故アンタが当たり前のように迎えにくんの?


 てかその誘い方、アンタは小学生か。


 私、斎藤サイトウ智慧チエ


 名前の由来は、物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力が備わった、女性になれという理由で名付けたらしい。


 地元の学校に通う地味な高校2年生の17歳です。


 ……自分で言うのも悲しくなってきます。


 この日本では珍しくもない、黒い肩甲骨まで伸びた髪に、目は一重で瞳の色は黒。


 顔は、綺麗でなければ、不細工でもない。


 本当に普通の顔。


 身長165cmで、女子では高い方。


 趣味は、アニメ鑑賞・漫画・ファンタジー携帯小説めぐり・ゲームプレイ・模造刀集め。


 ここまで言えば解ると思いますが、私オタクです。


 と言っても、フィギュア集めたり、コスプレしたいと思ったことはありません。


 ただ好きなだけです。


 特技はサバイバル。


 私はインドア派なのだが、親と兄がサバイバル好きで、登山によく連れて行かれたのが原因。


 御蔭で勉学は普通だが、一般よりは体力に自信がある。


 そんな、趣味や特技はともかく、普通より地味な女子高生だ。


 だが、そんな私には普通ではない幼馴染みがいる。


 それは、


「チー!」


 玄関の向こうで私を呼ぶこの声の主だ。


 名前は高杉タカスギ勇介ユウスケ


 年は同じ年。


 黒い短い髪、目はキリッとしていて、瞳の色は黒。


 顔は、神秘としか思えないほどの美しい超イケメン。


 成績は1位をキープし、運動神経も人並み以上。


 部活には所属していないが、一度見た物は何でもこなしてしまう。


 ハッキリ言って化け物だ。


 性格は紳士的で、お人好し。


 同性からの信頼も厚い。


 気付けばハーレムを作り上げ、学校にはファンクラブまであるが、本人全く気付かない鈍感野郎。


 リアルなエロゲーの主人公だ。


 一応言っておくが、私はこいつに対して一切、これっぽっちも、ミジンコ一匹も恋愛感情を持ち合わせていない。


 逆にウンザリしている。


 理由はすぐに解る。


「おうおう、毎朝ご苦労なこったな、あの野郎」


 後ろから兄、正人が蒼いパジャマ姿で眠そうな顔をして言った。


 妹の私が言うのもなんだが、自分の兄とは思えないイケメンである。


 外見は金髪で目つきが悪く不良のような外見だが、優しい大学一年生の兄だ。


「いつもいつもやんなるよ…」


 私は玄関で、髪をポーニーテールにし紺色の長袖セーラー服に、膝より少し上までの長さのスカート、黒いハイソックスに茶色いローファーを履いて、ウンザリした顔で立っている。


「あぁ~、今玄関を出てはいけない気がする」


「だろうな。さっき窓の外見たが、何時もの様に可愛い女子5人連れてたし」


「ゲェ」


 一人増えてる…。


 今度はどんなバカ女だ?


 これが理由の一つ。


 コイツはハーレム陣を連れて、毎朝私を迎えに来る。


「ハァ~、……行ってきます」


「今日も頑張れよ~」


 私は観念し、通学鞄と上履きの入った靴袋を持って家を出た。


 憂鬱ゆううつな一日の第一段へと。


 玄関を出て目に入った人物


「あ、出てきた! チー!」


 学ランをキッチリ着た勇介が、すばらしい笑顔で言う。


 それはもう、その笑顔で女を確実に落とせるだろう、爽やかな笑顔だ。


 ハーレム陣の陰湿なオーラをバックにする顔ではない。


 憂鬱第一弾…幼馴染みとハーレム陣達との登校。


「遅いわよ!」


「何やってんのよアンタ!」


 朝っぱらから、いちゃもんつけられる。


「勇介先輩~、なんでこんな地味な女と一緒に居るんですか~!」


 初対面で年下らしい可愛い女の子がそう言った。


 初対面の人間に普通言わないでしょうアンタ。


 親の顔が見てみたい…。


「咲ちゃん、そんなこと言わないでよ。チーは僕の幼馴染みなんだ」


「先輩が言うなら、私我慢する~」




――――ギュッ!




