表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
黒騎士誕生編
16/43

第15話 突入と予想外

第15話 突入と予想外






・廃墟前


「それでは突入し次第、手筈通りに」


「ハッ!」


 突入前の最後の確認をする。


 クロードと別れた後、待機場所に戻り突入の時を待った。


 そして今まさに突入を実行しようとしていた。


「フゥ~…」


 心を落ち着かせるために、目を瞑り息を吐く。


「……よしっ! 行くぞ!!」




――――ハッ!!




 私の号令に大きく返事をし、廃墟に向かって駆けて行った。


 魔導師が『ライトリー』を出し周りを明るくする。


 『姿隠し』の魔法を解き、大きな入口まで駆けて行く。


「なっ何だ!?」


 門の前には門番が2人。


 突然明るくなった事と、私達が突撃してきた事によって混乱したようだ。


 だが闇に何人か隠れている気配がする。


 その気配達は潜伏していた所から、一瞬で私達の前に立ちふさがった。


 応戦しようと朔夜を抜いた時


「グァッ!」


 私が切り捨てようとした人物の胸に一本の矢が突き刺さった。


 その人物は心臓を射抜かれたらしく、後ろへ倒れた。


 矢が飛んできた所を見ると、


「………」


 離れた場所にある建物の上に居た、アディンセル隊長が矢を放った体制で、此方を見ていた。


 これには本当に驚いた。


 いくら明るいと言っても、彼から私達の所までかなり距離がある。


 だが、射抜かれた人物の胸は正確に射抜かれていた。


 成程、流石隊長なだけはある!


「急ぐぞ!」


 私の言葉に突入隊が頷き、屋敷内に潜入。


 私とコンラット、それぞれ10人ずつに分かれ、目的の場所へと広い廊下を駆けて行った。


 今回の作戦は、私達が観客席から攻め、コンラット達がステージから責める。


 挟み撃ちにすることが目的だ。


 ルートはクロードが全て調べてくれた。


 彼を勧誘したのは正解だった。


 これなら迷うことなく、進む事が出来る。


 でもやはりと言うか、お約束と言うか。


「………」


 5人位だろうか?


 見るからに悪そうな連中が行く手を阻む。


 目的の場所まで、まだまだ遠い。


 迷う事は無いけど、苦労はしそうだ。


 私は走り続けながら、朔夜を構える。


 今回はクロードの時みたいに殺さなくてもいい展開にはなりそうに無い。


 相手も武器を持ち、私達に向かってくる。


 迷っている暇は無く、目の前まで来た敵の持っていた武器を弾き飛ばし、相手の隙を突いて朔夜で首を裂いた。


「………」


 敵の首からは大量の血が噴き出し、返り血が鎧にかかる。


 相手は前に向かって倒れ、数回痙攣した後そのまま動かなくなった。


 この日私は、生まれて初めて人を殺めた。


 だけど今の私には、ショックで立ち止まる事は許されない。


 周りを見ると、すでに部下達が残りの4人を始末していた。


「このまま突き進む!」




――――了解!




 私の言葉に全員が答え、私達は前に進んだ。


 先刻まで人だった者達を置いて。




**********




 俺は隊長達と別れ、クロードが調べたステージの出入り口へ走っていた。


 途中、何人か邪魔が入ったが、全て切り捨てた。


 クロードの情報通り、廊下は広く俺達が剣を振り回しても十分なスペースがあった。


 この広さを元に今回俺と隊長が率いる、部下達の人数を9人に決めた。


 たく、何処であんな優秀な人材見つけて来たんだか。


 初めは不安だったが、彼の仕事は正確で、あっという間に調べ上げた。


 彼がいなけれは、こんなに早く今の状態にならなかっただろう。


 まったく、隊長が来てから良いことずくめだ。


 ああ、今先頭を走っていて良かった。


 俺の顔、今絶対にニヤけてる。


 そんな事を考えていると、目的の場所に到着した。


 やっぱり事前にルートが分かっていたら、動きやすいな。


 クロード様様だな!


