表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と彼女らの7日間  作者: 瀬尾優梨
2日目 王道王道まさに外道
20/108

 朝食の席でもやはり、全員揃ってマナーよろしく食事をした。だが。

「……これ、誰が作ったんだ?」

 俺の皿によそわれたのは、毛の生えた赤茶色の塊。少なくともそう見えた。サランがおたまで俺の皿に乗せたとたん、べちゃって音がしたぞ。しかもこれがまた、なかなかデカくて……巨大化した芋虫みたいな形状だった。

「ああ、今日の当番は私です」

 しとやかにシャリーが手を挙げる。長い銀髪を、今日はシニョン風にまとめ上げていてなかなかな美人……って、そうじゃなくて!

「これ、シャリーが作ったのか? まじでか? 食い物か、これ?」

「失礼ですね、当然ではないですか。ちなみにこれはブイヤベースというお料理です」


 俺の記憶が正しければ、ブイヤベースってのは魚介メインのスープだったはずなんだが。これはどう見ても固形物だろ! 液体ですらないだろ! この物体Xのどこが魚介類なんだ!

「何をおっしゃいますか、ほら、きちんとスープも注がれているでしょう」

 シャリーはぷうっとほおを膨らませて抗議する。彼女の主張するスープとは……そう。皿に注がれた時にべちゃりと音がした、わずかな液体のこと。といっても、俺の皿の九割は例の物体Xが占めていて、「汁」に該当する部分はほんの匙一杯分なのだが。


「まあ、姉様。今日のスープはいつになくお上手にできましたのね」

 スプーンを持ったままわなわな震える俺を見ることなく、リンリンが姉を誉めちぎる。

「これは何という食材を使ったのでしょう?」

「それはですね、×××の××××という、大変貴重で高級な食材ですの」


 ……ん? 今、とんでもない放送禁止用語が聞こえたような……。

「まあ! ×××を調理なさったのですね! ××××はオスの×××にひとつしかないので、とても高かったと思いますの」

「ええ、でも少し値切ってもらいましたの」

「さすが姉様! 姉様の美貌に勝てるものなんてないもんね!」

「全くです。では、姉様力作のブイヤベースをいただきましょうか」

 え、食べるの? これ、本当に?

 というか他のやつらは疑問に思わないの? これ、××××なんだよ?


 ちらと、他の面々を伺ってみる。俺の隣のタローじいさんは……おや? はしゃぐ姉妹とは対照的に、なんだかげんなりしているぞ。てっきりジジイもこの珍味のファンなのかと思いきや。

 ジジイが、ゆっくり俺を見る。昨日以上に目が死んでるぞ、じいさん。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「……シャリーはな……弟子の中で……一番料理下手なんじゃ」

 そう、血を吐くような地獄の小声で訴えるタロー。

 いや、これはもう、下手とかいう次元じゃないと思うが。ということは、このジジイもシャリーの料理には難儀していたのか。食事を当番制にしたの、今からでも遅くないから変えた方がいいぞ、じいさん。

そんで、サランはというと……ものすごく複雑そうな顔で皿の中の物体Xを見つめている。四人の姉と違って、まだシャリーの料理に馴染みきることができないんだろうか。

 サランが、俺を見る。そして、見たことを後悔したかのようにふいと顔をそらした。揺れる髪の隙間から見えるほおが、少し赤い気がする。


 だよな。だってこれ、××××だもん。

「では……世界を統べる、万物の神に感謝して今日の食事をいただきましょう」

 シャリーの号令で、フォルセス流の食前の祈りを捧げる俺たち。



 フォルセスの神様。

 どうか、これを食べずに済む方法を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