 咲という子はそう言って勇介の右腕にしがみつく。


 それを見たハーレム陣達は、


「ちょっと、何やってんのよ!」


「勇君は私のよー!」


 勇介の取り合いになる。


 いい加減人の家の前で辞めてほしい。


「ハァ~、付き合ってらんない」


 私はそんな彼らを置いて、先に行こうと歩き出す。


 こいつ等に付き合ってたら遅刻する。


「あ~! 待ってよチー!」


「だったら早くしなさい」


 私はそう言いながら歩く。


「チー!」


「…なに?」


「おはよう!」


「はいはい、おはよう~」


 ウンザリしながら後ろの勇介に、そう返す。


 バックの痛い視線をひしひしと感じながら。










・とある高校


 後ろの騒がしい集団に、ほとほとまいりながら学校に到着。


 しかし私の憂鬱は加速する。


 憂鬱第二段…勇介ファンクラブの視線と嫌がらせ。


 学校の校門をくぐった瞬間、嫌な視線が突き刺さる。


 その正体は、勇介ファン達の険悪な視線だった。


 この学校の女生徒の半分以上がこの勇介ファンクラブに所属しており、実は今朝勇介と一緒に登校した彼女達は、このクラブの幹部達なのだ。


 咲と言う女の子は、昨日幹部に昇格したのだろう。


 しかし、当の勇介本人は超がつくほど鈍感で、このクラブの存在に全く気付かない。


 当然、彼女達の好意にも全く気付かない。


 あんな解りやすくアプローチしているにも関わらずだ。


 よって、べたべたくっ付いていることにも嫌がらず、ただのスキンシップだとしか思っていない勇介にウンザリしているのだ。


 幼馴染みじゃなかったら、絶対関わりたくもない。


 だが、何故か勇介は昔から私に付いて回り、何かとかまってくる。


 その結果、いまのこの状態。


 私は、この学校の勇介ファンクラブから虐められている。


 上履きを何時も持って帰るのはそのためだ。


 小学生の時から何されるか解らない学生生活を送っているため、学校に私物は一切置いていない。


 この事に勇介は当然気付いていない。


 ファンクラブ達の努力により巧妙に隠され、先生達もこのことには気付いていないのだ。


 何より、元凶げんきょうである本人に相談なんてしないし、するだけ無駄だ。


 コイツの事だから、


『彼女達がそんなことする訳ないよ。皆良い子達だよ?』


 と言うに決まっている!


 昔勇介に、ハーレム陣達をどうにかしてほしいと言った時なんて、


『え? 別にハーレム何て作ってないよ。それに彼女達良い子達だから、チーもきっと仲良くなれるよ!』


 と爽やかに言われてしまったのだ。


 コイツは人を疑うという事が出来ないし、周りをまったく見ない。


 現に、ファンのうっとりとした熱い視線や、一部の男子生徒からの嫉妬の視線にまったく気付かないのだから。


 やってらんないよ。


 私は校舎に入り、上履きに履き替え、ローファーを靴袋に入れ、教室に向かう。


 その間も当然私の後を付いてくる勇介だった。







・時は流れて放課後


 現在私は珍しく、勇介と二人で下校していた。


 ハーレム陣達は、部活で帰れないそうだ。


 実際はおそらく、私をどう始末するかの集まりだろう。


 今まで怪しいところに呼び出されたり、階段から落とされそうになったりと、いろいろな嫌がらせを受けて来たが、そこは持ち前の運動神経でどうにか切り抜けてきて大事にならないですんでいたが、マジでいい加減にしてほしい。


 そんな事とは、つゆ知らず。


 隣には、私限定の疫病神の幼馴染みが嬉しそうに、ニコニコしながら歩いていた。


「あんた、嬉しそうね…」


「うん、だってチーとゆっくり出来るの久しぶりだから」


 私はとっとと帰りたい!


「ねぇ、カフェ行こ! チーの好きなチーズケーキおごってあげるよ!」


「嫌にき「じゃ行こ!」って話聞け! 腕引っ張るな~!」


 勇介は、嫌がる私を無視して、近くのカフェへ強引に連れ込んだ。


 マジで帰りたい!!







