城の「お飾り」と「召使い」の、楽しい使い道
「王様、ごめんね。まだ絶叫する体力があったか」
俺は玉座の間で、いまだに泡を吹いて震えている王を一瞥した。彼の瞳はすでに死んだ魚のようだ。おそらく、もう自分が築き上げた世界が、自分のものではないことを理解し始めているのだろう。だが、それだけでは足りない。俺のチートが完全に満腹になるには、もっと「上質な絶望」が必要だ。
ちょうどその時だった。玉座の間へと続く別の扉が、上品な音を立てて開いた。
「お父様! 大丈夫ですか!? 私、嫌な予感がして……!」
入ってきたのは、花のように可憐な少女だった。豪華なドレスを身にまとい、顔立ちは整っている。まさしく「お姫様」といった風情だ。その背後には、数人の若く美しいメイドたちが控えている。彼女たちの顔には、不安と恐怖が浮かんでいた。どれも旨そうで、いい鳴き声を聞かせてくれそうだ。
「おお、姫よ! 逃げろ! こいつは化け物だ! 魔王よりも恐ろしい狂人だ!」
王が、死にかけの虫のような声で叫んだ。その言葉を聞いた姫は、怯えたように俺を見た。
「化け物……? あなた様が、あの勇者様なのですか? なんだか、うわさに聞いていたお姿と少し……」
姫の純粋な困惑の表情に、俺の胸は高鳴った。
これだ。この「救世主」への期待と、目の前の「現実」とのギャップが生む絶望こそが、俺にとっての極上スイーツだ。
「ああ、そうだよ。俺が勇者だ。で、君がお姫様? 可愛いね〜」
俺は優しく微笑みかけ、姫の頬に手を伸ばした。姫は一瞬ビクッと体を震わせたが、それでも「勇者様」という建前があるためか、逃げ出さない。そのわずかな「希望」が、一層俺を滾らせる。あぁ、白く美しい肌に、この若さ特有の弾力。こいつが泣き叫ぶ様を、早くみたい。だがダメだ。せっかくのスイーツを飲み込んでは。じっくりと、味わわなければ。
「あの、勇者様? お父様の様子が少しおかしいのですが、何か…」
「ああ、少し『不摂生が過ぎた』だけだよ。それより姫、君はこれから、もっと大切な仕事があるんだ」
「大切な仕事、ですか?」
姫が首を傾げる。その無垢な仕草に、俺の脳内では既に「完璧な絶望ルート」のシミュレーションが完了していた。
「うん。この国は今、魔王の脅威に晒されている。それを救うために、俺という勇者が召喚された。だが、俺だけじゃ足りないんだ」
俺は周囲に控えるメイドたちにも視線を向けた。彼女たちは互いに顔を見合わせ、不安げにしている。
「そこで、だ。君たちのような『国の象徴』であり、『美』の結晶である存在が、この国の民に『希望』を与える必要がある。そうだろ?」




