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「あんたの目は節穴? ちゃんと着てるでしょ。特製のネグリジェ」
「そんなの着ているうちに入らない!」
要約すると、こうだ。
黒髪の爆発ボイン女……もといマ・リンラは明け方のうちに俺の部屋に忍び込み、すやすや眠る俺の上にのしかかって寝顔を観察していた。
ああ、なるほど。夢に見ていたマンジューはこいつの……。
「………」
「あら、顔真っ赤よ。うふふ、やっぱり公子様は純情だったのねー」
「ち、近付くな! とにかく一枚羽織れ!」
そんなでかいマンジュー……いやいや、胸を寄せられたらさすがに精神が持たない!
というか、こういう状況って普通嬉しいんだよな、そうだよな?
でも……舌なめずりしながら迫るリンリンを見ていると、俺の方がエサになりかねないんだ。まさに、食物連鎖の過程。というかむしろ、ここは俺の節操の危険だろ!
じりじりと寄ってくるリンリンから逃れるようにベッドの奥に後退する俺。リンリンは……くっ、思いっきり楽しそうに笑いながら距離を詰めてきやがる!
「どうしてー? これが私の寝間着よ。あ、ひょっとしてもっと過激なのをご希望だった? ごめんねー、じゃあ次からは用意しておくわー。実はね、紐一枚のもあるから」
「違う!」
とん、と俺の背中が何かに当たった。
くそっ、壁際に追いつめられた!
というか、寝ている男に夜這いするとかどんな神経しているんだ! 分かった、こいつはあれだな、痴女ってやつだな、そうだな!
じりじり、なおも寄ってくるリンリン。
はねつけることも、逃げることもできない俺。
うわあああ、誰か助け……!
ばんっ
「おっはよー! 起きてる、公子さ……」
「テディ姉様、ドアはノックしないと……」
ノックなし遠慮なしに開かれたドア。廊下では、洗濯物を抱えて仁王立ちするテディと、サランが。
彼女らの言葉が途中でぷっつり切れる。そりゃそうだよな、だって狭い部屋に男女が一組。ベッドで何やら怪しげな行動をしているんだから。しかも、女の方に至っては薄布一枚の(ほぼ)下着姿。
にかっと、嫌な笑顔を浮かべるテディに、かあっと赤面するサラン。
「やだぁ、姉様ったら手が早いんだから!」
「ね、姉様……朝からそんな、はしたないですよ……」
違う、それは違うぞ、テディ!
そしてサラン、赤面するのは当然だが、助けてくれよ!
「あ、大丈夫よ。もうちょっとゆっくりしていっていいから。じゃあね、公子様!」
と、意気揚々とテディが去り。
「あ、姉様……! あの…………失礼します」
と、足早にサランも去り。
「あらまぁ……既成事実になっちゃったわねぇ」
俺に迫った体勢のまま、ふうっと艶のあるため息をつくリンリン。
誤解だーーーーーっ!