・更に時は流れて、人気ひとけのない公園


 私は勇介を後ろに公園を散歩する。


 もう、ほとんど日が沈んでいる為、公園には人の気配がまったく無い。


「アンタ、私に対しては遠慮えんりょなんて、一切しないよね…」


「え? でもチー、あそこのカフェのチーズケーキ好きでしょう?」


「好きだけどさ」


 私は帰りたかったんだよ!


「なら良いじゃないか。チー遊びに誘っても全然相手にしてくれないし」


「だーかーらー、アンタの周りにいるハーレム陣達が私を睨んでくるからで!」


「いや、ハーレムなんてそんな大層な物じゃないよ?」


 さも何でもないかのように言う勇介。


 素で言ってるのだから、余計にタチが悪い。


「それに、彼女達本当に良い子達だよ?」


 それは、猫被ってんだよ!


 たく、恋する乙女は恐ろしい…。


 だが、彼女達に同情は一切してやらない。


 今まで、散々嫌がらせ受けてきたのだから。


「ハァ~…アンタねぇ、何時か痛いめに合うから」


「何コレ!?」


 私は立ち止まり勇介の方を一切見ず、何時もの用に説教をする。


 言っても無駄だろうけど、言わずにはいられない。


 何か言ってる用だが気にしない。


「うわぁ~! 引きずり込まれる!!」


「そんなんだったらいつか後ろから刺されるよ。そうでなくてもアンタはま「助けてチー!」あんた私の話…を…」


 聞いていないと判断した私は勇介の方を振り返る。


 何だこの光景?


 勇介のいるちょうど真下に現れたらしい、光り輝く魔法陣のようなもの。


 いや、間違いなく魔法陣だろう。


 その魔法陣に胸から下が完全に埋もれており、勇介は何とか魔法陣のはしまで移動したようで必死にしがみついていた。


 その光景を見ながら、私は冷静に分析をする。


 勇介よ、あんたは恋愛シュミレーションゲーム(18禁物)の主人公だけではあきたらず、今度は異世界RPGの主人公まで体験するのか。


「あぁ~、でも何時かこうなるんじゃないかと思っていた気がする…」


「なに一人で納得してるのさ!? 速く引き上げてよ!!」


 むちゃを言うな。


 女の私が男の、それも身長175cmで見た目は細いが、かなり筋肉が付いたガタイの良い奴、重すぎて引き上げるのなんて無理だ。


 それによく考えれば、コイツさえいなければ私は平穏に生活できるのではないか?


 ハーレム陣やファンクラブの女共に、虐められる理由も無くなる。


 それに、間違いなく勇者として勇介を召還しようとしているのは、一目瞭然。


 悪いようにはされないだろう。


 よって、私のとるべき行動は一つ。


「勇介」


「チー速く!」


「おそらくこの魔法陣は勇者召還だ。良かったじゃない、人々を守る勇者にアンタは選ばれたんだ。大人しく異世界にいって人々を救ってきなさい」


「チー! 何言ってんの!?」


 勇介は絶望したかのように、顔を真っ青にして言う。


 そんな勇介を無視して背を向ける。


「それじゃ頑張れ我が幼馴染み!」


 私は笑顔でそう言った。


 コレで私の平穏な日々がやってくる!


 しかし次の瞬間、




――――ガシッ!




「へ?」


 急に足をつかまれた。


「だったらチーも一緒!!」


 何をされているのか考える暇もなく、私は何か強い力により、勇介共々魔法陣に吸い込まれていった。


 やはり私に平穏は無いようだ。


 勇介ぶっ飛ばしたい…。




To be continued

あとがき


皆様こんにちは桃香です。


今回は地球での主人公の智慧と幼馴染み勇介の召還魔法陣に引きずり込まれたところまでのお話でした。


今回から、物語のキャタクタ―視点で進めていきます。


私自身の力不足により、文章が変なところもあるかもしれませんが、最後まで書いて行こうと思いますので今後ともお付き合いお願いします。

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