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善意という押しつけは だいたい百貨店の紙袋で来る~入院時の話 ~超個人的意見

作者: 時司 龍
掲載日:2026/05/10

 私が好きな芸能人トップ5に入る、とある女装タレントさんが、テレビで入院中の話をしていたという記事を見た。

 それを見ながら、妙に納得してしまった。


 ああ、これ。

 拙作『お返しはいりませんから ~時司の愚痴日誌』の、家族葬に押しかけて行った人の入院版だ。


 そう思ったので、書いておく。



 入院中というのは、思っている以上に人に会いたくない状態になる。

 普段きっちり化粧している人でも、当然すっぴんだ。髪はぼさぼさ。顔色は悪い。点滴一本ぶら下がるだけで、人は驚くほど草臥れた感じが出る。


 しかもパジャマというのは、年齢と性別を容赦なく曖昧にする。

 鏡を見るたびに思う。

「・・・誰?」 と。

 年齢というものは残酷で、化粧と気力が消えると、一気にただの中高年になる。おじさんなのか、おばさんなのか、自分でも曖昧になる瞬間さえある。



 そこへ来るのである。

 お見舞いに来てあげたよという顔をした知り合いが。

 正直、来ないでほしい。


 家族。

 本当に身内認定している人。

 この姿を見せても平気な人。

 足りないものを頼める人。

 それだけで十分だ。


 こちらは必要な連絡だけする。

 それ以上は、静かに放っておいてほしい。

 だってこちらは、ただ生きているだけで精一杯なのだ。

 シャワーに入っただけで体力ゲージが赤になる世界で生きている。



 なのに現れる。

 善意という名の社交イベントが。

「やだ~、大丈夫? 顔色すごいよ?」

 病人だからである。

 逆にツヤツヤしていたら怖い。


 更に続く。

「これ、日持ちするやつだから~」

 百貨店の紙袋。

 丁寧な包装。

 病人のベッド脇に置かれる、謎の焼き菓子セット。


「入院中って暇でしょ? 甘いものあると気分違うかなって」

 こちらは絶賛、病院食管理中である。

 塩分も糖分も制限され、昨日ようやくゼリーが解禁された。

 なのに差し出される、バターの暴力。


 本音を言えば、

「食べられません」

 で終わる話なのだが、そう言うと空気が微妙になる。

 だから患者は反射的に笑うしかない。

「ありがとうございます~。わあ、美味しそう」


 演技である。

 かなり高度な接客業である。時給幾ら貰えるレベルかなと思ってしまう。


 本音を言えば、美味しそうより先に、荷物が増えたな・・・が来ている。頼んだものを持ってきてもらった時に、持って行って貰えるかな・・・である。以前、友人が見舞い品の中で一番ありがたかったのは、国産果物の高級缶詰だったと言っていたと記憶している。

 そんな気の利いたものを持ってくる知り合いは残念ながらいない。


 しかも見舞客は、だいたい悪気がない。

 むしろ満足気ですらある。

「私、こういう時ちゃんと気が回るタイプだから」

 お見舞いに来てあげた優しい私みたいな顔をして帰っていく。


 残されるのは、疲労感と焼き菓子である。


 病人に必要なのは、社交ではない。

 休息だ。


 そもそも入院中というのは、普通に人と喋るだけでも消耗する。対応するだけで気を遣う。

 笑顔を作る。

 話を聞く。

 来てくれて嬉しいですを演出しなければならない。


 対応するだけで、本気で疲れる。


 しかも厄介なのは、こういう見舞客ほど、いい事をしたと思って帰る点である。

 患者がぐったりしているのを見ても、やっぱり弱ってる時って人恋しいものね等と解釈する。


 違う。


 オマエへの接客で体力ゲージが削られたのである。入院中というのは、ただ生きているだけで体力ゲージが減っていく期間なのである。

 そこへ他人との会話イベントを強制挿入されると、地味に削られる。


 だから、本当に気遣うなら、電話ですらなく、メールくらいで丁度いい。

「退院して元気になったら連絡ください」

「落ち着いたら、ご飯でも行きましょう」


 そのくらいの距離感が、一番ありがたい。


 返事を急かさない。

 気力を要求しない。

 優しさを受け取る体力まで押しつけない。


 多分、本当に気が利く人というのは、「今は会わない」を選べる人なのだと思う。



読んでくださってありがとうございます(*_ _)

ポイントを入れてもらえると、嬉しいです。


https://ncode.syosetu.com/n6549lx/ 『お返しはいりませんから ~時司の愚痴日誌』

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― 新着の感想 ―
 時司 龍さん、こんにちは。 「善意という押しつけは だいたい百貨店の紙袋で来る~入院時の話 ~超個人的意見」拝読致しました。  テレビで見た、タレントさん入院話。  自分でも書いたなぁ。  入院…
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