閑話休題〜麗しの貴公子編〜
皆さんこんにちは。こちら、アーク・ティル・フォードです。
え? いろいろと大丈夫だったのかって?
それはですね……結論から言うと、「ギリギリセーフ」でした。
え? なんで敬語なのかって?
うーん……ちょっとばかし、ねじが外れてしまったようです。我ながら、情けないですね、ハハハ。
まあ、セーフはセーフでしたが、俺の魂は本体を離れ、現在バヌ山脈付近を浮遊中のようです。このままだと大気圏に突入するかもしれません。ああ、恐ろしい。
というわけで、アーク君が我に返るまで、ちょっと生中継を見ていただきましょう。
では、現場のリュート王子に接続しましょう。リュート! よろしくお願いします!
こちら、フォルセス連合王国の首都、フォルセス城。私の名はリュート。リュート・ヴィル・フォーセットが本名だ。
今、私がいる自室にはもちろん、私以外の人間はいないのだが……どうもフォード公国近郊から怪しげな電波を受信したので、私の身の回りのことを説明することにしよう。
近頃私は、とある人物とコンタクトを取ろうと努力している。彼の名はアーク。フォード公国の公子アークだ。
彼とは長い付き合いでね、十代初期の頃、城の士官学校で出会ってからよき友として交流しているのだ。彼は貴族でありながら気さくで明るくて、どこかぶっきらぼうな物言いもするがとてもいい青年なんだ。だから私たちが学校を卒業し、彼が故郷に帰った後もこうしてちょくちょく文通したりしているのだ。
先日、耳寄りな情報を聞いた。アークのいる公国で、なんと古い金鉱が発掘されたのだという。金といえば装飾品や魔道の材料、金貨の材料と用途は幅広い。で、当然ながらその有効な金鉱を持つフォード公国は諸侯の目に留まり、独身で恋人もいないアークには縁談が殺到するようになったのだ。
まあ、学生時代から色恋に疎くて、いい年した現在も決まった相手を持たないアークにも罪はあるのかもしれないがね。ちなみに私はというと、アーク曰く「リア充」である。意味を問うたが、俗な表現らしく教えてくれなかった。
とにかく私にはれっきとした想い人がいて、交際を続けている。私の場合はある意味両想いで、親たる陛下も公認の仲なんだが……アークは災難だよね。恋愛婚じゃなくて見合い婚するよう言われてるんだから。やっぱり……できることなら恋をして、それから結婚に漕ぎ着けるのがよいだろうね。
というわけで私はかわいそうなアークに手紙を送り、励まそうと思っているのだが……。
フォード家の様子がおかしい。
金鉱が発表されたその翌日あたりで既に、数百ある縁談を全てきっぱり断ったのだそうだ。もちろん、理由は隠して。
一体、何があったのだろうか? フォード公爵夫妻の性格を考えるに、そうさっくりとおいしい縁談を全拒否するとは思えないのだが……。
しかも、だ。あれから一切、アーク本人からの連絡が入らないんだ。直接フォード公爵に問い合わせても、「息子は現在取り込み中であるのだよHAHAHA」という短い返事しか返ってこなかった。これ以上、どのように懇願して、あまつさえアークを出すよう命令しても(本当は職権乱用なんてしたくなかったんだが……)、公爵殿は首を縦に振らなかった。アークのことはもちろん、縁談破棄の件も一切、教えてもらえなかった。
突如発見された金鉱。
縁談を全て断ったフォード公爵家。
姿を見せないアーク。
どうやら……私の知らない場所で、物語が大きく揺れ動いているようだ。
アークよ……私には、君の無事を願うことしかできないが、どうか、たくましく生きてくれ……。
あっ、この声は私の愛しい女性の……!
失礼、恋人が来たようなので私はこれで。また会おう、諸君。




