絶望の追加注文と聖女の登場
「協力しろ? 我々魔族が、人間ごときに命令されるとでも思ったか、狂人め!」
魔族の斥候隊長が、震えながらも虚勢を張った。彼の背後にいた他の魔族たちも、警戒しながら鎌のような武器を構える。彼らが放つ殺意や恐怖の感情が、俺のチート『絶望の収穫』をさらに加速させていく。
「おや? そんな顔をして『殺意』なんて、ずいぶん可愛い抵抗だな」
俺はニコリと笑うと、瞬時に隊長の前に移動した。
速すぎて、魔族たちは反応できない。
「いいか? 俺が望んでるのは、お前らが『死ぬ』ことじゃない。『生きて』、そして『自分たちの存在意義そのもの』を否定され続けることだ」
俺は隊長の額に指を押し当てた。
隊長の体がビクッと硬直する。その眼窩の奥で、彼の過去の記憶が走馬灯のように流れ始めた。
「君は、魔族として誇りを持って生きてきたんだろう? 人間を食い物にしたり、街を破壊したり、それが君の『存在意義』だったわけだ」
「やめろッ! 俺の頭に、何を……!」
隊長が苦悶の声を上げる。
だが、俺は構わず囁き続けた。
「だがな。俺がいる限り、お前らはもう、人間を『効率的に絶望させる』ことはできない。なぜなら、俺の方がお前らより何十倍も、何百倍も『人間を絶望させるのが上手い』からだ。お前らの破壊なんて、所詮『物理的な暴力』だろ? 俺は『精神的な暴力』で、法律や社会システムを使い、もっと深く、もっと長く、人間を絶望させ続けるんだ」
隊長の脳裏に、彼がこれまで行ってきた「破壊」や「殺戮」が、まるで子供の砂遊びのように陳腐なものとして映し出されていく。
俺が民衆に行った「9割徴税」や「家族崩壊」の光景が、隊長の誇り高い魔族としてのアイデンティティを根底から揺さぶる。奴らは生きてる。ああ、しかし絶望の中でだ。解放されたくても、逃れたくても、何もできない。できるのは、絶望を感じ続ける事だけだ。
「く、そ…そんな…俺たちは…俺たちは一体……」
「そう。お前らはもう、『この世界に必要ない』んだ。魔王様だって、これだけ人間が自滅していくなら、わざわざ兵を出す必要もない。お前らの『魔族としての存在意義』、完全に消滅だ。おめでとう、お前らは『絶望の無職』だ」
隊長の体から、黒いエネルギーがまるで腐敗したオーラのように噴き出し、俺の元へ吸い上げられた。
彼はその場でガクンと膝を折り、虚ろな目で宙を見つめ始めた。死んではいないが、彼の瞳には「誇り」も「憎悪」も、そして「魔族としてのアイデンティティ」すらも、完全に消え失せていた。




