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だが、無慈悲なフォルセス神は俺の願いを聞き届けてくれなかった……いや、神々でさえこの姉妹の暴走を止めることは不可能だったのか……食指が進まない俺を見かねて、半分以上ブイヤベース(仮)を食していたユイがキッと俺を見る。
「アーク殿。先ほどから食事が進んでいないようですが」
そりゃそうだろ。誰が好きこのんでこのブイヤベース(仮)を食うかってんだ。
一食抜きにしてもこの食事は勘弁したかったが……だが、周囲を見てみると全員、料理に手をつけていた。あからさまに嫌そうな顔をしたサランやじいさんでさえ、渋々ながら××××にナイフを入れている。
うっ……その溢れる肉汁がなんとも……いやいや、これ以上解説したらR指定がかかってしまう。まあ、それほどえげつない光景だったってことだ。
だが、ユイは持っていたクリップボード(昨日からずっと、これを持っているようだな)でしつこく俺を突っついてくる。
「しかし、一日の始まりは朝食にあります。朝しっかり食べないと、今日一日体が持ちませんよ」
うん、言いたいことはよく分かるし、かなり正論だとも分かっている。
……その「朝食」に問題があるんだよ! と、叫びたい気持ちをぐっとこらえる、俺。
しばらく俺とユイの不毛なやりとりを観察していたシャリーだったが、ふいにぽんと手を叩いた。
「分かりましたわ。アーク殿は今日一日、私と過ごしますもの。私の手で食事のお手伝いをすれば食べてくださるのですね!」
……はい?
あ、そういえば今日から順番に一人ずつと生活してみるんだっけ。で、長女から順番にって寸法だな。
いや、だからといって食事の手伝いなんて……。
「い、いや、結構だ。シャリーの手を煩わせるなんて……」
「まあ……遠慮なさらなくてもよろしいのに」
と、隣のリンリンと一緒にくすくす笑うシャリー。そのまま、俺の方に体を寄せてナイフを手に取り、俺の皿の上のブイヤベース(仮)にぶすっと刃を突き立てる。
うわあぁぁ! 肉汁が飛んできた! えぐい、これはかなりえぐい!
シャリーはナイフをフォークに持ち替え、小さく切り分けた(といっても俺の握り拳大はある)肉塊に突き立てると、それを俺の口元に運んできた。
「はい、アーク様。あーん」
……状況が状況じゃなかったら、大変幸せな体験なんだけど。
これがさ、場所が俺の家の居間で、フォークにぶっ刺さってるのがイチゴショートケーキとかだったらかなり絵になる光景だったと思うんだ。俺だって、もちろん嬉しい。喜んでぱくつかせてもらうさ。
でも……さぁ?
目の前で小刻みにぶるんぶるんと震える肉塊。
期待の眼差しで見つめるシャリー。
「お熱いねぇ」とばかりに野次を送ってくる次女たち。
哀れみの眼差しをよこしてくる五女。
んで、既にノックアウトされてテーブルに突っ伏しているジジイ。
……俺に、選択肢というものは与えられなかったようだ。
父上、母上。
先立つ不幸をお許しください……!




