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アガタ国は、フォルセスに近い……というか、連合王国に加入してもおかしくない国だ。だって、首都フォルセスに隣接していて周りの国は全部連合王国加入国。つまり、連合王国内にぽっかり浮島のように独立している小国なんだ。流通経路も面倒なことになるから、いっそのこと加入してくれた方がこっちとしては楽なんだ。別に、首都から何か強制されたり権利剥奪されるわけでもないのにな。
だが、アガタ国はフォルセスの方針が気にくわなかったらしい。さっきも説明した、士官学校制度もそうだ。女兵士用の女性学校も設立されているし、ほぼ男女平等な国風が嫌なんだと。
ま、アガタ領主の言いたいことはさっきテディが言ったことそのまま掘り出せば十分だな。領主の嫁さんも、息子生んでさっさと離婚したらしいし……。
「大変だったな、アガタの領主にそんなこと言われて……」
「そーね。母さんはすぐに死んじゃったし、女兄妹はいないしで、正直自分が女だったことも忘れてたわ」
でも、とテディは立ち上がってのんびり休憩するアマンダに駆け寄り、その鞍から例の長い棒を降ろした。あ、アマンダがほっとした顔してるぞ。
「これがあったから、あたしの毎日は充実してたのよ。ほれ」
テディは手に持った長い物……もとい、布にくるまれた鉄剣……を抜き、ニッと笑った。
「ほれ、ちゃーんと二本持ってきたよ。こっちがあたしのね」
「……まさか、ここで第二ラウンドするつもりだったのか?」
「うむ」
……いや、マイセンに行こうって言った地点で、何となく予感はしてたけど。でも、この棒が鉄剣だったとは……。乗せさせられたアマンダも大儀だったな。
「……本当に特訓が好きなんだな」
「あれ、それは公子様もなんでしょ?」
片方の鉄剣を渡し、テディはきょとんと俺を見上げる。
「リンリン姉様とユイ姉様が言ってたの。公子様は岩石のようなナイスガイになるべく特訓を重ねてるって……」
「……あのな」
なんでナイスガイにならなきゃならないんだ。こいつも案外騙されやすいのか……?
「……ちえっ、なーんだ。だから思ったより弱かったのね」
一言余計だ。
「ま、いいや。体を鍛えて健康でいたいってのは同じだろうし」
よく磨かれた剣をひょいっと持ち、テディは開かれた公園競技場を手で示した。
「……で、どうする? 一試合やってみる?」
「……そうだな。一本取らせてもらおう」
俺だって馬鹿じゃない。テディが筋肉馬鹿と知ったからには、それなりの戦略を立てる脳はある。
テディについて競技場へ向かいながら、俺はいかにしてこの小柄な少年……失礼、少女に勝とうかと、思案を巡らしていた。




