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「私が師匠に引き取られたのが九つの頃。当時から私は無意識のうちに魔術を起こしたりしていて、両親もほとほと困っていたそうです」
この話しぶりからして、シャリーの両親は一般人で……きっと、魔術師の兆しを見せる娘にどう接していいのか分からなかったのだろう。
「魔力は、望んで持つのではありませんから。生まれたとき……いえ、お母様のお腹にいるときから大地の祝福を受け、地に宿る魔力を自身の力として譲り受ける力を授かってしまったのです。両親としては、娘には普通の令嬢として……どこかの貴公子に嫁げるよう育てればいいと思っていたようなので、さぞ、残念だったことでしょうね」
口調こそは明るく、気にした様子もないのだが……。
作り笑いを浮かべる唇はわずかに震えていて、くっきりした二重まぶたは伏せられて目元に暗い影を落としていた。
「だから……私は師匠に引き取られて、本当は、嬉しかったのです。知らないおじいさんに付いていくのは不安で、怖かったけれど……師匠のお家には、新しい姉様がいて。正当な魔術を教えてくださる師匠がいて。『私は魔術師として生きていけばいいのだ』と、自分の行く先が照らされたような気持ちでしたの。それからしばらく、実家には帰りませんでした。引き取られたとはいえ、親子の絆が断たれたわけでもありません。ですが……元々私は両親とうまくいっていなかったので。帰っても、幼い妹と語り合うだけにとどめていますわ」
ほうっと息をつき、吹っ切れたかのように微笑むシャリー。
「私の姉様……私より早く師匠に師事していた女性は皆、この家を巣立っていかれました。ある方は異国の諸侯に仕え、ある方はひっそり、ひとり薬屋を営み、またある方は運命の男性と出会って嫁入りしたり……。皆、それぞれの進路を進まれましたの。そして今、私は一番の『姉様』になり、かわいい妹たちと共に生活しているのです」
なるほど。つまりシャリーより前からじいさんに師事していた「姉様」は既に出ていったから、今はシャリーが「長女」になるんだな。
じいさんの弟子たちのシステムがようやく飲み込めてきて、俺は心の中でシャリーに感謝した、が。
「そういえば……昔からじいさんは少女ばかりを集めてで師にしてきたんだよな。男は必要なかったのか?」
世の中、男性魔術師も少なくないはず。というか、魔術師も男女比はほぼ1:1なんじゃないのか。
そう思っての質問だったが、聞いた直後、その予想はついてしまった。
「ええ、だって師匠、女の子が好きですもの。いくら魔術師の卵とはいえ、男の子は引き取らないのがモットーだそうです」
だよね。だよねー!
どうやら野暮な質問をしてしまったようだった。




