悪役令嬢に転生しましたけど、ヒロインが可愛いすぎるので王子とくっつけて推すことにしました!
私の名前はイリア・グラス。
グラス伯という貴族の令嬢……というのは表向きのものだ。
中身は私こと田中若葉、三十過ぎた派遣社員の推し活女子である。
乙女ゲーの推しキャラのグッズを買うため、派遣先でお局たちにネチネチ毎日嫌味を言われ、泣きそうになりながらも働いていた。
私の心を支えていたのは乙女ゲームと、通勤途中で読むなろう小説だ。
悪役令嬢ものを読んで出勤の痛みを和らげ、仕事中に受けた傷をいやすために帰宅すればすぐに乙女ゲームをプレイしつつ、転生した自分に思いをはせる。
そんな日々が続いたある日のこと。
目覚めると見たこともない、中世ヨーロッパのお城の中の一室のような場所で目を覚ました。
しかも万年コタツではなく、お姫様が寝るような豪華な装飾に、体が沈んで包まれそうになるベッドにいたのだ。
「え、マジで!?」
夢だろうなとは思いつつ、そう叫びながらベッドで飛び跳ねる私。
しばらくして冷静になる。
恥ずかしさのあまり人生終了、リセットボタンを押したい気分になった。
「な、なにをしているのだイリア!? 大丈夫か!?」
どうやら扉が開いたことに気付かなかったらしく、暴れていた私を見て、恐らく父親であろう人物が驚愕していた。
そりゃ驚愕するよなと思いつつ、どうするかと考えた結果
「お父様……私、熱があるみたい……」
友人の佐藤楓が見たら気色悪いと吐き捨てそうな、高貴な女性っぽい感じで言いながら、ベッドに横たわる。
「や、やはりそうか!? 誰か、誰か医者を呼んでくれ! 私の娘が病気だ!」
どうやら本当に父親だったらしく、少し説明口調でそう言いながら部屋を出て行った。
こうして私はその場をやり過ごし、イリアとしての人生をスタートする。
スタートしたは良いけど、世界とかまったくわからない以外に、とてつもなく大きな問題があった。
このイリア・グラスという女性は、なろう小説によくある設定の悪役令嬢だったのだ。
なぜ気づいたのか。
それはイリアについて調べようと部屋を探していて、一通の手紙を発見して読んだからだ。
―何度もやり直したけどもう無理。誰か私に代わって、にっくきマリアを倒し、愛しのデオール王子と結婚してちょうだい!
この一文から始まる手紙は、一瞬呪いの手紙かと思うような代物だった。
便箋十枚にびっしりと、マリアという子に対し自分のしてきたこと、悉く失敗し身投げをするも日付の書かれた今日戻ることが書かれていた。
中身を簡単に訳せば、オタク女子にありがちな同担拒否とか、古参と新規とか、思い出すと自分も頭が痛くなるような、そんな話が書いてあり辟易する。
読み終わった時、元の人物がどうなったのだろかとふと思ったものの、考えるのをやめた。
元の世界でも、誰彼構わず同担拒否をしまくったり他担を貶めた挙句、孤立した人のツイフィを思い出すと、呪われる気がしたからだ。
そう思い手紙を暖炉の火にくべて手を合わせ、成仏するよう祈る。
(悪役令嬢にあこがれていたとはいえ、まさか本当にそのものになると複雑だなぁ。それにマリアって子への嫌がらせの発端が前世界隈すぎるのよね)
ヒロインにあこがれておけばよかったな、とは思いつつも、こうなった以上は仕方がない。
やるべきことはただ一つ。
『マリアとデオールの仲を取り持ち、自由を謳歌する方針に変更する』
である。
夢かもしれないが、夢じゃないとしたら悪役令嬢の多くの末路である、最終的には自分も人生さよなら状態なのは間違いない。
わざわざ派遣先から解放されたのに、転生してお局たちと同じような行為させられる上、死のバッドエンド直行なんて、そんな地獄はお断りだ。
なのでここは手紙に書かれていた元の人の要求は無視し、マリアと王子の力を借りて自由に生きることにした。
