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で、そのリャンシの名産物であるマンジュー。リャンシを「うちの国」と呼んだリンリン。
「おまえ、リャンシの人間だったのか?」
問うと、リンリンは山と積まれたマンジューから一つ手に取って頷く。
「そうよ。私の名前はマ・リンラ=ノアール。この辺じゃあまり聞かない名前でしょ。師匠に呼ばれるまでは、私は故郷にいたわ」
へえ……ジジイは他国の魔術師も受け入れていたんだな。だからリンリンの作る料理はリャンシ風だし、マンジューが出されても不思議じゃないと。
「私、姉様の作るマンジューが好きなの」
横からテディが嬉々として声を上げる。こいつは既に、配られたマンジューをふたつに割って咀嚼していた。
「マンジューはね、分類上お菓子になることが多いんだけど、姉様は中にいろんなものを詰めてくださるから。ほら、これはビーフシチューが入ってるのよ」
と、食いかけのマンジューをこっちへ寄越すテディ。確かに……白い生地の中にビーフシチューらしきものが入っている。マンジューの皮でシチューを包んで作るということだろうか。
「他にも……姉様、今日は何味を作ったの?」
「一番多いのはビーフシチュー。他には……炒り卵やソーセージ、それからドライフルーツも混ぜてみたわ」
おっ、俺のやつを割ってみると、ほどよい半熟加減の炒り卵がとろりと顔を出した。なるほどな、こうやって中身を変えることでマンジューのバリエーションも豊かになって食べる方も飽きないってことだな。
で、味はというと……。
「……甘いな」
「あら、卵に砂糖を入れすぎたかしら?」
「いや、生地の方が」
てっきりパンに近いのかと思ったら、甘さに関してはケーキみたいだ。で、生地自体は味が薄い。
「そうかもしれないわね。小麦粉とコメコを練って、お砂糖を入れただけだから」
コメコ……また聞き慣れない食材が出てきた。どんな食い物なんだろうな。少なくとも、×××の××××よりはまともな材料だとは、思うが。
「……でも、リャンシにはこんな料理もあったんだな。リャンシについて、もっと教えてくれよ」
そう、興味心から言ったんだが。
はっとリンリンは顔色を変え、食べかけのマンジュー(どうやらソーセージ入りのようだ)
を取り落とした。
「何を言っているの! 私とあんたの仲でしょう! 今日一日、たーっぷり私について教えてあげる予定なんだから!」
う。
しまった、リャンシの文化に興味を持つあまり、忘れてた!
俺、こいつとのあらぬ関係を疑われてるんだった!
とたん、再びさっきのように冷たい視線に戻る姉妹たち。くそ……俺の隣でジジイは何食わぬ顔でマンジュー食ってるし! 助ける気ないな、こいつ!
「もちろん、我がリャンシについても。うふふ、私、アーク公子みたいな純情ボーイが好みなのよねぇ」
ううう……このやりとりが今日一日、続くっていうのか?
がっくり肩を落とした俺を見かねて、シャリーが「まあこれでも召し上がりなさい」と言って俺の口にマンジューを詰め込んできても、俺は何も言えなかった。
どうやら、今日は昨日以上に波乱の一日を迎えそうだ。




