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俺と彼女らの7日間  作者: 瀬尾優梨
6日目 縁の下にいるのは苦労人
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 魔具を作るのに必要なのは、強力な魔力。それに加え、魔力を注ぎ込む「器」になるもの。さっきも説明を受けたように、短剣や人形、お守りなんかが主な「器」になる。魔力の容器なしに魔具を作ることも可能らしいが、やはり形のある容器があった方が、魔力を注ぐのも簡単になるんだと。

「昨日私たちが郵便受けを作ったのもご覧になったでしょう」

 布の固まりやら、木ぎれやらを庭に運び出しながら、シャリーが言う。

「私たち、物作りが大好きですの。私は刺繍やお人形作り、テディは木彫り細工……といったように、得意な分野も違うのですが、何かを自分の手で作り上げることが楽しくって」

「そりゃいいことだな」

 今日も外は快晴。風もほとんどないから、庭の芝生に大判のピクニックシートを広げ、裁縫セットや工具を次々に家から持ち出して、シートの上に並べる。なんだか、魔術師の家の風景というより、士官学校の美術室を思い出すな。一般教養として俺も軽く美術を習っていたんだ。

 ……美術の成績? 聞かないでくれ……。


 ありとあらゆるものをシートに並べると、大きすぎるとさえ思えていたピクニックシートはあっという間に物だらけになった。

「ようし、それじゃあ今日の課題じゃ」

 弟子たちが準備をしている間、じいさんは玄関ポーチに座って今日のメニューを書いていた。今日も一人一人微妙に内容が違うんだろう。五人に一枚ずつ、課題の書かれた紙を渡して、じいさんはポーチ横の日陰に座り込む。

「それじゃあ、作業開始じゃ。魔具の器ができたらこっちに持ってくるように。一緒に魔力を込め、その出来映えに応じて値段を付けるぞ」

 はあい、と元気よく返事する五人姉妹。なるほど、貴族用の魔具は「ぼったくる」という話だから、その場で値段を付けておくんだな。きっと、俺でも引いてしまうようなとんでもない値段を……。

「ほれ、貴様はサランのところに行かんか」

 三々五々散らばる五人を眺めていると、後ろからジジイにどつかれた。足下に転がっていた木の棒で。

「もしできそうなら何か手伝いでもしてみぃ。まあ、全くもって期待はしとらんがのぉ……」

「……さようですか」

 ジジイの相手をするのは時間の無駄だ。まだなにやらぶつぶつ言ってくるジジイを軽くあしらい、足下に散乱する工具や材料を跨ぎ、こちらに背を向けているサランの後ろにしゃがむ。

 表情は読み取れないが、どうやら山と積まれた毛糸を物色しているようだ。

「……よう。サランは何を作るんだ?」

「……え?」

 俺がいるとは思わなかったのか、はっとして振り向いたサランの手から、ころりと鮮やかな赤色の毛糸玉が転がり落ちる。

「あ、アーク様でしたか……」

「ああ。今日はサランの様子を見るからさ」

「……そうでしたね」

 本当にそのことを忘れていたらしく、サランは思い出したように頷いた。

「ええと……私は村の子ども用のぬいぐるみと……あと、ビーズのネックレスです」

 そう答え、先ほど取り落とした毛糸を拾ってその場に座り込んだ。

 俺たちの周囲では、既にシャリーたちが自分の作業に入っていた。ジジイも、弟子各自の適性に応じた課題を設定したんだろう。シャリーはパッチワークに使いそうな端切れをシート上に並べているし、木彫りをするらしいユイは材木に鉛筆で大まかな線を書き込んでいる。

「……サランは裁縫が好きなのか?」

 せっせと毛糸をより分けるサランに尋ねてみると、ちらと俺を流し見、小さく頷いた。

「……まあ、趣味程度には。シャリー姉様に教わっているのです」

「ああ、なら納得だな」

 シャリーは慣れた手つきで、もう既に鼻歌を歌いながら縫い針を器用に操っていた。製図は頭の中にあるんだろう、すいすいと針を動かしている。

「……私はまだ、姉様みたいにうまくは縫えませんが」

 ぽそりと、付け加えるように言い、サランは再びうつ向いて毛糸を縫い針に通し始めた。その横顔がどことなく寂しそうで。

「……でも、ぬいぐるみ作りを任されるなら、じいさんにもそれなりに期待されてるんじゃないか?」

 そう、励ますつもりで言ったのだが。

「……いいえ。そんなものではありません」

 さっくり否定された。

 恥じらいや謙虚というより、本当に……自分を卑下しているように聞こえた。

 これ以上何か言うのも彼女にとっては酷だろう。軽く相槌を打ち、俺はサランの隣に腰を下ろした。それを見たサランは少し座る位置をずらしたが、避けるつもりはないらしい。とりあえず拒否反応を示されないだけ、よしとしようか。

 サランも俺を気にしないことにしたのか、ふいと顔を背けて縫い針を動かし始めた。俺とサランの間に毛糸玉が転がり、糸を巻き取られるたびにかすかに揺れ動いた。

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