オタク趣味が出来ないのも困るので、なんだったらオタク文化を私が始めてもいい。
王子が王になれば、マリアとの仲を取り持ったことを引き合いに出し、国主導でオタク文化を推し進める。
税金でオタ活をするのは気が引けるが仕方がない。
オタク文化がないのがいけないのだよ……。
「フフフ……私はオタクの女王になる!」
「え?」
嫌なことを思い出してつい本音を叫んでしまった。
私は現在、予定表にあった、デオール王子と初めて会うパーティに参加中だったのだ。
そして隣にはイリアがいじめていた、にっくきマリアがいる。
栗毛で少し癖毛の童顔。
大きな赤いリボンのポニーテールが、余計幼く見せていた。
(こんな自分より年下の可愛らしい子をいじめようとか、私にはその心理が理解できないわ。可愛いもんこの子)
嫌味さもなく、天真爛漫そうで、こういうパーティとかがあまり好きではないように見える。
なんというか、守ってあげたくなるタイプだなと思ってしまった。
某女性アイドルグループを推している友人から、こっちは平和よって聞いたけど、確かにこういう推しなら争う必要がないのかもしれない。
転生した世界にアニメはないだろうし、そういう意味ではそっち系でオタク文化を広げる、というのもありねと考える。
となるとやはり観劇とかオペラなのかな、とか思った瞬間、視線を感じてみると、マリアはその大きな目で私を見ていた。
「あ、失礼。マリア様はご機嫌いかがでしょうか」
「あ、えっと、私はいつも通りです。イリア様は?」
「すこぶる元気ですわ、先ほどみたいに叫んでしまうくらいには」
少しおどけて返したところ、マリアは手を当ててくすくすと笑ってくれる。
それを見て尊さを感じてしまい、誤魔化すように口に手を当て微笑む。
「あの、私、こういうところ初めてで落ち着かなくて……。お父様にそろそろ大人のレディとしての振舞いを学びなさいって言われて……。イリア様が話してくださって助かりました」
笑いが収まると視線を落とし、指先を合わせて早口で言うマリアを見て
(え、何この子可愛すぎない?)
とドキドキしてしまい
「わ、私もあまり得意ではないのですよ!」
そう誤魔化すように懸命に返したところ
「ほ、本当ですか! 同じような気持ちの人がいて嬉しい!」
マリアはさらにご機嫌になり、向日葵のような笑顔を私に向けながら手を握ってくる。
(な、なにこの子、とんでもない愛されキャラなのでは!? 推しかけてしまいそうになってる! 落ち着け私!)
目的を忘れてはいけない。
彼女と王子をくっつけて、この世界におけるオタク文化を開拓する。
ここを間違えると、愛憎劇に巻き込まれ、別の呪いの手紙をしたためる羽目になる気がした。
「お嬢様方、宜しければお相手願えますか?」
「げっ」
パーティをすっかり忘れ、マリアとの会話に集中しているところに、なんと噂の王子が現れる。
なんでここで来るのかわからず、つい前世のような声を出してしまう。
「げ?」
「失礼いたしましたデオール王太子殿下。ぜひ私の隣にいるマリア様をお願いいたします。まだ緊張しているようですので、お手柔らかに」
「え!?」
なんとか取り繕いつつ、マリアを勧めた。
彼女は驚いて私を見たが、ウインクしてみせながらマリアの背中を軽く押す。
「お相手していただいて宜しいですか? マリア様」
「こ、こちらこそよろしくお願い致します、王太子殿下……」
二人は皆の真ん中へ移動し踊り始める。
パーティという場が苦手というだけあって、彼女は踊りがうまくない。
それでも懸命に踊ろうとする姿に、デオール王子も好感触だったようで、彼女を上手くエスコートしてくれた。
(……え、めっちゃ尊くない? こういう時、私に絵を描く才能があれば描いて残したいくらい尊い!)