 一応アイツならアリスとの仲を応援してやる。


 だが、アリスは色々ハードル高いからな~ぁ。


 今度礼も兼ねて、アリスの趣味を教えてやるか。


 心の隅でそっと考えながら、目的地の扉を少し開け中の様子を見る。


「皆様、お待たせいたしました! これよりオークションを開催いたします!!」


 扉をあけると同時に、奥の方から声が響いてきた。


 ステージ裏には、此処に来るまでに襲ってきた連中と、同じような人間が複数。


 だが、それほど腕の立つ様な奴等じゃない。


 これなら特に問題は無いと思う。


 しかし、余りにも簡単すぎるのが気になる。


 此処まで来るのもそうだったが、手応えが殆ど無い。


 アイツ等が戦闘の素人では無いのは分かる。


 それにしたって、警戒が薄過ぎるのは気の所為なのだろうか?


 まさか、隊長達の方に集中しているとは考えにくい。


 何事もなければ良いが。




**********




 目的地に向かう途中、何人かに襲われたが、特に問題なく進めた。


 此処までで一体何人殺しただろう。


 現代日本で育った私は、人が死ぬ、それも自分が殺す体験をして、心が震えていた。


 覚悟していた事だけど、やっぱり怖かった。


 でも、怖いと思っている事にホッとする私もいた。


 この感覚を覚えていれば、私は私のままでいられる。


 何故だかそう思ったら心が軽くなり、今するべき事をしようと思える余裕が出来た。


 目的地に到着する。


 扉の前に居た見張り2人を容赦なく切り捨てる。


 悲鳴を上げさせる事もなく絶命した2人を壁の隅へ移動させ、ゆっくり扉を少しだけ開ける。


「皆様、お待たせいたしました! これよりオークションを開催いたします!!」


 ちょうど開催時間に到着したようだ。


 此処まで来てホッとする。


 しかし、いくらクロードが調べた道を来たからと言って、簡単すぎる。


 此処まで来る間に襲いかかって来た奴等も、弱いと言う訳ではないと思うけど、あっさり此処まで来てしまった。


 コンラット達の所に集中していた?


 いや、そんな訳が無い。


 どちらも到着する所は同じだ。


 観客席とステージ、出る所が違うだけで、場所は同じ。


 だったら同じくらい警戒しないと可笑しい。


 何も無ければいいのだが。


「隊長、突入しますか?」


 私が考え事をしていると、騎士隊に所属している男が聞いてきた。


「いや、まだだ」


 男の言葉に答える。


 まだ突入は、待った方がいい。


 私が突入し合図を送ると、コンラット達も突入する事は打ち合わせしている。


 おそらく、彼等もステージ裏に到着している頃だろう。


 でも今出て行ったら駄目だ。


 決定的な証拠を出した瞬間を待たなければ。


「それではオークション番号1番!」


 私は息を整える。


 大丈夫、私一人でやる訳じゃない。


 ステージの司会者の男が人型の木でできた、人形に魔力を込める。


「合図するまで待ってろ」


 その言葉に9人が頷くのを確認。


 人型が光、次第に一人の女性の姿に変わる。


「コヤシ村出身の女性! 金1枚から」




――――バッン!




 司会者の言葉を遮る様にして、扉を勢いよく開ける。


 部下達は、見えないように身を潜める。


 中に入ると、先刻までのボロボロな廊下と違い、綺麗で豪華な会場が目に入る。


「なっ! 何故お前が!?」


 そう声を上げたのは、最前列の主催者席に座っていた見覚えのある人物、アクロイド議員だった。


 何が起きたのか付いてこれず、周りもざわめきが起こる。


 そんな彼等を見下しながら、私は言った。


「何故? それは此方のセリフですよ、アクロイド議員」


「グゥッ!」


 私の一言に言葉を詰まらせる。


「私はある人物からの有力情報を元に、ここへ来たのです。どうやら大当たりの様ですね」


 ステージの傀儡を見ながら言った。


 始めて見るけど、言われないと気付かない程リアルだな。


「さて、皆さん動かないでください。主催者以外は他国の貴族方のようですが、この国では奴隷を禁止されているのはご存じのはず」


 逃げようとしていた観客達に言うと、青ざめた顔をした。


 自業自得だろ?


「大人しく投降して下さる事をおすすめいたします」


「フッ! 馬鹿か貴様、一人でのこのこきよって」




――――バチッ!




 アクロイド議員が指を鳴らすと、ゾロゾロと戦闘要員がステージ裏から出てきた。


 数は10人位だろうか?


