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俺と彼女らの7日間  作者: 瀬尾優梨
2日目 王道王道まさに外道
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12

 昼過ぎにタロー復活。やつが覚醒する前にシャリーが担当した昼食があったのだが……内容は割愛させてもらおう。朝の××××と例の糞リンゴのおかげか何か、胃に妙な耐性ができたらしく俺はなんとか、ゲテモノ昼食を食べることができた。

 だって、残そうとしたらシャリーがすっげぇ悲しそうな目でこっちを見てくるんだ! いくら散々な目に遭わされたとはいえ、あんな目で見られたら残すもんも残せなくなるって! これがあいつの策略のうちだと分かってても、拒否できないって!


 そういうわけで地獄の昼食を経て、俺は初めて師弟の魔術授業を参観することになったのだった。

 講義の場所は、当然キッチンでも自室でもない。俺が五人姉妹について向かったのは、廊下を何回か曲がった先……俺が最初に借りたトイレを通り過ぎて……にある、地下室への階段。

 おおお、魔術師の家に地下室って、なんだかすごくそれっぽい! あれだろ、狭い倉庫みたいな場所に魔法陣が描かれていて、蝋燭を立てたりする……。

 だが、俺の予想は外れていた。ま、絵本の中で見た程度の知識だったし外れててもしょうがないんだが。

 地下室は、ただの地下室だった。つまり……魔法陣も何もない、ただのがらんとした部屋だったのだ。 俺の予想で当たっていたのは……狭いってとこくらいか。

 ほぼ正方形に近い部屋で、壁は煤けた黒色。上階の壁はウッディで明るい感じの色だったためか、やけに禍々しく見える。


 俺が最後に入室すると、じいさんが身振りで「ドアを閉めろ」と合図する。俺がその通りにすると、ちらとユイが俺を振り返り見た。

「……師匠。彼を連れてきてもよかったのでしょうか」

 その小さな声に、俺は一瞬、息を止めた。

 俺を見たユイ。その目は……警戒や不審というより……心配の色を濃く宿していた。

 他の面々も、不安げに俺を見つめてくる。

「……そうよね。確かに少し不安かも……」

「ねえ、師匠。あいつは外で待たせた方がよかったんじゃないの?」

「……そうですね。何かあっては遅い話ですし……」

 何かあったら遅いって……何か、起こるのか? 何が起こるんだ?

 入り口で縫い止められたかのように動けない俺を見、タロージジイは痩せた肩をすくめてみせた。

「……まあ、心配なかろう。さすがに貴様が五体バラバラになったら困るのでな、防護呪文はかけておいたからの」


 バ、バラバラ?

 さーっと、体中の血が引くのが分かった。血という血が重力に従って下方に落ちていく感じ。

「……そんなに、危険な魔術をするのか?」

「そうですねぇ……危険と言えば危険です」

 ジジイの代わりに答えたのは、シャリー。

「私たちがこれから学習するのは、転移魔法。この部屋ごと、こことは異なる場所に移動させようというものです」

 転移魔法……?

 あ、それってまさか、今までタローのじいさんの家が「神出鬼没」ってウワサされていた……。

 俺の言葉に、シャリーは頷く。

「師匠はこの転移魔法も軽々と使いこなされます。しかし、私たち弟子の魔術は完全ではなく……思いがけない場所に移動してしまうこともあるのです」

 思いがけない場所……。うっ、脳が「考えるな! 考えたら負けだ!」と指示を送っている……。

 タローはシャリーの説明が終わった頃を見量り、さてと、と腕を組んだ。

「前回までの内容を含めた、ミニテストじゃ。……サラン」

「え……!」

 まさか自分が指名されるとは思っていなかったのだろう、部屋の隅で沈黙していたサランがぎょっと目を見開いている。

 タローはサランに手招きし、懐から丸めた地図を出した。

「そうじゃな……おまえはまだ経験が浅いから……マックリーンの丘はどうじゃ? あそこならイメージしやすいじゃろう?」

 マックリーン……確か、フォルセスの西端にある田園地帯だな。あそこには俺も昔、よく家族でピクニックに行ったっけ。

 サランは青い顔でこっくりうなずく。じいさんに招かれるまま部屋の中央へ移動し……胸に手を当てて目を閉じた。

 さっきシャリーが唱えた呪文。あれとよく似た……でも節は全然違う……呪文を唇に乗せた。

 シャリーが言っていた「風の魔法」は音楽に似ていた。でも、サランが今唱える「転移魔法」はリズミカルで……短い一音節を切れ切れに唱えているようだった。「フェ」や「ハ」に近い音が多いので、発声練習をしているようにも見えた。

 と。

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