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俺と彼女らの7日間  作者: 瀬尾優梨
6日目 縁の下にいるのは苦労人
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 俺たちの周りではシャリーたちがきゃっきゃと声を上げながら各自の活動に精を出していた。シャリーを見ると、驚くことにもう、丸い玉のようなぬいぐるみができあがっていた。薄いベージュ色のそれに黄色の毛糸を縫いつけているから、きっとシャリーは編みぐるみの人形を作るんだろう。今縫いつけているのが髪だろうか。

 俺がシャリーの方をじっと見ていることに気づいたんだろう、黙々と針を動かしていたサランが顔を上げた。

「姉様は、とてもお裁縫がお上手で、しかも早いのです」

 振り返ると、どことなく寂しそうな顔のサランがいた。その手元にあるぬいぐるみは、まだ形にさえなっていない。

「姉様が作られたお人形や刺繍、パッチワークは地元のバザーでもとても人気なのです。魔具ではなくとも、いつも販売開始直後に売り切れてしまうほどなのです」

「へー……さすが長女だな」

「はい。私も誇りに思っています」

 そう言って、サランは小さく微笑んだ。多分、今日に入ってから初めて見れた笑顔だ。

 サランも緊張しているんだろうか。じっと手元のぬいぐるみに集中するサランの横顔を観察しながら、俺は考えた。シートの上にあぐらをかき、頬杖を付いたらちょうどいい感じにサランの顔を見ることができた。

 思えば、今まで過ごした四人は個性が強すぎて、こっちが振り回されていた。ゲテモノ料理を食わされたり迫られたり実験台にさせられたり叩きのめされたり……。

 だが、サランはどう見てもそういうタイプじゃない。姉たちに振り回される、どっちかというと俺と同じ「苦労人」タイプなんだろう。だから、何となくこの空気もぎこちないんだろう。

 だって、「苦労人」と「苦労人」だ。ほら、「ボケ」と「ツッコミ」は両方あってこそ漫才が成り立つだろ。あれが「ボケ」二人だったら収拾がつかなくなるし、「ツッコミ」だけだと話が始まらない。そういうこった。

「サランは、ここに来る前はどういう生活していたんだ?」

 今まで聞いていたようにそう尋ねると、サランは顔を上げた。

「えっ……どういう、と言われましても……ごく、普通に……」

「ご両親は?」

「親は……故郷にいます。私はマクシミリアン出身なので」

「あっ、マクシミリアンだったのか」

 マクシミリアンは、フォルセス連合王国に属する地方の名だ。我らがフォードのような決まった君主を持たず、フォルセスから自治権をもらって選挙によって選ばれたリーダーによって統治される、共和制の地方だ。正式名称は「マクシミリアン自治区」だったかな。

 ちなみに、俺のお気に入りであるマックリーンの丘も、ここにあるんだ。フォルセス連合王国の中でも端に位置するから首都の人間にはあまり知られていないが、フォードからは近いし、気候も穏やかだから観光地として適していた。

「ということは、ご両親と暮らしていてジジイが迎えに来たのか」

「そういうことになりますね。といっても、師匠がおいでになったのは三年前。私はもう、かなり大きくなっていましたが」

 ジジイの家では弟子経験が長い者から「姉様」と呼ばれるルールになっている。どう見てもシャリーとサランは同い年程度には見えたが、長女と五女。迎えに来られた時期によってここまで差が付くんだな。

「どうしてサランは遅かったんだろうな」

「さあ……おそらく、魔術師としての開花が遅かったのではないでしょうか」

 手を動かしつつも、だんだんとサランも気を抜いて話してくれるようになってきた。表情も穏やかになっている。

「私は両親とも、魔術師ではないので。自分が魔術師になろうとも思ってもいませんでした。でも、十五才を過ぎた頃から、異変は感じていました」

「何か不思議なことが起きたのか?」

 興味を引かれて尋ねた。確かシャリーは風の魔法に長けていたというし、ユイは古文書にかけてはシャリーと引けを取っていなかった。各自何らかの得意分野はあるんだろう。それこそ、今やっている物作りのように。

「はい。私の場合……そうですね、枯れかけた花を握っていたら予想以上に長く持ったり、私が育てていた野菜は他のより大きくなったり、髪が早く伸びたり」

「……触れたものが元気になったのか?」

「平たく言うと……そうでしょうね。小さい頃からその兆しはあって、地元の学校では『人間肥料』ってあだ名が付いていたのですよ。私の鉢植えだけは誰よりも早くお花が咲いたので」

 と、明るく言う。

「人間肥料ってのは言い過ぎだろうが……でも、使い方を間違えなけりゃ、かなり有効になりそうだな」

「そうなのよー」

 いつからそこにいたのか。ひょっこり、サランの背後からでかい乳……もといリンリンが顔を出した。手には、ビーズで作ったらしい豪華な髪留めを持っている。

「人間の体だって、大きくなるべき箇所はたくさんあるものねー」

 と言い、ぼけっとして自分を見上げるサランを舐めるように観察する。特に、自分とかなりサイズに差のある胸元を。


「んー……サラン、自分で自分の胸を触ったらもうちょっと大きくなるんじゃなくて?」

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