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「これが我が家の郵便受けじゃ」
飯を食し、全員で庭に出る。そういえば、たまにサランが朝郵便受けをチェックする姿は見ていたし、真っ赤な可愛いポストがあるのは目の端に映っていたが……。
「……見事に破壊されているな」
「でしょう?」
胸を寄せ、悩ましげなポーズでリンリンがため息をついた。
確か、馬の頭くらいの大きさの赤い木箱がポストとして使われていたはずだった。小さい屋根が付いていて、小包も入れられるよう、大きめの受け口が付いていた、のだが……。
今、俺たちの足元には赤い木くずのみが散らばっていた。幸い、軸になっていた鉄の棒はそのまま残っているが、棒の上に固定されていたはずのポストは粉微塵に砕かれていた。よくここまで粉砕したな……。
「よっぽど怒ってたってことかなー?」
サランと一緒に、箒とちりとりでせっせと木くずを片付けていたテディが問うたところ、ジジイはしばらく考えた後、肩をすくめてみせた。
「そうかもしれんの。だが、ここまで破壊されたのは初めてじゃ……」
「でもこれって、普通の人間じゃここまで砕けないよな?」
かき集められた木くずは、本当に粉化していた。触ればさらさらと指の間から落ちてしまいそうなくらい、細かな粒になっている。どんな道具をもってしても、ここまで完膚無きほどにはつぶせないだろう。
「そうじゃの。これはきっと、ライバル魔術師の嫌がらせじゃな」
ついでに辺りに散らばっていた手紙を回収し、ジジイはため息をつく。
「やれやれ……わしが優秀すぎるからって、嫉妬する輩が多いんじゃ。それも、こんなチキンなやり方での。もし真っ向から立ち向かってくるなら、こちらにも手があるんじゃが、ここまで陰湿だとどうもできんのう……」
「やはり結界を強めた方がいいのでしょうか」
しんと静かな木立を見据えてシャリーが言う。
「ここ数日、結界は弱めているようですが……やはり、上級魔術師を弾くことはできないでしょう」
「結界とかあるのか?」
俺が問うと、ジジイは肩をすくめ、くるりと残った三人の弟子を振り返り見た。
「シャリーたちは新しい郵便受けを作ってくれんかの。どんな装飾を施しても構わん」
好きに付きっていい、と聞いたからか、三人はぱっと表情を明るくした。
「本当!? じゃあ、とっても可愛いポスト作っちゃいます!」
「なおかつ、実用的なのがいいですね」
「そうですね。では、材料を取ってきましょう」
へえ……シャリーは刺繍が趣味だとは聞いていたが、やっぱり可愛いものを作りたいっていう気持ちは姉妹全員にあるんだな。三人とも、すごい乗り気で家の裏へ駆けていった。そういえば裏には木ぎれみたいなのが積んであったな。あれで新しいポストを作るんだろうか?