「フハハハハッ! 如何だ黒騎士、これだけの数を相手に「低脳」何?」


 余りの馬鹿らしさに、思わず侮辱の言葉を相手に送る。


 この人、自分が有利だと勘違いしている。


「私が何時一人で此処まで来たと言った?」


「………まさか」


 アクロイド議員を気が付いたようだ。


 自分達の置かれている状況に。


「まったく、此処まで来るのに何人相手にしてきたと思っているんです? こんな怪しい所に、1人で突入する馬鹿はいませんよ」


 待機していた後ろと、ステージ裏からコンラット達が剣を抜き、会場内へ進入。


 出入り口を閉鎖する。


「外はすでに包囲されている。他の戦闘要員は、此処に来るまでに排除させていただいた。残るは此処に居る貴方方だけなのですよ」


 そう言うとこの場に居た観客、主催者、スタッフは青い顔を更に青ざめ、逃げ場か無いと悟る。


「捕えろ!」


 私がそう言うとコンラット達がスタッフ達を捕まえ、身動きが出来ないように『バインド』をかけた。


 『バインド』とは相手の動きを封じる魔法。


 無属性なため魔力が有れば誰にでも使える。


 無い人間でも、魔硝石を使えば問題ない。


「終わりですよ議員」


 私はアクロイド議員を見据えて、言った。


 終わったとホッとする。


「フッ、フハハハハハハッ!」


 だが、突然笑い出したアクロイド議員。


 嫌な予感が過った。


「………何が可笑しい?」


 私は嫌な汗をかきながら、アクロイド議員に問うた。


 議員は笑い声を止め、私を見る。


「どうやら儂は、貴様を甘く見ていた。まさかコイツを使う事になるとはな!」


 そう言って懐から取り出したのは、真っ赤な魔硝石。


 何であんなものが?


 良く気配を探ると、禍々しい気配を感じる。


 何か封印しているのだろうか。


「ハン! 魔族に渡されていた物だ! 黒騎士、貴様さえ居なれば皇族暗殺が成功し、今頃我々議会がこの国の全権を奪えたものを!!」


「!? ………ほう、あのオーガ達は貴方方の仕業だったのですね」


 まさかの自白。


 追い込まれたせいで、自暴自棄になっているのか?


「そうだ! 魔族と契約を結び、この国には一切危害を加えない事を条件に、今まで奴らの言う通りにしてきた。これもその一つだ!」


 両腕を広げ、会場全体を表す。


 成程、この騒動は議会と魔族によるものだったのか。


 それなら、色々納得がいく。


 如何して調査隊が少数だったのか。


 如何して、各村や町の軍が少なかったのか。


 議会のごく一部と思っていたが、まさか全員がグルだったとは予想外。


 これは新たな議員を選出しないといけない様だ。


「事態が狂いだしたのは、陛下がコンラットを味方に付けた時からだ。儂等は魔族の言う通りに皇族暗殺を企てたが、忌々しい使用人供が邪魔しおって!」


 此処でも使用人さん達が大活躍していたようだ。


 まさか、こんな所で使用人さん達の謎が深まるとは。


 何者なんだろう城の使用人達。


「そして決定的なのが貴様だ黒騎士! 貴様が都に来てから全てが変わった!」


 アクロイド議員が醜く顔を歪めて、私を見る。


「貴様が軍の権限を我々から奪い、剰え村や町の警護隊を総変えしたせいで、動きづらくなった! 邪魔な貴様を暗殺するために、手を組んでいた闇ギルドへ依頼を出したが失敗。ついに此処まで貴様は来た。本当に忌々しい奴め!」


