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「……とにかく、広間へ場所を変えましょう。お手洗いの前で立ち話なんて下品ですわ」
銀髪の女がそう言うと、残りの三人も「そうね、姉様」「確かに、そうですね」「りょうかーい」と口々に同意の声を上げる。
銀髪女、爆乳女、赤毛の女と先行し、男女が俺の背中をどつく。
「ほら、さっさと歩いた! あんたのことはこの後、じーっくり聞かせてもらうからね!」
と、にんまりと笑う。
……ううっ、俺は一体、何を間違ってこんな女たちに拘束されているんだ……? というかさっきの優しそうな女はどこに行ったんだ……?
女に連行される間、俺は廊下も見てみた。誰かが明かりをつけたらしく、暗かった廊下もはっきりと見えた。
……見ない方が、よかったかもしれない。
本当にカエルの干物があるじゃないか! なんだこれ、異様にでかいぞ!? 一抱えくらいはありそうなカエルがカッピカピに干からびてる……。
しかも……天井から下がっているのは、一見ドライハーブだが……肥大化した紫色タマネギみたいな球体もぶら下がっているような気が……。
……今通りすがったチェストに置いていたのって、まさしく骸骨だよな? しゃれこうべって言うんだろう? 大小様々なしゃれこうべが行儀よく陳列している姿……あまり見たくないな。
で、俺がひねり出した結論は。
「あ、ちなみに。あたしや姉様、魔術師だから」
男女が代返してくれました。
……ですよねー。ですよねー……。
家の形、廊下に並ぶ珍品、そして話す内容……間違いなく、こいつらは噂のみに聞く魔術師の一員だ。
今まで魔術師の家ってものに行ったことがなかったが、考えれば噂に聞いた通りの見てくれだった。
さっきの女が「師匠」って言ってたから、さしずめこいつらはその「師匠」とやらの弟子であり……なおかつ、「姉様」というからには姉妹なのだろう。
……いや、あまりにも似てなさすぎたか。
それはともかく、俺は魔術師の家にお邪魔してしまったってことだな……なんだか、すごく面倒なことになった気がする……。
俺はそのまま、女に連れられて廊下を歩いて回って……香ばしい香りがするドアの前を通り過ぎ……。
「ほれ、さっさと入りなさい」
爆乳女にどつかれ、「広間」らしき所に放り込まれた。
なぜか広間だけはまともで、部屋の中央にガラス製の丸テーブルが据えられ、それを囲むように四十五度扇形のソファが六つ、並んでいる。壁には意匠のよく分からない絵が掛けられ、花瓶には花まで生けられている。ただ、その花が定期的にウネウネしているような気が……うん、見なかったことにしよう。
「とりあえず、座ってくださいな」
銀髪女が丁寧に椅子を勧めてきたので、俺は素直に座っておいた。この女は、まだ大丈夫だろうと本能が告げていた。
「どうすんの? 師匠呼ぶ?」
「私たちが呼ばずとも、もうすぐ帰ってこられるでしょう」
「そうね。この堅物ボーイの扱いを聞いておかないと」
俺の前方では、爆乳女たちがこそこそと相談し合っている。
……普通、美女に囲まれているってのは相当気分のいいことなんだろうけど。今の俺は、そんなこと考える気力もなかった。目線を上げればこれでもかってくらい爆乳が目に飛び込んでくるけど……なあ?
嬉しくなるどころか、だんだん生気を吸われていっているような気さえ、した。