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俺と彼女らの7日間  作者: 瀬尾優梨
3日目 さよなら俺の純情
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「それに、王宮でも、私は決してひとりぼっちじゃなかったから。もうすぐ七十近くなる第一夫人とかはともかく……王妃様の中には好意的な方もいらっしゃったし、兄弟もいい人もいた。ま、この家みたいにアットホーム、とは言えなかったけどね」

 そういうことだったのか……。

 きっと、こっちが引くほどリンリンが強気なのも、明るいのも、昔から……母を守るためだったんだろうな。王宮の隅に押しやられ、冷視線を浴びる母のため……。そして、ここで修行するのも、敬愛する母親のためなんだな……。


「……すまん、俺はお前を見くびっていた」

 椅子の上で頭を下げる。

「一日目からずっと、おまえのことを軽そうで、爆にゅ……じゃなくて、やたら色っぽいとしか思ってなかったけど……そんな事情があったとは」

「いーのよ。そう見えるように振る舞ってた節もあるし」

 ぐるぐる柄杓で液体をかき混ぜながらリンリンは言う。俺は頭を下げているから見えないが……なにやらいい匂いがする。薬ももうすぐ完成だろうか。

「爆乳で結構。ま、このダイナマイトグラマーな体も私の武器であり、お母様から遺伝された大切なパーツですもの。あんたも、この魅力的な肉体にはクラックラでしょ?」

 と言いながらことさら立派な胸をこちらへと押し寄せてくる。くっ、右手には柄杓を持って釜をかき混ぜているから、体をくねらせる形になっている……。

「あ、さてはあんた、胸より尻派? んー、私はお尻にも自信あるけど……うちの姉妹で一番じゃないからぁ……」

「聞いてない」

「ちなみに、お尻の大きさならサランが一番よ。その次が姉様で……」

「……聞いてない」

 俺を差し置いて、姉妹の尻自慢しだすリンリン。

 そんな彼女をよそに、部屋のあちこちからはいろいろな芳香が漂ってきていた。


 シャリーの釜からは、薄紅色の湯気が上がっていて……フルーティーな香りを放っている。いつまでも嗅ぎたくなるような、嫌みじゃない甘さの匂いだ。


 こちら、リンリンの釜はまだ沸騰中だが、覗いてみるとトロリとしたグリーンの液体が煮えたぎっていた。色に準じているのか、若葉のような香りがする。


 ユイは……おっと、もうビンに移しているようだ。蜂蜜みたいな濃い金色の液体がなみなみと注がれている。あまり強烈な匂いはしないが……なんだか甘そうだな。


 で、テディはまだ材料刻み中。そういえばリンリンの話を聞いてる時も、また爆発音がしたような……。


 最後にサラン。こちらも順調らしく、手元のレシピを見ながら、柄杓で液体をかき混ぜている。色は見えないが……湯気は透明だな。特に匂いもしない。


 粘りけのある水溶液をかき混ぜるリンリンに目を戻してみる。今朝はとんでもない起こし方をしやがったこの女だが、薬釜に向かう表情は真剣そのもので、切れ目の目をさらに細めてじっと薬を見つめている。くゆる湯気に前髪があおられ、汗で額に黒髪が張り付いている。


 ……やっぱり、人間は第一印象で決めちゃいけないんだな。


 俺の視線を感じてか、ふっとリンリンもこちらを向く。軽く手を振ってやると、ほおをゆるめて微笑み返してきた。


 うん、やっぱり美人だ。


「なぁに? 私の魅力に負けちゃった?」

「そうとは言ってない」

「なんなら今晩も添い寝したげるわよ?」

「これ以上俺の純情を奪わないでくれ」

「ふーん? いい年して純情なんか持ち合わせてるの? 今朝の反応も初々しかったし……さてはあんた、どうt」

「うっさい」

「やっぱそうなんだー。 うんうん、若いっていいわねぇ」

「ほっといてくれ」


 緩やかなペースで丁々発止を繰り広げる俺たちをよそに、部屋の隅で再び爆発音が轟いた。

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