二人の姿を見て、とても胸が躍るのを感じる。
これはもう推すしかない。
初めて推しが画面の向こうから私に微笑みかけてくれた時のような、そんな感覚を覚え、何かしたくてしょうがなくなってきた。
何をしたらこの気持ちを昇華できるか、考えているうちに拍手が起こる。
見れば二人の踊りが終わり、マリアがこちらに帰ってきた。
「き、緊張しました」
「とても良かったですわよ」
「え、全然ですよ。私踊り下手ですし」
「下手とか上手いとか私にはわかりませんけど、見ていてとてもお二人が良い雰囲気だった、ということだけは分かりますわ。危うく尊さで逝きかけましたもの」
「尊さで逝きかける?」
「あ、ごめんなさいこちらの話です。とにかくそれだけ良かった、ということです私にとっては。周りの皆さんも拍手してくれてましたし」
「あら、あんな田舎踊りの何が良かったのかしら」
凄いタイミング、しかも定番のようなセリフ言いながら割って入ってくるな、と半ば感激しつつ視線を向けると、イリアよりも意地の悪そうな顔をした女性と、その取り巻きが現れる。
どうしたものかと思いつつ、マリアに対応させるのは不味いと考え、ヘイトを買うことにした。
「どなたか存じ上げませんが、名も名乗らずに批判するなんて、お行儀が悪いのではなくて?」
「ふん、田舎者に名乗る名前などなくてよ」
「では名無しの権兵衛さん、あなたの踊りはさぞかし綺麗なのでしょうね」
「ゴンベエってなんですの?」
祖父母に育てられた中身が漏れ出てしまい、しまったと思うも、マリアだけでなく相手の取り巻きまで笑い始める。
すぐさま意地悪そうな顔の女性は取り巻きをにらみつけ、取り巻きは笑うのをやめた。
睨んで黙らせる当たり、どこかのお偉いさんの令嬢に思える。
前のイリアの置手紙から、自分だけが悪役令嬢かと思ったが、まだいたのかとげんなりした。
「妙な名前で呼ばないでくださる? 顔やドレスだけでなく中身も品性が無いのね」
「他人に名乗らないほうがお行儀が悪くない?」
「チッ……良いでしょう名乗ってあげますわ。私はサラ。この国の大臣であるマグローバー家の者ですわ」
「へー」
「へー、ってなんですの!? 失礼な! 本来であればあなたたちのような下賤な」
「サラ様、出来れば踊りを、私に踊りながら教えて頂けませんか?」
「はぁ?」
「だって凄いんでしょう? あなたの踊りは。もしかしてそうでもないのかしら?」
「……良いでしょうその挑発に乗ってあげるわ」
サラはそう言って私に手招きする。
女性と踊る趣味なんて私にもないけど、ここで妙に絡まれ続けてマリアが標的にされるのは不味い。
適当に誤魔化してこの場を切り抜けるため、彼女の手を取り踊り始めた。
(元のイリアの練習のおかげでなんとか踊れてるわ。それにしてもこの子も上手いわね)
先ほどと違い、眉間にしわも寄せず上から目線でもないサラを見て、この子も悪くないなと思い始める。
(……悪くないなってなんだ?)
そう自分の感情に迷いつつ、一曲踊り終えると手を離し向かい合って一礼した。
「どうです? これが都会の踊りですわ」
「え、サラ様って普通に凄いですね。踊りが上手で。驚きましたわ」
「本当に! サラ様って凄いですね!」
「え!? あ、ま、まぁそんなこともありますけど……。これでも大臣の娘ですし?」
「大臣の娘とか知りませんけど、純粋にあなたの踊りに感動しましたわ。私の名前はイリア、イリア・グラス。こちらはマリア様です。先ほどはそうでもない、なんて言って申し訳ありません」
「ご、ごめんなさい」
「は!? わ、分かってくれれば良いんですのよ! し、失礼!」
「サラ様!」
踊りの凄さを認め、先ほどの言葉を謝罪して頭を下げると、彼女は嫌味も言わずに去ってしまった。
よくわからないなと思いつつ、マリアの横に戻りパーティを見る。
(まだ今の環境がなれないから、ここで余計な敵を増やさなくてよかった。とにかく王子とマリアをくっつけるため、早く知識を増やさないと)
「イリア様、ありがとうございます。私の代わりにサラ様とお話ししてくれて」
マリアは少しうつむきながら、申し訳なさそうに言う。
私が勝手にしたことなので、恩に着る必要はない。
だがそんなことを言っても、彼女は気に病むだけだろう。
ここは気分を変えるために、移動した方が良いと思った。