 『だが』と、不敵な笑みを浮かべ、右手に持っていた魔硝石を掲げる。


「それもこれまでだ黒騎士。貴様等には死んでもらう!」


 そう言った後、アクロイド議員は魔硝石に封じられている物を呼び起こそうとする。


「まずい!」


 そう思った私は鞘を左手で持ち、アクロイド議員以外を結界で覆う。


 魔硝石は眩しい位、光輝き次第に形をなす。


 それは大きな物へとなっていき、そのせいで建物が崩れ出す。


 そして次の瞬間、大きな音を立てて建物は崩壊した。


 屋根が落下し終え、辺りは瓦礫と化す。


 鞘が張った結界により、全員無傷で済む。


 結界の上に乗っていた瓦礫を、除ける様にして解く。


「無事ですか、隊長!?」


 コンラットが私の元へ駆けてくる。


 周りは何が起きたのか、付いて行けていない様だ。


「問題無い。そっちは?」


 鞘を腰に戻しながら言う。


 初めて結界を張ったけど、凄いなこの鞘。


「此方も大丈夫です!」


 コンラットの言葉にホッとする。


「今の結界は、隊長が? 」


「ああ、正確に言えば鞘の結界なんだけど」


 コンラットの質問に答え、周りを見る。


 元々ボロかっただけに、崩れ方もあっという間だった。


「そう言えばアクロイド議員は?」


 その言葉に突入隊、全員が辺りをも見渡す。


「!? ……騎士隊長!」


 部下の一人が瓦礫の上を指す。


 瓦礫の上に不敵な笑みを浮かべるアクロイド議員。


 そしてもう一つ


「……ファフニール」


 大きな羽に長い尾、4本足で立ち、口は鳥の嘴の様な形。


 身体は厚い鱗に覆われ、大きさは高層ビル並み。


 地球では北欧神話に出てくる、呪いで生まれたとされるドラゴン。


 物語で描かれる『ファフニール』は蛇として書かれる事もある。


 この世界では爬虫類型のドラゴンとして、人里離れた森の洞窟に生息している。


 よほどのことが無い限り、人間の前には姿を現さない。


 それは他のドラゴンも一緒だ。


 しかし、その呪いのドラゴンは私達の目の前に現れてしまった。




**********




 これは現実なのか?


 俺は今、呪い竜『ファフニール』を目にして言葉を発せずにいた。


 詳しくは知らないが、聞いた話では毒を吐くドラゴンだ。


 そんなドラゴンが帝国に降臨してしまった。


「ハハハハハッ! 如何だ貴様等! ファフニールよこの下種共を葬り去れ!! 」


 アクロイド議員が『ファフニール』に命令する。


 不味い、こんな奴に攻撃されたら全滅だ!


 俺達は此処から離れようと、観客席に未だ唖然と座っている貴族達に逃げる様に言う。


 だが、何時まで経っても攻撃が来ない。


「如何したファフニール! 儂の言う事を」




――――グォォォォォオ!




 アクロイド議員が命令している途中、『ファフニール』が突如吠える。


 それは凄まじく、思わず耳をふさぐ。


 振動で地面が揺れた。


 『ファフニール』は大きな口を開け、アクロイド議員に襲いかかる。


「なっ何」




――――グチャッ!




 アクロイド議員は『ファフニール』の口の中へ。


 『ファフニール』が顎を動かす度、グチャグチャと言う音が響く。


 そして、飲み込む音が静かにした。


「う、うわぁぁぁぁぁあ!」


「ばっ化け物!?」


 その光景を見た貴族達は一斉に混乱し騒ぎだす。


「コンラット! 今すぐ此処から全員を退避させろ!」


 今だに唖然としている俺に命令をした隊長。


 その言葉で我に返った。


「急げ! 此処から離れるんだ!!」


 俺の掛け声に全員が廃墟から離れる。


 しばらく走って敷地内から出た俺達。


「黒騎士、コンラット! 何が有った!?」


 敷地内から出た俺達に声をかけたのはアドルフだった。


 俺達は先刻まであった出来事を手短に話す。


 それを聞いたアドルフの顔が蒼白になった。


「馬鹿な! ファフニールだと!?」


 受け入れたくないと言う声が響いた。


 それもその筈だ。


 本来ドラゴンとは上級魔族以上の力を持っている。


 国の軍隊総出でやっと相手にできる位の力を持ち、勝てるかどうか分からない強力な生き物だ。


 こんな奴を封印できるのは、強大な力を持つ魔王位なものだ。


「魔王」


 そこまで考えて嫌な事を想像してしまった。


 まさか、魔王が関与しているのか?


「コンラット」


 隊長の声が聞こえ顔を向ける。


「多分だが、コンラットが考えている通り、魔王が関与している可能性がある。いや間違いないだろう」


 俺の呟きが聞こえたらしい。


 隊長も同じことを考えていたようだ。


「何故魔王が!? 今までの歴史で一度もこんな事」


 アドルフが焦った様子で言った。


 確かにそうだ。


 今まで魔族とは敵対関係だったが、魔族が攻め込んできた歴史は無かった。


 精々、犯罪者と手を組むぐらいだ。


 それなのに何故今になって……。


 いや、今はそんな事を考えている場合ではない。


「兎に角、軍の全勢力を集結させる必要がある」


「だがファフニールは、今俺達の目の前に居るんだぞ!」


 俺の言葉にアドルフが言った。


 確かにそうだ。


 今軍に招集をかけた所で、間に合わない。


 最悪、都中に毒を吐かれて、都が全滅する。


「……コンラット、アディンセル隊長。商店街の人達を城に避難させろ。先刻捕らえた者達と他国の貴族を連行する事を忘れずに」


 如何すればいいか悩んでいると、不意に隊長が指示を出した。


「黒騎士、何を? 」


「アイツは私が相手をする」


 その言葉を聞いて、俺達は訳が分からなかった。


 何を言っているんだ?


