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「ふぅ……ごちそうさま。やっぱり、必死に積み上げた努力が、一瞬で無価値になる瞬間の絶望は、コクがあって最高だ」
足元に転がる、もはや「高級なゴミ」と化した賢者たちの死骸を軽く蹴飛ばし、俺は玉座の間へと続く大扉を開けた。
重厚な扉の先には、豪華絢爛な空間が広がっていた。そして、そこに待ち構えていたのは、煌びやかな鎧に身を包んだ近衛騎士たちと、高価そうな椅子にふんぞり返った「王」とかいう中年のデブだ。
「おお、勇者よ! 召喚は成功したようだな! さあ、我が前に跪き、忠誠を誓……」
王が言いかけた言葉は、俺の顔を見て止まった。
そりゃあそうだろう。やってきた「救世主」は返り血(賢者のなれの果て)を浴び、親友でも見つけたかのような、これ以上なく不気味な満面の笑みを浮かべているんだから。
「……賢者たちはどうした? なぜ貴様一人なのだ?」
「ああ、あのジジイたち? 『勇者召喚』っていう大仕事をやり遂げた満足感の中で死ぬのが一番幸せだろうと思って、効率よく処理しておいたよ。 感謝してほしいくらいだ」
俺の言葉に、静まり返る玉座の間。
次の瞬間、騎士たちが一斉に剣を抜いた。
「き、貴様ッ! 何を血迷ったことを! 出会え! この狂人を捕らえよ!」
王が叫ぶ。いいね、その「信じていたシステムが崩壊していく音」俺のチート『絶望の収穫』が、部屋中に満ち始めた上質なスパイスを感知して、指先までギンギンと熱くさせる。
「なあ、王様。お前、さっき『忠誠を誓え』って言ったよな?」
俺は一歩、踏み出した。
「前世の俺はさ、お前みたいなデブな総監のせいで、苦汁を飲ませ続けられた。だから、今世では決めてたんだよ。俺に『頭を下げろ』って言う奴の頭は、物理的に下げるか、精神的に叩き割るかってね。」
「何を訳の分からないことを……っ、やれ! 殺せ!」
騎士たちが一斉に突き出してきた槍や剣。
だが、それらは俺に届く直前、まるでスローモーションのように停止した。
「……あ、あれ? 動かない……!?」
「腕が……石のように重い……っ!」
「残念。この部屋、もう俺の『絶望のテリトリー』なんだよね。お前らが『殺されるかもしれない』って一瞬でも思った瞬間に、その恐怖心は全部俺が管理することになってるんだ」
俺は立ち止まったまま、騎士の一人の顔を覗き込んだ。
「二十代半ば、若くて正義感に溢れてそうな顔だ。故郷には婚約者でもいるのか? それとも病気の妹か? 想像を巡らせるだけで、この後の快楽が増していくねぇ」




