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「あまりにおいしすぎて卒倒だなんて……ふふ、アーク殿もかわいい所がありますのね」
エエ、ソウデスネ。ドウモアリガトウゴザイマス。
皆の予想通り、俺はジジイの二の舞となって再びぶっ倒れ、シャリーに介抱されることになった。
ちなみに、残りHPを1まで削られて再起不能となった俺を二階まで運んできてくれたのはテディ。見た目通り力には自身があるらしく、昨夜も彼女が俺を二階へ運んでくれたらしい。
シャリーはユイとサランに調合してもらったという飲み薬を混ぜながら不思議そうな顔をする。
「でも……妙ですね。私、レシピ通りに調理したはずなのですよ。でも、『あっさり風味の海鮮スープ』になるはずが『こってりまったり肉団子』になったのはまずかったと、リンリンから注意されましたの」
それ以前の問題の気もするが……頼む。×××の××××ではどう調理してもブイヤベースにはならないことに気づいてくれ。
俺はシャリーから受け取った薬を飲み、ばったりとベッドに倒れ込んだ。
「……朝から不調だ」
「ですね。でも、今日は一日、私がおそばにいます」
そう言い、優雅にスカートの裾を直して居住まいを正すシャリー。
「私、あなたのお嫁さんになれるよう頑張ります。アーク殿に、好きになってもらいます」
うっ……。男としては、美人のこういうお願いはグッとくるものがあるんだよ。
いくら俺がシャリーを(まだ)恋愛対象として見ていないにしろ、長い睫毛を伏せてしとやかに言われたらそりゃあ、気も緩むって。
というか、本気で俺に選んでほしいんだな……。
「……あー、そうだな。でも、俺はまだシャリーのことも、魔術師のこともよく分かってないし。まずはお互いを知ることから始めるべきかと思うんだ」
俺の言葉にしっかり頷き返すシャリー。
「ええ、もちろんです。ですから私は、アーク殿に魔術師の存在や我々師弟について教えたいと思うのです。もしよろしければ、お話しさせてくださいませ」
願ってもないことだ。いくら不本意ながら承諾した嫁決め論争とはいえ、相手のことを知るのは悪くない。むしろ、今まで魔術師に無縁で、その手の知識が全くなかったんだ。だから後学のためにも、魔術師についての知識を得ておくのは間違いではないだろう。
それに、あの殺人料理を繰り出したとはいえシャリーは五人姉妹の中ではまともな部類に入るんだろう。だから俺の要望も少しは聞き入れてくれるはずだ。
「そうしてくれると助かる。だが……俺に構いっきりでもいいのか? タローのじいさんから教えを請うたりはしないのか?」
てっきり魔術師の弟子は師匠から魔道や薬学を教わるものだと思っていたが。
俺の問いに、シャリーは小首を傾げてみせた。
「ええ、いつもはそうします。でも……私が食事当番をした後は講義はお休みになりますの。だって、師匠が寝込んでますもの」
……やはり食事当番制だけは改善すべきだろう。