「問題ありませんわ。それより何か飲み物をいただきに行きましょう」
「はい!」
そう言ってマリアを連れ立って、会場の壁近くにあるドリンクのおいてある場所へ移動した。
こういうパーティはおそらく社交場なので、他の貴族とかと交流するべきなのだろうけど、私にはそれに関連する知識がない。
失礼なことをして敵を作るわけにもいかない。
ここは様子見をしつつ、後に生かそうと考えながらグラスに口をつける。
「あれ、これお酒?」
「え?」
踊って喉が渇いていたことから、確かめもせず口に含んでしまった。
一口位なら大丈夫かと思い、マリアにもやめるよう言い、トレイを持った男性にジュースはどれか尋ねる。
別のテーブルにあるというので、移動しようとしたところ、マリアが寄りかかってきた。
「マリア様、大丈夫?」
「は、はい。でも少し気分が悪くて」
うかつだった。
こんなところに来たことがないのだから、もう少し警戒すべきだった。
自分に怒りを覚えつつも、彼女を抱えどこかに座れるところがないかと探す。
「何をしてるの?」
「サラ! どこかに座れるところはない!?」
周りもざわつき始めたところでサラたちが現れ、藁にもすがる思いで彼女に訊ねた。
「え、あ、外にあるけど」
「案内して! マリアが間違えてお酒を飲んで気分が悪いみたいなの」
「わ、分かったわ!」
「大丈夫ですか?」
サラ以外は声をかけてこないのに、遠巻きにひそひそする人たちに苛立っていると、男性の声がする。
「大丈夫じゃないわ! 手を貸してくださる!?」
「喜んで」
「え」
見ればそれは王子だった。
王子にあんな言葉遣いをしたのかと血の気が引く。
やらかした、と思いながらも、今はマリアの介抱が先だと考え彼女に肩を貸す。
「イリア、こっちよ!」
「サラありがとう!」
「イリア嬢、離れてもらえますか? 私が運んだ方が早いし安全だ」
「も、申し訳ありません王太子殿下」
彼の言うことは正しい。
申し訳ないなと思いつつマリアから離れ、近くの人に水はどれか聞いて教えてもらい、それを持って王子たちの後を追って部屋を出る。
王子がマリアを外のソファに寝かせてくれていた。
「王太子殿下、ありがとうございます」
「当然のことをしたまでです。それにこちらとしても、お酒が苦手な方のために、分けておかなかった不備があります。どうかお許しを」
生真面目に頭を下げる王子を見て、慌ててこちらも頭を下げる。
(さすが元イリアの中身があこがれただけはある、見た目だけじゃなく中身も紳士だわ)
感心しつつ、これからどうするか考えた。
「とりあえず皆さんにご迷惑を掛けましたし、これで私たちは御暇させていただきます」
「わかりました。では馬車の手配を」
「お願いいたします……私の家の者がどこかにいると思うので」
「私の家の馬車でよければすぐに使えますわ」
サラを見ると彼女の横にはハットを被った、白髭の男性が立っている。
恐らく馭者だろうと考え、なら借りようと考えた。
「では馬車だけお借りしてもいい? マリアを家まで連れて行くから」
「あなたの家もマリア様の家もここから遠いから、私のお家にいらっしゃいな」
「駄目よ。パーティって社交の場でしょう? サラにとって大事なことじゃない。馬車を貸してくれるだけで十分よ」
そう、この場は家と家との付き合いの場でもある。
大臣の娘なら、必要な付き合いがあるはずだ。
私のミスで彼女に迷惑を、これ以上はかけられない。
「あなたも退席するのでしょう?」
「私は大した家の人間じゃないから良いのよ。それに今日は騒がせちゃったから、出た方が皆さん落ち着くでしょうしね……さあマリア、お水よ。ゆっくり飲んでちょうだい」
なんとか水を飲んでくれ、ほっとしつつ少し待ってから会場を出ることにした。
「さあ行きましょう」
「サラ……」
「今は言い争っている場合じゃないでしょう?」
「ありがとう」
「イリア嬢、彼女は私が抱えていきます。サラ嬢、馬車まで先導してください」
「はい、デオール王太子殿下」
「王太子殿下、お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
「いえ、気にしないでください。友達思いのあなたのお役に立てるなら、お安い御用です」
王子はマリアを抱えながら笑顔をこちらに向け、そう言った。
