幸福への重税と、魔王軍の困惑
大人の事情でカットされた城での神聖な儀式、合法的乱行を終えた俺は、賢者共を吸ったせいか、今になって賢者のような悟りが湧いてきたようだ。ああ、だが、姫やメイド達の純潔のように気のせいだったようだ。すぐに過ぎ去ってしまった。彼女達の心境を想像するだけで、気力がギンギンと湧いてくる。
城の外に出ると、抜けるような青空と、活気に満ちた市場の喧騒が俺を迎えた。
焼きたてのパンの匂い、無邪気に走り回る子供たち、そして愛を誓い合う恋人たち。
「ハッハッハッハ(満面の笑み)……アーア(真顔) 不快だな。吐き気がするほど平和じゃないか」
俺は城のバルコニーから、広場の中心に設置された「勇者降臨」を祝うための演台に飛び降りた。
突然の主役の登場に、民衆は一瞬静まり返り、次の瞬間には割れんばかりの歓声が上がった。
「勇者様だ!」「我らの救世主が来てくれたぞ!」「魔王を倒して、平和を取り戻してください!」
「ああ、静かに。皆の熱意は伝わったよ。だから、俺も全力で応えることにした」
俺は『絶望の収穫』を広域展開しつつ、魔法で声を増幅させた。
「魔王を倒すには金がいる。そして、勇者である俺を維持するにも、多大なコストがかかる。わかるよな? だから……本日この瞬間より、『勇者維持特別税』を施行する。税率は、全財産の9割だ。即時納入できない家庭からは、代わりに『労働力』……つまり、その命を担保としていただく」
歓声が、凍りついたような沈黙に変わる。
「……え? 冗談、ですよね? 9割なんて……」
「勇者様、私たちはもう食べるものも……」
「冗談? 俺がそんなパッとしない人生を送ってきたように見えるか? これは法だ。王公認の、絶対的なルールだ」
俺は指をパチンと鳴らした。
すると、城から引き連れてきた「廃人騎士」たちが、機械的な動きで民衆の家々になだれ込み、家財道具や金を容赦なく運び出し始めた。
「待って! それは冬を越すための……!」
「お母さん! 怖いよぉ!」
泣き叫び、絶望のどん底に叩き落とされる家族たち。その阿鼻叫喚が、俺の肌を粟立たせる。ああ、この高揚感。素晴らしい〜、素晴らしい〜♪
『絶望の収穫』が急速にエネルギーを蓄積していく。前世で満員電車に揺られ、逃亡生活を余儀なくされ、理不尽に怒鳴られても、目立たないようやり返せなかったあの虚無感の日々が、他人の悲鳴によって上書きされていく。