 いち早く意味を理解したのはアドルフだった。


「馬鹿かお前! 相手はドラゴンなんだぞ!」


 俺もようやく理解できた。


 一体隊長は何を考えているんだ!?


「隊長! 何言ってるんですか!? アレは軍が総出で相手をするしか、方法が無い相手なんですよ!?」


「コンラットの言うとおりだ! お前死ぬ気か!? 此処は一旦引いて、策を練るのが」


「そんな時間は無い!」


 隊長は怒鳴り声を上げて、俺達を黙らせる。


「それに策ならある。ファフニールの腹部を見てみろ」


 隊長はそう言って『ファフニール』の腹部を指す。


「ファフニールは、腹部だけ鱗が無く無防備なんだ。何とか攻撃を避け、懐に入り込めば勝機はある」


 言われた通り、『ファフニール』の腹部を見て納得した。


 確かにあそこを攻撃出来れば、『ファフニール』に致命傷を与えられる。


 しかし、やはり問題があった。


「ですが! ファフニールは毒を吐きます! それを回避できなければ」


「それに、都で毒を吐かれたら、大勢の被害が出る!」


 問題なのは毒だ。


 これがある限り下手に手を出せない。


 だが、隊長には焦りが無かった。


 少し俺達から離れ、振り向く。


 隊長の背後には城壁と『ファフニール』。


「……フンッ!」


 隊長が勢いよく鞘を地面に突き刺した。


 すると隊長とドラゴンを避ける様にして、透明な結界が都を覆った。


 先刻も見たが、これは隊長が持つ『サクヤ』の鞘の力らしい。


「これで都は大丈夫だ」


 そう言った隊長に近づこうとしたが、結界に阻まれ近づく事が出来ない。


「隊長!?」


 俺は何とか隊長の元へ行こうと、結界を叩くが、腕が痛くなるだけでビクともしなかった。


「この結界なら毒の心配はない。後は私達・・に任せろ」


 聞き間違えだろうか。


 隊長は『私達』と言わなかったか?


 隊長は俺達に背を向け、右手を前に翳す。


 すると隊長の前に魔法陣が現れた。


 まさか召喚魔法!?


「『来い! ハヤテ!!』」


 声に魔力を含ませ、契約獣を呼び出す。


 それが召喚魔法だ。


 これには呪文は必要なく、言霊で呼び出す。

 

 隊長の言葉に応じる様に、魔法陣から出てきたハヤテ。


 ハヤテは踵を返し、ゆっくりと隊長に頭をスリよせる。


 その神秘的な光景に俺達は目を奪われた。


「ハヤテなら、毒をどうにかできる」


「そうか!」


 隊長の言葉で気が付いた。


 確かに一角獣ユニコーンなら毒を浄化できる。


 隊長は頷き、ハヤテに跨った。


「良いか、もしもの為に住民を避難させろ! 直ぐに終わらせる」


 この言葉に、俺達は頷く。


 今の俺達の心には、この人ならどうにかしてくれる。


 そう確信めいたものがあった。


「行くぞハヤテ!」


「ブルッ!」


 ハヤテに乗った隊長は、右手に『サクヤ』を持って駆けて行く。


 それを見た俺達は、隊長の指示を実行するため、商店街へと急いだ。


 絶対帰ってきてください、隊長!





To be continued

あとがき


第15話をお送りしました。


今回の話が今までで大変だったかもしれません。


特に『ファフニール』の解説を考える辺りが。


ドラゴン図鑑を買って、絵や文を参考に書いたのですが、如何でしたでしょうか?


『ファフニール』は本当は正式なドラゴンではなく、ドワーフの青年が変身した姿なので、ドラゴンとして出そうか迷ったのですが、今回の話しに一番合ったドラゴンだと思い、エルドアでは正式なドラゴンと言う設定で出させていただきました。


『黒騎士誕生編』は残す所、後2話です。


次の章も楽しんでいただけるようなストーリを考えていますので、お楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