(デオール王子が人気なのもわかるわね。こうサラッと助けて何でもないと笑顔で言えるなんて、私の元の推しと同じレベルの良い男だわ)
心の中で感心しつつ頭を下げ、皆で馬車に移動しサラの家へ向かうことにする。
「では王太子殿下、今日はお騒がせしたうえに、ご無礼の数々お許しください。どうか小さな家の礼儀知らずな娘のしたことと、笑ってお忘れになっていただければ幸いですわ」
「……あなたが今日なさったことは覚えておきます。ではお気をつけて」
少し間があったし言葉に引っ掛かることはあるものの、気のせいだと考え一礼し、サラの家の馬車に乗り込みその場を後にした。
彼女の家はさすが大臣の家という感じで広く大きかった。
父親が出てきてどうしたのかと問われたので、私が前に出て一礼し自己紹介をして、そのあとで事情を説明した。
「そのような事情があって、サラ様のお言葉に甘えさせていただきました。大臣閣下、お邪魔ではないでしょうか」
「良いとも。彼女が回復するまで滞在されよ」
「ありがとうございます。サラ様はパーティに残るべきだと進言したのですが、見ず知らずの私や友人を放っておけないと、一緒に来てくださったのです。どうか責めないで頂ければ幸いです。王太子殿下も事情をご存じでいらっしゃいます」
「そ、そうか! サラ、でかしたぞ!」
大臣の娘ということで、サラがパーティの途中で抜け出したことに関して、いろいろ大変だろうと考え、差し出がましいかもしれないがフォローしておいた。
父親である大臣は喜んで娘を抱きしめる。
少なくとも私の出来る範囲で、なんとかこれで誰もマイナスにならず、終えられそうでほっとする。
マリアを寝かせた後、彼女の回復を待っていたが、サラから泊っていくよう勧められた。
元の世界でも旅行が苦手で、自宅という城から出たくない派の自分としては、帰りたいところだが、マリアを置いては帰れないのでお言葉に甘えることにする。
夜は皆で一つの部屋で寝ることになったが、サラや取り巻きをしていた令嬢たちと、この国のことなどを話しながら盛り上がった。
中でも興味深かったのが、この国では演劇が盛んであり、大劇場以外にも町や村の劇団もあるらしい。
彼女たちはそれぞれに推しがいるらしく、その話をとても興味深く聞かせてもらった。
(これは推しグッズとか作るべきなのでは? オタク文化の下地があるとか最高じゃない!)
「イリア、あなたと会えてよかったわ。今度は劇場へ観劇にいきましょう」
「喜んで。あなたの推しを見せてもらうわ」
翌朝帰る時には、サラたちと熱い握手を交わして別れることになる。
まさかあのパーティでこんなことになるとは思わず、良いこともあるものだと感激した。
「イリア様、お手数をおかけして申し訳ありませんでした」
マリアも翌朝には回復し、そう謝罪されたがあなたのせいではないと伝える。
実際私の不注意だし、ここでへこまれてパーティに出たくなくなるのは不味い。
オタク文化の下地を見つけたからには、彼女には王子と良い仲になってもらわなければならないのだ。
「ありがとうございます。パーティに出る前には、こんなに素敵な方と知り合えるとは思ってもみませんでした」
「素敵ではないわ。あと私のことはイリアと呼んでちょうだい」
「……ありがとうイリア。私のこともマリアと呼んでください」
「わかったわマリア。これからよろしくね」
「はい!」
固い握手を交わして私たちは別れた。
悪役令嬢という地獄へ舗装された道を外れ、オタクの女王という輝かしい未来へ続く獣道を切り開く。
そう胸を躍らせつつ我が家に帰る。
「イリア大変だ!」
「お父様おはようございます。家に帰れず申し訳ございませんでした」
「そ、そんなことはどうでもいい! 王子からお前宛にお礼といって花を送ってきたぞ! どういうことだ!」
「はぁ!?」
某兎のような声をあげてしまい、父も私も凍り付いたように止まった。
何やら嫌な予感はするものの、まだ何もかも始まったばかりだ。
絶対にマリアと王子をくっつけるぞと気合を入れ、花のことは忘れて自室に戻り二度寝をすることにする。
初めて異世界恋愛でコメディを書いてみました。
もし多くの皆様に読んでいただければ、推し活の話なども書いてみたいと思っています。
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読んでくださりありがとうございました。




